「元就さん、とっても綺麗ですね!」

「ああ。あまり人の知らぬ海辺だ、だがだからこそ美しい」


太陽の輝く晴天、わたしは元就さんとふたりでどこかの浜辺にいる。
たまには我も職務を休むのもいいだろう、なんていいながら本当はわたしを元気づけるためなんだって知っている。ふふ、そんなこと本人には言わないけどね。


(ああ、さよならはもうすぐだ)


毎朝だんだん透けている時間が長くなっていく自分の体が、怖い。
こんなに居心地のいい場所を離れないといけない日がくるなんて。元就さんと離れないといけないなんて、
大きな岩場に座って爛々と輝く太陽を見上げながら、悲しく思った。


「、なにを考えておる??」

「え??」

「最近呆けてばかりいるだろう、」

「…あ、はは………心配で、いろいろと考えちゃうんです」

「我の城にいれば安心ではないか」

「そうですね、…無用の心配、なのかな」

そうだ、馬鹿者めが。と太陽をまた拝みはじめた元就さんの横顔を見つめながらちょっぴり笑みをこぼした。
そうじゃないことは重々承知してるけれど、自信たっぷりな元就さんを見てると少し安心できる気がした。それに、わたしも自信が…というより勇気がでてるのかな??少しずつ、体の感覚がなくなっていってるのがわかる。見れば、また足が透けている。

………これは、もうヤバいかも。
あちらの世界に引きずられているのが、わかってしまう(ああ、お別れなんだ)


「あのね、元就さん。そのままでいいので聞いてもらってもいいですか??」

「………なんだ、」

「わたし、元就さんのところにこれて幸せです、幸せでしたよー」


あなたを好きになれたんです。
わたししか知らないかなって思えるかわいい一面も知れちゃった。


「城のみなさんも優しいし、ごはんもおいしいし」

「……………」

「元親さんとお友達になれたのもよかったなー」


意外と優しいこととか、本当にお日様が好きなこととか、ね。あと甘いもの好きなんだよね


「だから、幸せでした」

「……なにを言うのかと思えば、そんなことか。そんなものまだこれからも続く当たり前のことだろう、なぜ過……………っ!」


きっとなぜ過去形にするのだ、と続くはずの言葉は途切れた。だって元就さんがこっち向いちゃったんだもの(あーあ、)(気づいたらいなくなっていた、がつらくなかったのにな)


「、帰るのかなまえ??」

「はい、多分……わたしもわからないんですけど、きっと」

「いつから……………、くく、そなたの様子から感じとれぬとは我も呆けたものよ」

「いいえ、気づいてくれなくてよかったんです。だから元就さんはすごいんですよ」


元親さんだったらそのまま気づかなかったでしょう??なんておどけていえば少し口の端に笑みが浮かんだ、それは自嘲とよばれるものだけれども。


「いや、長宗我部ならばその前に気づき問い詰めるぐらいのことはしただろう。てだから我は…」

「そんなことないです!わたしにとって元就さんはすっごく優しい人でした。ちゃんと気にかけてくれて、……大好きです、わたし元就さんのこと好きです!」

「……っ!!」


これだけは過去形にしないよ。だっていまも大好きなんだもの。
だんだんと足が消えてきてしまった、もうすぐ手も消えちゃうかな。
元就さんの手が透けたわたしの頬にふれた、とっても近いところに元就さんの顔がある。やっぱり、きれい。こつん、と音はしなかったけれど額と額をくっつけた。


「最後の最後だっけど、言えてよかった」

「そなた、は……」

「返事はいらないですよ。あなたに恋してた女の子を忘れてもいいので、心の片隅にでもおいてもらえたらいいなぁ、なんて困らせちゃいますよね」

「………我、は……………我…も………」


ついに触れた感触もなくなった。
意識がだんだんと遠のいていく。


「っ…いつでもまた来い、またいつか帰るのだとしても歓迎してやる!返事もそのとき聞かせてやろうぞ…………!!」


最後にぼんやりと聞こえたのは、あなたの声。
そして見えたのはほんの少し泣きそうな顔でした。






ずっと夢だったから
(さぁ戻ってきた、わたしの世界!)(目が覚めたのは病院だった、なんてね)





pn


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