「おー…!これが月の石…!」


いまぼくは博物館に来ています。ここにはプテラとかカブトとかをはじめとした古代ポケモンたちの化石とか、月の石とか珍しい石も飾ってあった。なんだかんだで月の石は見るのがはじめてだから少し感動している。おつきみ山のあれは月の石っていえるのかわからないから、除く、ね。ポケモンの化石コーナーから離れないレッドくんを置いてぼくはリオルとイーブイとムックルを連れて、先に進む(なにやら新しく発見された化石があったらしいよ。そしてピカチュウも一緒もお留守番)キラキラしている月の石をしばらく眺めた。すると進化の石のななめ先のコーナーには、昔から使っていたぼんぐりを使ったモンスターボール特集なんてのをやっているみたいでそれにちょっと惹かれたため、早足でそちらに方向転換した。…向こうから誰かが来ていた、なんて知らないで。
どんっ、と思いっきりぶつかったけれど、相手の人は踏みとどまり、バランスを崩したぼくのことまで支えて「大丈夫?」と声をかけられた。うわー人が来てたって気づかないで歩いてた、なんて。昔の親友が聞いたら「ぎゃはは!だ、ダサ、いぜ、ミオ!ぎゃはははは!」と爆笑されそうああもう恥ずかしいよ慌てて顔をあげて、「ありがとうございます!」とお礼を言うと「気にしないで」と言ってくれた。…こういう人を紳士って言うんだよ。心配そうに見上げてくる三匹に、大丈夫だよ、と声をかけてからまたその人に向き直る。多分ぼくとかレッドくんよりは年上で、薄い青色の髪に同色の瞳を持ったかっこいい男の人。……だけど、まーたどっかで見たことあるような人、だよねえ…?


「怪我はなかった?」
「あ、はい。おかげさまで、平気でした」
「ならよかった。女の子に怪我させるわけにはいかないからね」
「(紳士だ…!)いえそんな、あの本当にすみません!」
「そんなどうってことないよ。あ、えっと…」
「ミオです。好きに呼んでください」
「じゃあミオちゃんだね。僕はダイゴっていうんだ」
「ダイゴさん……ダイゴ、さん…?」


ダイゴさんダイゴさんダイゴサン、だいご…さん……大誤算!!あれだ、ホウエン地方のチャンピオンだったり石マニアだったりした人だ!つーくんがダイゴさん大誤算だよ、まったく。とか面白くないこと言ってたから覚えてたよ。んで確かものすごい石マニアだったなあ、ぼくがいま来た方向に向かっているってことは、つまりそういうことなんだろうなあ。


「ここにいる…ってことはミオちゃんは石に興味はあるのかい?」
「石……って言われると広範囲すぎてわかんないですけど、でも、飾ってあった月の石は単純に綺麗ですごいな、とは思いましたよ」


だって、月からの石だなんて名前だけでドキドキしちゃうよ? なのにポケモンたちを進化させるだなんて、ロマンティックにもほどがある。ポケモンの世界は、ぼくたちの、ぼくがいたふたつの世界からすればすごくうらやましいところなんだよ。……いや、まあどちらも普通だとは言えない世界だけどね。
単純に思ってたことを言ったら、ダイゴさんは目を輝かせて、がしっ!とぼくの腕をつかんだ、いやちょっと待ってください、最後意味分からない。どうしてつかまれてるの、ぼくは!


「よし、そんなミオちゃんに僕が石の素晴らしいところをもっと教えてあげよう!」
「…い!いやいや!けっこうですよダイゴさん!あなた忙しいでしょうし!」
「はは、ミオちゃんは遠慮深いなあ、気にしなくていいんだよ」
「空気読んでよ、ダイゴさーん!」


はあ、とため息をつく。ぼくはそのままダイゴさんにつかまれてさっきまでいたコーナーへと逆戻り。ああもうボール見たかったのに、こうなったら仕方ない。せめて楽しまなくちゃ、やってらんないよ。引きずられたままぼくは月の石までまずたどり着いた。

空気を読める人になりましょう!
(お願いします、切実に!)(ああでも月の石はキレイだよねえ…)








 




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -