猫が逃げてきた理由
翌朝の昼、
同僚は一時間前に帰った
また、チカと俺、二人だけの空間になった
佐助に言われた通りに酒を飲ませると人間の姿になった
「なぁ、チカ?
チカは、どこからきたんだ?」
雨の日にふと拾った猫、白い毛で青と赤の綺麗な目
一緒に過ごして急に人間になって、好きになって
動物にそういう感情は可笑しいが、仕方がない
好きなんだ、チカの全てが欲しい、知りたい
そう思っていたらチカが口を開いた
「あのね、ちかは、
まえはおかねもちのいえにすんでたんだよ、
でもね、こうやってひとになったとき、
ごしゅじんさまは、ちかをねこだってしんじてくれなくて、
すぱいだって、ころせって」
俯きながら伝える過去を聞き抱き締めてた
金持ちな主人と暮らしていたチカ
人間になって主人にスパイと勘違いされて殺されそうになった
一生懸命逃げてきた所で政宗に助けられた
「だからひとになったとき、まさむねにきらわれたらどうしようって
でもまさむねはちかをいっぱいあいしてくれて、」
見る見るうちに赤くなって、ふふふと笑った
「ちかはね、まさむねがだいすき、あいしてるんだよ」
だから嫌いにならないで、政宗から嫌われたら、きっとここがぎゅぅぅうってなると眉をハの字にして心臓部分を握る
「チカ…大丈夫だ、俺から嫌いになるなんざ、あるわけ、ないだろう?」
いつもは思いっきり抱きついてくる腕はゆっくりと政宗の背に伸びた
「俺がチカのこと愛してる事ぐらい、
チカが居なきゃもう生きられないぐらい
分かるだろ、チカが責任とるんだぜ?」
だから、急に居なくなって欲しくないんだ
ずっと、ここにいて欲しい
囁けばチカは声を出して泣いて
「ぅえ、ふぇぇーまじゃぅえ、すきっすきぃい」
「Please do not cry…泣くなよチカ…」
「う゛うっうれじぃ、ましゃうねしゅきぃ」
ぎゅぅぅうと抱きついてくるチカの頭をしばらく撫でていると泣き止んで、眠った
「チカ…寝ちまったのか」
全く、とすぐ傍にあるソファに寝かせる
「あ、毛布」
と寝室に取りに行こうと立ち上がるとシャツが引っ張られる感覚
下を見るとチカがシャツを掴んで寝ていた
まるで傍にいてと言っているように
「しょうがねぇな、」
苦笑するとチカの頬にキスをして
ずっとソファを離れてやらなかった
猫が逃げてきた理由
(恐怖と期待に追われて)
(俺の所まで来てくれた)
(ありがとう、一生大切にする)
(091209)
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[mokuji]
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