「…それで?」
「…それで、って?」
「今日がそのハロウィンとやらで、仮装をしてお菓子を貰いに行くのは、分かったんだけど。どうして、お前が仮装する必要があるんだ?」
「兄さん、もしかして、見てないの?」
「見てないって、何がだよ」
「プリントだよ」
「プリント?」

その言葉に、俺は小首を傾げる。
すると雪男は、俺の机の上に乱雑に広げられた教本やノートの間から、一枚の紙を見つけ出し、目の前に差し出してきた。

「この前の授業で僕が配ったモノなんだけど…」

雪男から紙を受け取って、内容を確認する。そこには今日行われる、ハロウィンパーティーの詳細が記されていた。主催はメフィストとも書かれている。いかにも、アイツつが好きそうなイベントだな、なんてふと思った。

「…分かった?」
「あぁ。それでお前がそんなヘンテコな格好をしてるんだな」

漸く俺の中で、合点がいった。

「ヘンテコって…。まぁ、いいや。それで、兄さんはどうするの?」
「…しえみや勝呂たちもパーティーには参加するのか?」
「うん。皆、参加の方にチェックしてあったし…。兄さんだけ回答が無かったから、僕が直接に聞きに来たんだよ」
「…そうだったのか、悪かったな」
「それで、兄さんはどうするの?」

先程と同じ言葉で、雪男が答えを促してくる。

「俺は――」

正直、こういうイベントは嫌いじゃない。むしろ、大が付くほど、好きな部類に入る。それに、他の奴らがどんな仮装でやって来るのかも、至極、気になる。
だけど…。

「凄く参加したいけど、俺、仮装用の衣装なんて持ってねェし…」

プリントには、デカデカと『ドレスコードは仮装』と書かれていた。
残念ながら、俺の持ってる洋服の中には、仮装に使えるようなものは一つも無い。幾ら出席したくても、これは諦めざる負えないだろう。

「衣装のことなら、心配要らないよ。兄さんの為に、色々と見繕ってきたから」

よいしょ、言って雪男は、それまで床に置いていた大きなトランクをひっくり返して、ゆっくりと開いていく。
これも仮装の小物の一つかと思っていたんだが、どうやら違っていたようだ。

「兄さんの好きな衣装を着て良いよ」
「ホントかっ?雪男、サンキューな」
「どう致しまして」

自分の方に向けられたトランクの中には、華やかで、きらびやかな衣装が、所狭しと収められていた。
その中の一つを、実際に手に取ってみる。


- 2/5 -
back next


←Back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -