虹色の明日へ | ナノ


色の明日へ
31.報せ、敵襲


 小太郎と一緒に帰宅したゆずかがまず告げた事は、敵襲の報せだった。
「……ということで、明日、先生がうちにくるの」
「その先生とやらは、それほどに危ねえ奴なのか」
「あぶないっていうか……いやな人、って感じ」
 小十郎、そして政宗は、ゆずかが苦手とする人物に一人、出会ったことがある。もしも“先生”があの婦人と似たような人物だとすると、確かに一筋縄ではいきそうにない。
「家庭訪問したくなくて、ずっとにげてたから……、たぶん、ちくちく嫌味言ってくるとおもう」
「Ha!ずいぶんとmeanな奴だな」
 軽蔑の色をありありと浮かべて、政宗が吐き捨てる。
「ウチの旦那と竜の旦那は、隠れてたほうがいいかもしれないね」
「何故だ、佐助?」
「あのねぇ、旦那。その先生って人は女性だってゆずかちゃんが言ってたでしょ?もし色でも使われたら面倒じゃない」
「なっ、破廉恥であるぞ佐助ぇ!」
「ほら、ね」
 やれやれと肩をすくめる佐助の様子に、ゆずかは首を傾げた。
「就兄さま、色ってなに?」
「……そなたが知るにはまだ早い事ぞ」
「ふうん?」
 顔をしかめた元就が、小さくため息を吐く。意味が気にならないでもないけれど、元就がそう言うなら、これ以上の追求はやめておくことにした。
「Hey、猿。アンタはどうする気なんだ?」
「俺様?俺様はゆずかちゃんと一緒にいるよ」
 にっこりと笑みを浮かべる佐助に、ゆずかは目を丸くする。まさか、佐助がそんなことを言い出すとは思わなかったのだ。
「大丈夫。独りで戦わなくていいんだからね」
 不安げに寄せられていた眉根をつつくと、ゆずかの表情がほんの少し明るくなった。それに満足して、不満そうな政宗や幸村に佐助は向き直る。
「俺様、忍だし?人を騙すのなんか朝飯前、ってねー」
「……気を抜くんじゃねえぞ、猿飛」
「あは。右目の旦那こそ、余計なこと言わないでよね」
 佐助と小十郎のやり取りを眺めていると、不意に風が頬を撫でた。
「(……己もそばにいる。安心しろ)」
「……ありがとう。でも、コタ兄は隠れててね」
「……(こくり)」
 伝説の忍なら、気配と姿を隠して、近くにいることも可能だろう。ゆずかが言うと、小太郎は素直に頷いてくれた。
 さて、問題はあと一人である。
「就兄さまは、どうする?」
「……」
 ふむ、とひとつ唸って、考えを巡らせていた元就は、ちら、とゆずかの顔を見やって唇の端を上げた。
「よかろう。我自ら、その先生とやらを見定めてやるわ」
「いいけど……気をつけてね」
「フン、我が策に抜かりはない」
 その“先生”が、ゆずかにとって害となる者ならば……と、不穏すぎる呟きを聞き取って、思わず背中に冷たい汗が流れたゆずかである。
「とにかく。先生になにを訊かれてもいいように、みんなでいろいろ話しあおうよ」
「そうだな。事前に口裏を合わせておかねえと、咄嗟の判断に支障が出る」
 それから夜遅くなるまで、ゆずか達の緊急会議は続いたのであった。


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