▼ 04
いきなり丸裸にするのもムードがない気がしたので、まずはズボンだけ脱がせることにした。手をかけて抜き取ろうとすると、彼も腰を浮かせて協力してくれる。
「じゃあほら、吉海さんも脱いで」
「え、俺も?」
「一緒にしよ?」
はだけたワイシャツに下着のみ、というなんとも官能的な姿で葵が言った。その手がスラックス越しに俺のものを柔く撫でる。慌てて手首を掴んで止めさせた。
「そ、そんなとこ触るなよ」
「いやですか」
「いやっていうか…あんまり、人に触らせたことないし」
「俺だって吉海さんに触りたい。セックスは二人で気持ちよくなるものでしょ?」
「そりゃそうだけど」
こんな綺麗な顔をした少年に自分のものを触らせるというのは抵抗が。渋る俺に益々焦れたらしい葵は、むっとした表情でベルトに手をかけた。
「おい!」
「もういいじゃん。全部俺のせいにしていいし。吉海さんは何にも悪くない」
「そういうわけにはいかないだろ」
「そういうわけなんです。ノンケの男捕まえてこんなことしてる俺が悪いんです」
「…っ」
「ねぇ、もう全部俺のせいでいいから」
ぎゅ、と下着越しにそれを握りこまれ思わず目を細めた。狭くなった視界で見える、どこか寂しげな葵の表情。
一体何が彼をそうさせているのか。何故そんな表情をするのか。
「…わかった」
今の俺には全く分からないけれど、知りたいと思った。
この少年の全てを知りたい。余すところなく、全てを見たい。触れてみたい。
そう、思った。
「…その気にさせてくれるんだろ?」
静かに尋ねた俺に、葵はにこりと微笑む。
「うん。じゃあこれ、舐めさせて」
「舐め…」
…その気にさせてくれるって、そういう意味か。
ただ手で触るだけならまだにも、さすがに少年の口にこれを突っ込むのはいささかいたたまれないというか。ここまでしといて今更な気もするが。
「あれ、フェラされたことない?」
「それは、あるけど」
「なら平気平気」
葵は一旦膝の上から降り、俺の脚の間に跪く。そして慣れた手つきでズボンのファスナーを下ろし、すでに兆しかけているそれを取り出した。
「…そんなに見るなよ」
まじまじと無言で見つめられてしまっては、こちらとしてもなんだか恥ずかしい。
「いやぁ、やっぱり大きいなって」
「そりゃどうも」
「俺の口の中全部入るかなこれ。あ、イラマとか好きですか?吉海さんが好きならやってもいいけど」
「い、イラ…」
日常生活の中でとんと使うことのない単語が耳に飛び込んできて、俺はぴしりと固まった。イラマ…イラマ、イラマ!?
「えぇと、イラマチオです。こう、無理矢理気味に出し入れする感じ?」
「知ってるからその手と口をやめなさい」
慌てて止めさせる。
「好きじゃないのかぁ」
「好きじゃないよ。あれ、なんかかわいそうだろ…」
「それが興奮するんでしょ?する側もされる側も」
「えー…」
俺には良さがいまいち理解できない、と眉を顰めてみせると、葵は「吉海さんは優しいね」と言ってまた笑った。
「じゃあ普通に舐めるだけで」
「お、おう…」
「いただきます」
いただきますって何だ。そんなツッコミを入れる前に、彼の唇がその先端をとらえる。
「ん…」
――本人が言うだけあって、葵のフェラはとても気持ちが良かった。
舌と、唇と、指と、手のひら。最初は確かめるような手付きで。俺の反応する場所を探り当ててからは、全てを駆使して的確にその気持ちの良い場所を攻め立ててくる。
「んっ、はぁ…んん、ぅ」
おまけにあんまり嬉しそうな顔で舐めしゃぶるので、目が離せなくなってしまう。思わず手を伸ばして髪を撫でると、葵は甘く声を漏らした。
「よしみさん…」
気持ちいい?と尋ねられる。
…いやこのちんこ見たら気持ちいいかなんてすぐにわかるだろうに。
半勃ちだったそれはいつのまにかはち切れんばかりに膨張し、唾液とも先走りともつかない液でぬらぬらと妖しく光っていた。そんな卑猥なものが綺麗な顔をした少年の手の中にあるんだから、なんの贅沢だって感じだ。
「すごくいい」
「ほんと…?」
「…っ」
葵は手ですりすりとそれを撫でながら、吸い付くように口付ける。ちゅう、と小さく音がした。――エロい。思わず息を呑む。
上気した頬と、濡れた唇。潤んだ瞳がねだるようにこちらを見上げてきて、俺は年甲斐もなくドキドキと心臓を高鳴らせた。
「…かわいい」
「え?」
――あ。
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