▼ 02
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「じゃあ…失礼、します」
「は、はい」
俺の部屋のベッドに移動して、二人で向かい合うように座る。
新太は恐る恐ると言った手付きで俺の顔を引き寄せ、そっと唇を触れ合わせた。
「…ん、」
キスは何度か交わしたことがあるけれど、こんなにもドキドキしながらするのは初めてではないだろうか。
もう、心臓がやばい。死んじゃいそう。
暫くそのまま動かずにいたら、舌で唇をノックされる。素直に口を少し開ければ、そこからぬるりとしたものが侵入してきた。
「っ、あ、ふ…」
確かめるような動き。もどかしいほど丁寧に口内を愛撫され、こらえきれない声が漏れる。
…ちょっと、新太、こんなキス、どこで覚えてくるの。なんなの無駄に上手くなっちゃって。
悔しくなってこちらから舌を絡めると、さらに動きが激しくなった。地雷だった。
「あ、んん…んうッ」
軽く舌先を吸われ、ビクリと肩が跳ねる。新太の肩を掴む手に力がこもった。
「はぁ…すぐる、何その声…」
「しっ、知らないよ!新太のせいじゃん…」
ちゅう、と音を立てて離れる唇。どちらのものともつかない唾液の糸が伝い、その淫猥さに顔が熱くなる。
「嫌だったらちゃんと言ってね。やめるから」
「…ん」
「傑が嫌なことはしたくないし」
新太にされて嫌なことなんて一つもないよ、とは口に出さない。恥ずかしいし。
「ふ、んん、ぁ」
先程のような濃厚なキスが再開されて、すぐに何も考えられなくなる。
ぼんやりと霞がかっていく思考。とろけてしまいそう。
「っ、あ、らた…」
口づけをしながら器用にも俺の服を脱がしていく彼の手。あっという間に上半身がひやりとした外気に晒された。
恥ずかしい。無理無理無理。ぷるぷる震える俺を見て、新太が心配そうな目線を投げかけてくる。
「寒い?」
「ううん…寒くは、ない…けど」
「けど?」
「俺だけ脱いでるの、いやだ」
「ふ、そか」
目を細めて笑った彼に、そっと抱きしめられた。生身の肌にじわりと体温が伝わってくる。
「じゃあ、傑が脱がして」
「え」
「お願い」
「う…」
そ、そんな高度な真似を俺に要求するなんて。
自慢じゃないが、俺は生まれてこのかた誰ともお付き合いしたことはない。物心ついたときには既に姉さんのことが好きだったんだから、当然と言えば当然かもしれないが。
つまりキスも新太が初めてだし、ましてやセ…いや、その、性行為などもってのほかである。
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