俺にしとけば? | ナノ


▼ 01

その連絡が来たのは、ある春の日のことだった。

『受かったよ、大学』

電話越しに聞こえる彼の声はいつもとあまり変わらなかったけれど、実際に顔を合わせてみると、やはりどこか嬉しそうな表情をしている。

「おかえり、新太」
「ただいま」

まだ外は寒いのだろう。うちにやってきた新太の首にはマフラーが巻かれていた。

「何か、飲む?コーヒーいれようか」
「いい。それより、こっち…来て」

玄関まで出迎えた俺の手を引いて、ソファに腰を下ろす新太。その隣に俺も座る。

「おじさんとかおばさんとか…姉さんにはもう報告した?」
「まだ。傑に一番に言いたかったから」
「そっか」

思いっきり抱きついた。

「本当に、おめでとう、新太」
「…うん。ありがと」
「お祝いしなきゃね。何か欲しいものあったら、遠慮なく言ってね」
「…」

おめでとう。自分が合格した時よりもずっとずっと嬉しい。新太が頑張っているのを、一番近くで見てきたんだ。

「新太?」

じっと黙ったまま動かなくなってしまった彼。不思議に思って顔を覗き込むと、視線を逸らされてしまう。

「どうしたの」
「いや…」
「あ、俺の懐事情を気にしてる?大丈夫だよそんなこと」
「違くて、その…」
「ん?」

人差し指が目の前に差し出された。

「欲しいもの、これ」
「これ?指?…あ、指輪?」
「違う」
「うわっ」

今度はがっちりと両頬を固定され、思わず声を上げる。新太の手、冷たいよ。寒いよ。

「す、」
「す?」

なんだなんだ。いつになく挙動不審な彼の様子にこちらまで戸惑ってしまう。

「傑が、欲しい」

ぶわわ。新太の顔が見る見るうちに赤く染まっていった。

傑が欲しい…って。

えっ。

「お、俺?」
「うん」
「それは、その…そういうことを、したいって、こと?」
「端的に言えば、そうだけど。でもそうじゃなくて…」

逸らされた視線がばっちり合う。きっと俺の顔も彼と同じように真っ赤だろう。

「傑の心も身体も、全部俺のものにしたい」
「っ」
「だめ、かな?」

…そんなの。

「…いいよ」

嬉しいに決まってるじゃないか。

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