▼ 03
彼は座っていて、僕は立ったままである。必然的に僕の胸のあたりに頭がくる形になって、イケメンが興奮したようにブラウスのボタンをはずしにかかった。
サッと青ざめる顔。このまま何もしなかったら、確実にばれる。主に胸のせいで。
はっ、そうだ。事情を説明しよう。そうしたらきっと彼もやめてくれるはず。
「…」
口を開きかけた僕の脳裏に、誰にも言っちゃ駄目だからね、と念を押す凛の言葉が浮かぶ。いやいや、これは緊急事態だから。言っていいよね。
っていうか、言わなきゃ死ぬ。だってこのブラウスの下には、
「百瀬君…思った通り、綺麗な肌だ」
「ひっ」
無理矢理つけさせられた、ブラジャーが。
「や、離して…!」
「こんなにパットいれてるのか?胸、小さいの気にしてるんだ」
気にしてない。全くもって気にしてない。僕は男だ。胸なんかいらない。
「でも俺は、君の胸なら無条件で愛おしいと思うから…気にするな」
背中に回された手がホックを外そうとするのが分かって、僕は耐え切れずに叫んだ。
「あのっ、違うんです!」
「何が違うんだ?」
「ぼ、僕は、男なんです。凛じゃないんです」
「…」
きょとん。固まる彼の表情。泣きそうになりながら事情を説明する。
「…つまり、君は百瀬君の双子の兄で、百瀬君の代わりに授業に出席しにきただけだと」
「は、い」
ごめんなさい、と頭を下げた。折角告白してくれたのに、それがまさか男で、しかも別人だなんて。彼は深く深く傷ついたことだろう。申し訳ない。
イケメンが溜息を吐く音が部屋に響く。すまない、と謝られた。
「いえ、悪いのはこちらですから…凛には黙っておきます」
「そうじゃなくて」
「え?…っひゃあ!」
ちゅっと露出したままの肌に吸い付かれ、悲鳴をあげる僕。
え、え、え。この人、今の話聞いてた?
「俺は今、君にひどく欲情している」
「よ…」
欲、情?
言葉の意味を理解するのに時間がかかり、その間にブラのホックが外された。胸の締め付けから解放されて、苦しさがなくなる。
「なっ、なにするんですか!?」
「あぁ…何て可愛い乳首なんだ」
「んん!やめっ、やめてください!」
「もう無理だ。止められない」
僕の胸に顔を埋め、ぺろぺろと執拗に乳首を舐め回す舌。
気持ち悪くて身を捩るが、がっしりと抱きしめられて抜け出せない。
「僕は男ですよっ!目を覚ましてください!」
「魅力的なおっぱいだ」
直接的な言葉にカアッと頬が熱くなった。お、お、おっぱ…
「男なのに、スカートを履いてブラジャーまでつけて…」
「や、やだ、いやです、やめて」
「変態にもほどがある」
「んぁぁっ!か、かんじゃ、だめっ」
カリ、と軽く乳首に歯を立てられて全身に電流が走る。あ、なんで、ぼく、乳首なんかで。
「やぁっ、お、おっぱい、だめです!」
「はぁ…おっぱいだなんて、いやらしいことを言う」
貴方が言ったんですよ。
「んん、だめ、僕は…」
「男、だろ?分かってる」
噛んだり舐めたり唇で挟まれたり。絶え間ない刺激に息が上がってきた。身体が熱い。視界がぼやける。
そのうち、スカートの中に手を入れられた。
「あっ、そこは」
「…」
「ひ…ん、あぁ、いや…」
「もう勃ってるんだな」
やっぱり君はいやらしい、と微笑むイケメン。はぁはぁと身をくねらせる僕。
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