▼ 05
いまだ眼前に晒されたままのお尻を軽く撫でる。汗で濡れた肌がしっとり吸い付いてきて気持ちがいい。
しばらくそうしていたら、亮一さんがもじもじしはじめた。
「…っ、り、律君…あの、その…」
「はい」
「入れて欲しい…」
「…我慢できない?」
「うん…」
「じゃあ体制を変えましょう」
今度は僕が上。亮一さんが下。所謂正常位だ。
うん。やっぱりこっちの方がいいな。亮一さんの顔が見える方が。
亮一さんはいつも凛としている瞳をとろけさせ、僕の首に腕を絡めてくる。まるでキスしてと言われているかのようだ。
「亮一さん、可愛い」
「えっ」
「今までで一番ドキドキします。…好きだからかな」
ぶわわっと彼の顔が赤くなった。
「う、嬉しい。律君…あぁ、夢みたいだ」
自然に唇が重なる。ついばむみたいに、何度も何度も。
下唇を軽く吸えば、亮一さんはふるりと震えた。
…うん。可愛い。本当に。イケメンだけど可愛い。男前だけど可愛い。ギャップ萌えというやつだろうか。
もっと早く気がつけば良かった。そうすれば彼をもっともっと大事にできたのに。
今日は今までの分すべて、僕の全身全霊をかけて亮一さんに愛を伝えよう。この人を誰にも取られたくない。
キスをしながら、勃ち上がったままの性器を穴に添える。入口が誘うように蠢いて、それだけで鳥肌が立つほど気持ちがいい。
「ふ、んぁっ、ん…っあ!」
「…っん、いれます、ね…」
「うん、うん、きて、はやく」
互いの身体をきつく抱きしめ合った。腰をゆっくり押し出して、挿入を開始する。
「あっ…だめ、声出る…はぁ…っ」
溶けそう。熱い。歯を食いしばって我慢する僕を見て、彼は吐息混じりの笑い声を上げた。
「ふ、はは、いいよ…っ聞かせて、君の声が聞きたい」
「やですよ…んっ、亮一さんこそ、声、出してください…!」
「あぁぁっ!」
「ひう!」
イイトコロを掠めてしまったらしい。ぐねぐね動く腸壁に搾られ、思わず腰を止めた。今動かしたら絶対もう出る。
「な、んで止まるんだ…」
「だって…出ちゃいそうなんですもん…」
「出せばいいだろ…んっ…」
「せめて貴方をイかせてからじゃないと嫌です」
「俺はさっきイった!」
「それはそれです。僕は亮一さんが気持ちよければそれでいい」
「…どうしちゃったんだ本当に…」
「好きだから」
ひゅっと息を飲む音がした。
「…ごめんな」
「え?」
「俺が君を好きにならなければ、君は普通に女の子と付き合って、幸せに結婚したかもしれない」
「そんなこと…」
「いきなり襲って、それからズルズル関係をもって、無理矢理手に入れた…でも」
でも、何だろう。黙ったままで次の言葉を待つ。
「律君が俺を好きになってくれて嬉しい。抱いてくれて幸せ」
「亮一さん…」
「俺は健気でも謙虚でもないし、優しくもないからな。君を一生離す気はない」
「いいですよ」
一生離さなくたっていい。構わない。あれほど悩んだことが、今はとてつもなく小さなことに思える。
男同士だから不毛だとか、幸せになれないとか、そんなんじゃない。そんなことは二の次だったんだ。
僕は今、彼と一緒にいたい。彼と一緒じゃなければ後悔する。幸せになんてなれない。
ほら。難しく考えなくたって、僕の心はちゃんと答えを知っていた。
「幸せになりましょう。二人で」
ふ、と笑みがこぼれてきた。亮一さんの綺麗な顔を両手で包み込み、おでこをくっつける。
「好きになってくれてありがとうございます」
そうしたら、亮一さんも笑った。
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