▼ 06
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「…入れていい?」
ぐ、と昂りをあてがわれる。そんなこと聞くまでもないくせに、わざとまた辱めようとしているのかと一瞬疑ってしまいそうになった。しかし熱い視線が俺を見下ろしていて、その考えが間違いであることに気付く。
…ひふみも、早く俺の中に入りたいんだ。
胸の奥底が苦しくて、切なくて、どうしようもなく愛おしい。
早く。早くこの人が欲しい。こいつが俺を望むように、俺もこいつを望んでいる。
「ん…っ、いい、いいから、早く」
散々焦らされた身体はもう限界で、早くその塊を自分の中に受け入れたいと必死に蠢いていた。
「あっあっ…ん、あぁ…!」
ゆっくりと挿入される感覚がたまらない。爪を立ててしまいそうになるため、掴んでいたひふみの二の腕から一旦手を離し、代わりにシーツを握り締める。
「…平気?痛くない?」
「い、いたくない…ッ」
痛いわけがない。あれだけ長い時間弄り倒されたんだから、それくらい分かるだろ。
「ん―――っ、あ、あっう…ふ、はぁ」
「全部、入った…から」
「うん、ん、分かってる…っ」
はぁはぁと浅い呼吸を繰り返す俺の頬を、ひふみの手のひらが撫でた。それだけで鳥肌が立つ。触れられたところが熱い。
「瑞貴」
「あ…っ、な、なに…」
「瑞貴」
「んん、ぅ」
柔く唇を挟まれ、吸われ、思考が蕩けていく。自分から舌を伸ばすと、ひふみはそれを絡めとってくれた。
「んっぁ、あ、あ、ふ…っん」
「ん…」
夢中で何度も口付けを交わす。このままずっとキスしていてほしい、などと馬鹿げた考えが頭を支配する。
「ふぁ、ひふみぃ…」
「…うん?」
「もっと、して」
もっともっともっと。もう何もかも分からなくなるくらいに。
「うん」
嬉しそうな声だった。ぼやけた視界の中で、柔らかな微笑みだけが映る。
「瑞貴、好きだよ」
「な…ッ」
ひふみはもう一度俺にキスを落とすと、ゆっくりと確かめるような腰つきでピストンを始めた。
ぐちゅっぐちゅっと耳を塞ぎたくなるような音がする。
待ちわびた刺激に俺は今すぐにでも達してしまいそうだった。気持ち良くてたまらない。もっと激しく、もっと強く、その熱い塊で奥を突いてほしい。そんなはしたない願望でいっぱいになる。
「ひっ…あっ、あ、っんんぁぁ…ッ!あっ、う、ふ…ひふみ、ひふみぃっ」
「な…っに?瑞貴」
「あァ…ッ、は、あぁ、きもちい、きもちいよぉ…っ」
「そ…?それは、良かった…っん、う」
「あぁぁ…っあ、あっだめ、それぇ…っ、あっ、ひぁぁぁぁっ」
耳元でひふみのエロい声がして、それにまた煽られる。
「あ゛―――ッ、うそ、うそ、やっ…やっ、こんなの、こんなのぉ…」
「…ッきもち、いい?」
「んぅっ、あ、きもちい、きもちい、やぁぁっ、しんじゃううっ」
「可愛い、瑞貴、もっと顔見せて…ッ」
奥底まで突き上げられるような動きから、今度はぐりぐりと腰を回された。脳内に白い光が点滅する。自然と自分から尻を押し付け、渦巻く熱を放出しようと必死だった。駄目だ駄目だと言いつつも、俺の脚はしっかりとひふみの腰に巻き付いている。
「そ…っな、熱烈に巻き付かれちゃ、動けないん、だけど…っ」
「だって、だってぇ、ふぁ、あぁっう、ん、ん…んんぁぁ…!」
シーツを掴んでいた手を絡めとられた。いつも冷たいその指先が熱を持っている。
「瑞貴」
かわいい、すき、と耳元で繰り返し囁く声がして、心臓の奥底がぎゅうっと苦しくなった。そんなの反則だ。ずるい。
「ひふみ、ひふみぃっ、あ、あっひうっはぁっ…あぁぁっあ、ん、ふっあ」
「ん…っ?」
「もっと、もっと言って、んっ、んぁっ…あぁっあっあっ」
「なんて、言って欲しい?」
「あっ…ふ、いっ、いっぱい、名前呼んで、んっ、好きって…」
繋がれた手に力を込めながらそう言うと、ひふみは目を細めてまた笑う。
「…さっきから、言ってる、じゃん」
「あぁぁっ、ん―――ッ!!」
ずぷっといきなり奥まで貫かれ、俺は悲鳴にも似た嬌声を上げながら絶頂を迎えた。今まで溜めに溜め込んでいたおかげと言うべきか、ありえないほど気持ちがいい。ビクビク痙攣しつつ精を吐き出す。
「あっあっ…あぁっ、は…ぁ、んんぅっ」
「イった…?」
「んっ、イっ…てる、今、イってる…あぁっ」
「ふ、かわい…瑞貴のイってる顔、俺すげー好き」
「んんっ」
ひふみは好き好き言いながら、俺に何度もキスをした。あんまりにもその言葉をやめないので、忘れかけていた羞恥が蘇ってくる。
「瑞貴、可愛い。好き」
「も…ッやめ、んっ、やだ、言うなぁ…」
「本当にやめていい…っの?」
ぐちゅぐちゅと激しくナカを掻き混ぜられ、再び絶頂の波が押し寄せてくるのが分かった。
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