▼ 02
「ん…っ、んっ…ん…ん――…っ」
忠太はそれをわざと音を立てて飲み込み、残っている精液までちゅうちゅうと吸い出した。
「いっぱい出たな」
激しい射精を終え、四肢を投げ出してぐったり脱力する俺に、忠太は満足げに呟く。
「大丈夫か?もう寝る?」
ふるふると首を横に振った。
「…まだ、セックス、してない…」
忠太が大きな声で笑う。
「そうだな。じゃあまだ続きするよ」
こくん、と無言で頷くと、忠太は俺の脚を大きく開かせた。恥ずかしくなって閉じようとするも「だめ」と優しく咎められてしまった。
「見せて」
「や、やだ…っこ、この体勢は、やだ」
「えー…じゃあこれならいい?」
くるんと布団の上で身体を反対向きにひっくり返される。所謂四つん這い、だ。
これもこれで恥ずかしいが、顔が見られない分少しはマシかもしれない。俺は小さく頷いた。
「ん…っ」
熱い指先が腰を撫でる。達したばかりのペニスがふたたび頭をもたげてくるのを感じた。
「ひぁ…っ!?」
忠太は俺の尻臀を両手で掴む。あろうことかそれを割り開きその奥にある入り口に舌を這わせてきた。驚いて悲鳴が出てしまう。
「や、ばか…っ、何、ちゅ、たぁ…っ、やだ、なんで」
「ここ、舐めてみたいってずっと思ってた」
「あうぅっ、だめ、舌入れないで…っ」
「なんで?」
なんでって。そんなこと、聞かなくたってわかってるくせに。
荒く息を吐くだけの俺に、忠太は言った。
「俺はタマのこの綺麗な身体を余すことなく舐め回したいって、いつも思ってるよ」
なにそれ――なにそれ。
変態、と罵る俺の声には隠しきれない甘さが滲んでいて、説得力の欠片もない。
「あっ…あっ、あっ、ぁ…」
熱を帯びた湿ったものが、ぐにゅぐにゅと浅いところを出入りする。身体を支えている腕が震え、まるで気分は生まれたての子鹿だ。
忠太の舌が、俺の、あんな恥ずかしい場所を舐めている。そう思うとたまらなくなって、完全に勃起したペニスからはおびただしいほどの先走りが零れていった。
「ん…ん――…っ、は、ぁあ…ッ」
はぁ、と忠太の息が肌にかかる。
「タマ…エロすぎ」
「だ…って、だって、忠太が…っ」
「さっき出したのに、またびしょびしょにしてる」
「んう…っ!!」
とろとろと糸を引くペニスの先端を、忠太の指が柔く擽ってきた。びく、と腰が跳ねる。
「…すげぇ」
あまりの濡れように、忠太は本当に驚いたかのような声色で囁いた。一気に顔が熱くなる。
恥ずかしい。恥ずかしくて死にそうだ。
「…食っちゃいたいって、こういう気持ちなんだろうな」
ぐす、と半泣きで鼻を啜る俺を忠太は後ろから抱きしめた。
「可愛くて可愛いくて仕方ない。おかしくなりそうだ」
おかしくなりそうなのは俺の方だ。
「もっと可愛いとこ見せて」
忠太はぬるぬると俺の先走りを指に纏わせると、それを今しがた舐めていた孔に突き立てた。
「ん――…っ!!」
一気に二本の指で押し広げられ、咄嗟に唇を噛み締める。
どうしよう。気持ちいい。
「う…っあ、ん、んっ」
ちゅっ、ちゅっ、と抜き差しされる度に卑猥な音が鳴った。俺はもう身体を支えることすらできず、布団の上にぐにゃりと上半身を沈みこませる。
「んぁっ、は、ぁ、ぁあ」
呼吸は荒く、開きっぱなしの口からは涎が零れ落ちていった。忠太の指が中を突くのに反応してひくん、と全身が震える。
「ちゅう、た、忠太ぁ」
「ん…?」
「は、あぁっ、おれ、俺、もぉ死ん、じゃう…」
「死なないよ。大丈夫」
「ん、ぁ、あ、あっ」
「そろそろいけそう?痛くない?まだほぐす?」
俺は首を横に振った。
痛みなんて最初からない。あるのは快楽だけだ。
忠太はいつも、俺を十分すぎるほどどろどろにする。
「いれて、もういい、いれて…っ」
「…ん」
ぐるんっとまたひっくり返された。仰向けになった俺の脚の間に忠太が身体を滑り込ませてくる。
「タマの顔、見ながらしたい」
そう言って月の光で照らされた忠太の顔を見て、俺はきゅうっと胸が苦しくなった。
――こんな風に誰かにたくさんたくさん愛してもらえる日がくるなんてなんて、少し前までは思いもしなかった。
「忠太」
忠太に出会って、忠太が俺を必要としてくれて、それで俺はようやく地に足をつくことができたのだ。
「好き…」
つう、と自然と涙が零れ落ちていく。忠太は一瞬動きを止め、優しく微笑んだ。
「愛してるよ、環」
忠太の手が腰を掴む。
「あ……ッ!!」
そして、もどかしいほどにゆっくりとそれが挿入された。
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