毒を食らわば皿まで | ナノ


▼ 08

――してくれないなら、自分でする。

「小山」
「やだ…っ」

後ろ手に彼の性器を支え、その先端をもう一度入口にキスさせた。

「…もう、も…がまん、できない…」

どろどろになった穴と、先っぽから滲み出た液体がぬめって掠めるように縁をなぞる。

「あ…っぁ、あっ、んん、これ、これ…ッ」

そう、これが欲しいのだ。噛み締めた唇の隙間からふーふーと荒く息が漏れた。

「本当に入れちゃうの…?」
「うん、うん…っ」

津々見の問いかけに大袈裟なほど頷くと、汗で濡れた髪がぱさぱさと揺れる。

入れたい。入れたい。入れたい。頭の中にはそれしかなくて、潤む瞳で津々見を見下ろした。

「お、ねがい…おねがい…ゆるして、もう…もう」

聞こえるかもわからないようなか細い声で懇願する小山を見て、津々見が笑う。

――いいよ。

彼の唇がそう動いたのが見えた瞬間、一気に腰を落とした。

「んんんん…ッ!!」

がくがくと浮き上がる腰を必死で押さえ込み、無理矢理奥まで挿入する。多分、恐らく、自分のペニスからは耐え切れずに精液が溢れていることだろう。だけどそんなのはどうでも良かった。

「は―――…ッ、は、ぁ…、はぁ、うぁ…っ、あっ、あ…」

指先一本すら動かせない快感。内側がぐねぐねと轟いて、その熱い塊に纏わりついているのがわかる。

「…い、く、いく、ぃ…―――っ!!」

腹の中を満たしている彼のペニスを締め付け、小山は幾度となく絶頂を迎えた。頭の中が真っ白になって、目の前に白い光が飛ぶ。まだ何もしていないのに、入れただけなのに、自分の身体はおかしくなってしまったのかもしれない。

「また、またいく、ぅ…、ん、あぁぁ…っ」

気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい以外考えられない。自分の声がどこか遠くに聞こえる。まるで別人みたいに淫らな声だった。

「きもちいぃっ、きもちいい、いいぃぃ…!!」

はくはくと浅く激しい呼吸で懸命に酸素を取り込み、終わりのないオーガズムに浸る小山の下腹を、津々見の手のひらが撫でた。

「…っ出すよ」

低く唸るような声が聞こえたかと思うと、びしゃりと奥に熱い液体をかけられる。

「――――――ッ!!」

それが津々見の精液だと認識できた刹那、声も出せない程の快楽が体中を襲った。ビクンビクンと大きく痙攣しながら小山も精液を吐き出す。

「…ッ、ぁ…!…っ、…!」

馬鹿みたいに開いた唇からは唾液が滴り、津々見の腹に落ちていった。

――死ぬなら今が良い、と茹だった頭にそんな考えが思い浮かぶ。

「…っく、は、ぁ…、あっ、あっ、あ…」

はぁ、はぁ、と互いの息だけが部屋に響く。どれくらい時間が経ったのかはわからないけれど、恐らくほんの10分ほどの出来事だろう。そんな短い時間で、全てを出し尽くしてしまったみたいな感覚を味わった。

「小山」
「…あ…」

津々見が小山の腕を引いた。力が抜けているせいで簡単に倒れこんでしまう。

「小山、小山、小山」

汗と精液でべたべたになっているのも構わず、津々見は小山の身体をきつく抱きしめる。挿入されたままの性器の角度が変わり、小山は津々見の腕の中でぴくりと戦慄いた。

「愛してる。愛してるよ。全部俺のものだ。一生離さない」
「…ん、津々見さ…」

心臓がどきどきとうるさい。愛してる、と津々見が囁くのに比例して、じわじわと視界が潤む。

「あぁ…綺麗だ。可愛い。愛してる。小山」
「ん…んん、ぁ…っ、んむ、ふ、はぁ…っ」

うっとりするようなキスと、途切れることのない愛の言葉。小山は濡れた瞳を隠すこともせず顔を綻ばせた。泣きながら微笑む自分の表情はきっとひどく滑稽なはずなのに、津々見は愛おしそうな眼差しを向けてくれる。

「ん…っ、ん、うぅ、もっ…と、もっと、はぁ…っあ、もっと」

ベッドの上で両の手を繋ぎ、指を絡ませ、強く握りしめた。手を繋いだままのそりと起き上がり、津々見の上で腰を揺する。

「まだ、足りない?」
「ぁっ、あ…足りない…ん、ふ…あっ、あう」

はしたないことはわかっている。散々達したくせにと蔑まれても仕方がないと思う。

でも、でも、全然足りない。全然満足できない。本当におかしくなってしまった。身体も、頭も。

「どれくらいしたら満足できる?」
「わ、わかんな…っ、でも、まだ、ぜんぜん…」
「じゃあ」
「あ゛―――――ッ!?」

ぐちゅんっと突然下から突き上げられて悲鳴が漏れる。

「な、に…そ、な…いきなり…っ」

驚く小山の身体を反転させ、津々見が上にのしかかってきた。抵抗できないようにするためか、強い力で繋いだ手をシーツに押し付けられる。

「じゃあ、俺が満足いくまで付き合ってもらおうかな」
「え…」
「ね?」
「ひぁッ、あ…っ!?」

奥まで腰を送り込まれ、小山は身体を仰け反らせた。

「俺もまだ、全然足りないから」
「あっあっ、あ゛っ、待っ…」

津々見のペニスがもどかしいほどにゆっくりと抜けていく。感じ入るような吐息を漏らし、これ以上抜かれまいと意図的に内側を食い締めた。

「待たない」
「や、やだ、抜かな…っ、あ…ッ、あ、だめ、だめです、やだ」
「ここ好きなんでしょ?さっきいっぱい舐めてた太いとこ」
「んん―――ッ!!んっ、んっ、んは、ぁ…っ!!」

カリを引っ掛けるように浅い所で小刻みに出し入れされ、ぶんぶんと頭を振って叫ぶ。気持ち良すぎて、駄目になる。怖い。

「んんん…っ、ん、や、浅いとこ、だ…めっ、それ…ッあ、こわい…!!」
「そう?じゃあやめる…っね」
「あ゛ぁぁぁぁ――――っ!!」

ばちゅんっと音がするくらい一気に貫かれ、泣いているのか悦んでいるのか自分でもわからないような声を上げた。がくがくと全身の痙攣が治まらない。

「あぁ、またイったね、すごいよ、小山のここ」
「あうっ、う、んぁっ、あっ、あっ、あぁっ」
「涎垂らして、そんなに、気持ち、いいの?」
「っひ、ん…んぅっ、あっ、う、んん、いいっ、いい、いいぃ…ッ!」

腰を揺すっているせいで途切れ途切れになる彼の声がいやらしくて、一層快感を増幅させてくれる。ベッドが軋むほどの激しい動きとは裏腹に、津々見はいつものように優しく笑う。

「はは、ほんと…っかわいい」
「んっんっ、あ、あっ、あ…ッ!!あぁぁっ!!」
「ね、小山、嬉しい?嬉しい、でしょ?」

うれしい、うれしいです、うれしい。

投げかけられる質問に答えを返しながら、小山は自分の口元が甘く緩むのを感じていた。

愛してる。貴方のことを、貴方だけを。

「津々見さ、ぁっ、すき、すきぃ…っすきです、あぁっ、すき、津々見さん…!」

――だからもっと、俺を見て。

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