毒を食らわば皿まで | ナノ


▼ 06

セックスなんて数えきれないほど経験しているし、今更純情ぶるつもりもないのに、心臓が張り裂けそうだった。――恐らく、期待で。

必死で平静を装いつつ、ごそごそと下着の中から既に兆し始めていたそれを取り出した。

「…ん」

片手を軽く添え、横からゆっくり舌を這わせる。裏筋を指でなぞると、目の前にそそり立つものはぴくりと反応を示してくれた。

「ん、ふ…っ、ぅ」

自らの唾液を塗り込めるように扱きながら舐めしゃぶる。段々と硬度を増していくのが目に見えて嬉しい。

ぐちゅぐちゅと音を立てて懸命にペニスを愛撫する小山を、津々見が見つめているのがわかった。

「…良い子」

様子を窺うように合間合間に視線を上げると、その度に頭を撫でられる。良い子、なんてどう聞いたって大の大人に向けられる褒め言葉じゃないのに、ひどく心地がいい。

「ぁ…っ、ん、んぐ、ぅ…ふ」

もっと褒めてほしいとばかりに手の動きを激しくさせ、先端を口内に誘い込んだ。

「はぁ…気持ちいい…」

津々見が頭上で囁く。感じ入るような深い声に、小山はぶるりと全身を震わせた。

欲しい。欲しい欲しい欲しい。今自分の口の中を満たしているこの大きなもので、思いっきり貫かれたい。きつく窄まった縁を無理矢理広げて、太い所で擦って、抉ってほしい。

「ん、んぅ、ふ…ぅぐっ、んんぁ」

カリ首のところにちゅぷちゅぷと舌を絡ませると、頭を撫でていた手のひらに力がこもる。どうやらここが彼の良い場所らしい。

「…太いとこばっか舐めて…そこ好きなの?」

すき、と答えた自分の声は、我ながら馬鹿みたいに上擦っていた。恥ずかしい。恥ずかしいけど、蕩けるのを止められない。

「かわいいよ、小山」
「んっん、んふ、ぅ…はぁ、んっ」
「後で沢山これで擦ってあげるからね」

こくこくと何度も頷く。早く、たくさんしてほしい。

「あっ…?」

津々見の手が突然小山の頭を押した。ちゅぽ、と唇からペニスが離れ、その間を唾液の糸が繋ぐ。

「もういいよ」
「でも」
「次は小山の番」
「…気持ちよくなかったですか」
「逆。気持ち良すぎてすぐイっちゃいそうだから」
「…」
「あ、その目信じてないね。本当だよ」

言いながら津々見は小山の脇に手を差し込み、自らの膝の上に座らせた。

「口にも出してあげたいけど…折角だから、やっぱりこの中に出したいじゃない?」

とん、と指で小山の下腹を指す津々見。この中、ということはつまり。

「…ゴム、は…」
「あっても使わないよ」
「…」
「今更嫌だなんて言わないよね」
「ち…違います、そうじゃなくて」

嫌じゃない。むしろ。

自分の中をあの生温かい液体でたっぷりと汚される想像をして、身体の奥の熱がまた一層高まるのがわかる。じわじわと潤んだ小山の瞳を見つめ、津々見は蔑むように囁いた。

「…やらしい顔」

言わないで。そんな風に言われたら、正気じゃいられなくなる。浅ましくて、はしたなくて、みっともない自らの欲望を曝け出してしまいたくなる。

何もかもを奪ってほしい。全部暴いてほしい。ひとつだって残してくれなくていい。

自分から顔を近づけて口付けると、津々見は一瞬驚いたように動きを止める。が、すぐに優しく抱き寄せてくれた。

「ん、ん…っ、んは、ふぁ…ッ!」

熱い舌に口内を蹂躙される。薄く瞳を開けると、同じくこちらを見ていた津々見の瞳と視線がかち合った。その瞬間、まるで手のひらで握りつぶされたように胸が苦しくなる。

人当たりの良さそうな穏やかな目。丁度いい二重幅で、綺麗な形をしていて、どちらかといえば全体的に派手な顔の造りをしている。

かっこいいだなんて、一度だって思ったことはなかった。顔なんてどうでも良かった。

なのに、今は。

「ん…?どうしたの…?」

手を伸ばして津々見の頬を撫でると、彼は不思議そうに首を傾ける。

「…かっこいい」

かっこいい。この人の全てにドキドキする。

「かっこいいって…俺?」
「はい」
「…小山もそんな風に思ったりするんだ。俺の顔が好みってこと?」
「好みとかは、多分…ないです。何でも、顔とか気にしないんで」
「あぁ、そういえばそうだね。セフレも全員タイプがバラバラだったみたいだし」

どうして小山のセフレの顔を津々見が知っているのだ、なんて野暮なことを今更聞く気はない。

「俺も小山の顔、好きだよ」
「自分の顔は、好きじゃないです」
「こんなに可愛いのに」

可愛くなんてないのに、彼が自分をそんな風に思っているというだけで胸が弾んだ。我ながら単純な思考回路だ。

「可愛いのは顔だけじゃないけど」

言いながら津々見の指が小山のベルトにかけられる。ぴく、と身体が反応した。

「これ、外して」
「は、い」

小さく頷いて指示通りベルトを外し、スラックスのファスナーを下ろそうとしてふと自分の手が震えていることに気がつく。

「…っ」

なんで、どうして。こんなの、わけないことのはずなのに。

「小山?」
「だ…大丈夫ですから、ちゃんと…」
「そうじゃなくて」

津々見はそう言うと、困惑している小山の両頬を掴み、ぐいと上向かせた。

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