エゴイスティックマスター | ナノ


▼ 03

坊ちゃん。私のことを好きだという坊ちゃん。愛してると囁く坊ちゃん。

ひどいではありませんか。貴方があんまりにも私を縛りつけて離さないものだから、私までおかしくなってしまった。

足りない。足りないのです。坊ちゃんが足りません。

苦しくて切なくてどうしようもなくて、私はついに電話を手に取りました。相手は言わずもがな私の主人です。

愛しくて恋しくてたまらない、たった一人の主人です。

『…ん…ふぁい、もしもし』

暫くのコールの音の後、まだほとんど眠っているような彼の声がしました。それだけでぶわりと胸の奥底から熱いものが湧き出てきます。

「坊ちゃん…」
『…いはら?』
「坊ちゃん、坊ちゃん…望様」
『…どうした。こんな朝早くから』
「望様、私、さみしいです。貴方に会いたくて堪らないんです」

情けなくて涙が滲みました。

清々しい朝なんて嘘です。貴方がいない朝など、淀んで見えます。

シーツに残った貴方の香りが、私の胸を締め付けます。苦しい。恋しい。坊ちゃん。坊ちゃん。

依存しているのは私の方なのです。たった数日も離れていられないくらい、いつの間にか愛してしまっているのです。

坊ちゃんはたっぷり数秒間沈黙を保ち、言いました。

『ちょっと待ってろ。電話、切るなよ』
「は、はい」

ごそごそと電話の向こうで物音が聞こえます。言われた通りに通話を切らないで待っていると、もしもしともう一度話しかけられました。

『周りに誰かいるか?…というか、今どこにいる?』
「ぼ、坊ちゃんの、お部屋です…」
『…全くもう!お前は僕が傍にいないときにそんな可愛いことをして!ひどいじゃないか!』
「だって」
『そんなに僕が好きか?恋しいか?』
「はい…」
『抱いてほしいか?』
「はい…」
『うっ、しまった自分の首を絞めるような真似を…』

うううう、と彼の唸り声が聞こえます。

「坊ちゃん?」
『僕は今部屋を抜け出した。周りには誰もいない。そしてお前は今僕の部屋にいて、一人だ。…そうだな?』
「はい」
『なら、今からセックスをしよう』
「ど、どうやって…」
『そこで自慰をしろ。ただし自慰だと思うな。触れているのは全て僕の手だと思え』
「えっ…」
『ちなみに僕はもうビンビンだ』

その報告はちょっといらないと思いました。しかし口には出しません。

「そんな、恥ずかしいです」
『恥ずかしい方が興奮するだろ?ほら、早くそこに寝て、脚を開いて…』
「あ…」
『伊原、僕の伊原。お前の恥ずかしいところを見せて』

私と彼の間には途方もない距離があるというのに、まるで耳元で囁かれているような気持ちになります。頭がぼうっとして、彼のことしか考えられなくなります。

「坊ちゃん…」

気がつけば私は、彼の言いなりになっていました。

『ベルトを外して、ズボンも下着も全て脱いで…そう。上手だな。いい子だ』
「う、あ、坊ちゃん、坊ちゃん」
『何だ?僕はここにいるよ』
「もう、触って…」

興奮が抑えられません。緩く勃ちあがった性器に指を這わせます。彼がいつも触ってくれるみたいに、真似して、思い出して。

『もうびしょびしょじゃないか』
「んっ、ん、んんっ、い、言わないでくださ…っあ!」
『う、あっ、可愛い、伊原…もっと声を聞かせて』

ぬちぬちと小さな音が耳に響いて、彼も向こうで自分のモノを弄っていることが分かりました。それにまた興奮して、扱く手が激しくなります。

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