ともだち
[ 18/19 ]
そうしてやってきたポケモン広場。そこに連なる店の中でも、一番奥にスイが言った店はあった。
…あったん、だけど。
「ボク友達大好き!ルンルン♪あとはセカイイチも大好きだよ!友達友達ー♪」
「………………」
店主は大概変な奴でした。(コラ)
あたしが微妙な目で店主であるプクリンを見ていると、スイがそのヒトに親しげに話し掛けていく。
「よぉ、ライン!久し振り!」
「わっわっ!スイくんだ〜!久し振り〜♪友達サークルにようこそ!」
「今回は結構長く店空けてたんだな」
「うん!別の大陸にいるイトコのところにいってたんだ〜。あれ?この子は?」
ニコニコと笑顔が絶えないプクリン――名前をラインというらしい――が、不意にあたしの方を見る。(思わずギクッてしたのは仕方ない、と思う…、よ?)
「こいつはユウ!オレ、こいつと救助隊やることにしたんだ!」
「え!そうなの!?わ〜おめでとう、スイくん!」
パチパチと心から祝福してくれてるような拍手をくれたライン。
うん…悪いやつじゃない…かな?
あたしはまだ微妙な顔をしながらも、ラインに向かって軽く会釈した。
ラインは「よろしくね〜!友達友達〜!」とブンブン手を振ってきた。おおうテンション高い……。
「そっかそっか!救助隊はスイくんの夢だったもんねぇ〜。だったらお祝いに、友達エリアをあげちゃうよ!」
「友達…エリア?」
聞きなれない単語に耳をかしげる。するとラインは「あ、知らない知らない?」と妙にウキウキした様子でカウンターから身を乗り出してきた。
「友達エリアっていうのはね、ダンジョンで仲間にしたポケモン達が住むところ、みたいな場所なんだ!ポケモンのタイプや種族によってエリアはたくさんあるんだけど…別に仲間が多いからすごい救助隊ってわけじゃないんだよ!少人数チームで動く救助隊もあるし!でも少ないより多い方が良いと思わない?大は小を兼ねる!ね!」
なんと答えろと。
取り敢えず曖昧に笑って誤魔化しておいた。
ラインはそんなあたしの態度に気を悪くした風もなく、相変わらずウキウキしながら名簿らしき紙に何かを書き込んでいる。
「今回は救助隊結成祝いだよ。好きな所タダで選ばせてあげる!さぁさぁどれにするどれにする!?」
店主は気前のいい奴でした。
あたしは一歩後ろにさがり、スイの背中を軽く押す。
「スイ、頼んだ」
「え、いいのか?」
「よくわかんないから、いいよ」
「よっしゃ!じゃあ、こことここと…」
意気揚々と選び始めたスイの背から視線を外し、あたしは空を見上げた。
雲ひとつない、快晴の空だった。
色々やっているスイはまだまだ時間がかかりそうなので、私はふとカクレオンのお店の方に歩いていった。兄弟らしいカクレオンが経営する、この辺りで唯一のお店。
「あっ!恋人さんじゃないですかー♪」
「そのネタ、まだ続いてたんだ」
私を見るなり声をかけてくるカクレオン(ノーマルカラー)に苦笑する。
「そういえばお名前聞いてませんでしたね。ワタシはブローと申します」
「ワタシはディア。どうぞよろしくおねがいいたします〜」
「ご丁寧にどうも。夕日です。スイと救助隊始めたんで、これからお世話になると思いますがよろしく」
「オォー!とうとうスイさん救助隊を結成されたんですか!いやぁおめでたいですねぇ〜」
「どうぞご贔屓にお願いしますよー」
「うん。…あれ?これ…」
ふと視線を落とすと、食料やアイテムの中にきらりと光るものを見つけた。何かの装飾品だろうか。編んで作られた茶色い革紐に通された、青色の大きめの珠とその両脇に橙色のビーズのようなものがついている。
「おっ、夕日さん御目が高いですね〜。それは数日前に仕入れたものでしてね、なんと!ペアでセットになってるんですよー。こっちのは青い珠と橙色の珠が逆なんですがね…ペンダントにするもよし、髪飾りにするもよしのアクセサリーです!」
「ふーん…」
「この透き通った石がまた綺麗でしょう?夕日さんみたいな方にきっとお似合いですよ」
台の上に丁寧に置かれたそれを、まじまじと眺める。こういうのは好きだ、綺麗だから。
「よろしければお譲りしましょうか?」
「はっ!?」
ブローの言葉に仰天し、顔を上げる。
「救助隊を結成された記念ですよ♪次からちゃんとお金は払ってもらいますけど、今回は特別サービスでっす!」
「おおー!流石兄さん!太っ腹ー!!」
「え、あ、いや…でも、」
戸惑うあたしに構わず、兄弟は小さな手のひらくらいの大きさの紙袋に2つの装飾品を落とす。そしてあたしに向かって満面の笑みでそれを差し出してきた。
「で、でも悪いよ」
「夕日さん、こういうときは素直に受け取っておくものですよ。その代わり、うちをご贔屓にしてくださいね☆」
ぐい、と強引に手の上に紙袋を乗せられる。うう…。
「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「はいはい、毎度あり〜♪」
その時だった。
「仲間を助けてください!お願いしますっ!」
「だめだ、そんなんで引き受けられるか!!」
広場の方から、そんな大声が聞こえてきたのは。