変な依頼者  [ 11/19 ]








…………









『……また、か…』



ふわふわする空間。

どこか懐かしい感じのする空間に、夕日はいた。



『また、夢の中…なのかな…?』



そっと目を細める。

ああ、まただ。

また、あの気配。



『……また、あなたなの…』



まだ頭がぼんやりしている。

ふと、何かに気がついた。




『――、――――』


『…え、何?』



気配が、何かを言っている。

そんな気がした。

気配は必死だ。



『…上手く、聞き取れない………何なのさ……』



ダルい体を無理やり動かし、気配の方へ顔を向ける。

その時、ぐらりと空間が揺れた。



『―――え、揺れてる…?地震…?』



ぐらり、と揺れが更に激しくなった。



『これ…夢じゃ……?

 …まさか、現実……?』



そこで夕日は意識が沈んでいくのを感じ、またかと思いながらそれに逆らわず目を閉じた。












《―――――はやく、思い出して…》
















***



「―――……あー、もぅ…」



はぁ、と深い溜め息をつきながら、あたしは体を起こした。
何なのさ、ホントに。何であんなに、気になるんだろ。

気分が悪い。

繋がらない記憶。

…もしかして、あの夢はあたしの記憶に関係あるのかな。



「……あの〜…もし?」



まだ確信はないけど。
ただの思い過ごしってことだって有りうるよね。



「もしもし?あの〜……」



でも、あの夢が記憶の手掛かりに繋がるんだったら、考えてみる価値はある。
だって、この町にあたしの記憶の手掛かりはひとつもないんだし。今のところ、だけど。



「もしもし?あの〜、もしもーし?」



…賭けてみるかな。
でも、夢だしなぁ……。手掛かりゼロじゃん。
夢とか調べる方法ないじゃん。

……ムリじゃん。



「あー…どーすれば……」

「もしもーし!!!」

「うわぁお!!?」




突然大声で叫ばれ、あたしは思わず飛び上がった。
慌て辺りを見回す。
……あれ、誰もいなくね?



「…空耳?やけにはっきりした空耳だな……」

「もしもし?あの〜…夕日さん?ですよね?」

「あれ、あたしのこと知ってるの?最近の空耳は進化してるなぁ〜…」

「…あっ、もしかして姿が見えない?これはどうも失礼しました!」

「は?」



あれ、空耳に姿ってあるの?
そう思って再び辺りを見回せば。



ボコッ



「うわぁお!?(二回目)」

「はじめまして。私たちダグトリオと申します」



目の前の床からダグトリオと名乗る3匹のモグラが出てきました。
つか地面の中かよ!見えるワケないじゃん!?しかもそこ石畳がある箇所なんだけど?どうやって突き抜けたんですか!?

会って早々この人(?)に尽きない疑問が生まれました。



「実は昨日の夜、地震があったあと……私達の子どものディグダが襲われまして。高い山の頂上に連れ去られたんです。そんなとこ、私達にはとても登っていけないし……ですのでここはひとつ、夕日さんにお願いしたいというわけなんです。ディグダを拐ったのはエアームドってポケモンです。とても凶悪なヤツなんで気をつけてください。何とぞよろしくお願いします。ではっ!」



一気にそれだけ言うと、ダグトリオは再び地面に潜っていった。



「……………」



……なんだったんだ、今の……………。



***


「おはようユウ!!今日もいい天気だな!」

「ああ、おはようスイ。今日も朝っぱらから憎たらしいくらいテンション高いね

「朝っぱらから酷くね!?」



朝っぱらからテンションの高いスイに溜め息をつく。
ヤバい、最近寝不足だわ。いや、寝てはいるんだけど…あの夢のせいかな、寝た気がしないんだ。



「…あ、そうだ。スイ」

「なに?」

「実はさ、さっき救助依頼を頼まれたんだけど…」

「…………………え!?救助頼まれたって!?」

今はっきりそう言ったよねあたし



つか最初の間はなんだ。
溜め息混じりに説明をしようとした、その時。



「そうです!!」

「「うわぉ!?」」



あたしとスイの間に割り込むように地面が盛り上がり、そこからさっきのダグトリオが勢いよく出てきた。
あたしは思わず一歩後退り、スイはビクッと肩を揺らしてダグトリオを凝視する。



「私たちの子供のディグダが拐われたんです!場所は鋼山の頂上です!なにとぞよろしくお願いします。ではっ!」



スイにもあたしにした説明の簡潔版?みたいなのをして、ダグトリオはまた地面に潜っていった。



 その間約5秒。



「…………なるほど…」



スイが固まったままあたしに目を向ける。



「い、行ってくるか…ユウ……」

「今までで一番行きたくないよ、あたし」

「……うん、まぁ何が何だかよくわかんなかったしな………」

「うんそうだよね。だからスイ、行くなら一人で逝ってください

「字ィ違わね!?」


結局あたしはスイの押しに負け、適当に荷物を詰めて鋼山へ向かった。
行きたくない。これは素で行きたくない…。





  









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