依頼達成  [ 9/19 ]



ここまで来たら大丈夫かな。
あの鬱陶しいエレブーたちを振り切り、あたしは漸く走っていた足を止めた。



「…ん〜………もうくえにゃぁい………」



さて、と。
あたしは呑気に背中で眠りこけているスイを予告無く地面に落とした。



「ブギャッ!!?」

「さて、行こうか」

「え?あれ、肉の山は?ここはどこ?オレは何?」

「君は水龍で年中頭の中がお花畑なワニノコだよ。肉の山は今から作るからちょっと待っててね」

「え、ユウ?ちょ…何その笑顔…………まっ、そのチラついてる炎は…ッ!!!










ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!」

































にしても、この山ってなかなか広いなぁ。まあ山なんだし当たり前か、と先頭を歩きながら思う。
周りを見回しても、ごつごつした岩肌ばかり。さっきからずっと続いている、似たような景色。こりゃあ方向感覚がないと迷いそうだな、なんて考えながらひたすら奥を目指して歩く。



「わかんないんだ…途中から記憶が飛んでて、なんか最後にビリッとしたような気はするんだけど」

「へーそう。で、何か言うことは?」

ごめんなさいでした

「よろしい」



体から香ばしい煙を立ち上らせたスイに一つ頷き、あたしはまた前に向き直る。
それからどのくらい進んだだろうか。
キィン、と機械音のような音が聞こえてきて、ハッとしたスイが真っ先に反応した。



「あ!ユウ、あそこに!!」

「ああ…いるね、なんかコイルともレアコイルともつかない超微妙なラインさ迷ってる物体が

「(ユウって、毒舌……?)あぁ…そ、そうだな」


スイがなんかちょっと引きつった笑みを浮かべてるね。
気にしたら終わりっぽいから気にしないケド。

その後、あたしたちはなんとも微妙な(以下略)のコイルを連れて救助隊バッチの能力を使おうとした、その時だった。



「まてやおのれら!!」



うっわ来た。
スイは「え?」と不思議そうに振り向いたが、あたしは振り向かない。
あんなん無視だ無視。
さーて、バッチはどこに……。



「くぉらあそこの小娘ェ!!シカトとはええ度胸やないかワレェ!!!」

跡形も無く散れ

「ぶげふぅっ!!?」

「「「「おやぶーん!!!!」」」」

「(うっわぁ…)」



小柄な体から繰り出された、想像できないほど強力なキック。
綺麗に鳩尾に入ったその蹴りは、大柄なエレブーをいとも容易く吹っ飛ばす。顔面からダイブしたエレブーは、まるでどこぞの漫画のように数メートル吹っ飛んで大の字になって地面に転がった。

ふぅ、言い仕事したぜ。

やりきった表情で額の汗を拭うあたしを、スイがなんともいえない表情で見つめていた。



「ぐ…さ、さすがや嬢ちゃん…ほぼ初対面のポケモン相手に、情け容赦のかけらも見あたらへん……」

「こっちの馬鹿一人気絶させといて何を言うか。本来ならそれでもお釣りが返ってくるよ、手加減したあたしに感謝しな」

「(男らしい!!)」



ハッ!と鼻で笑って言うと、例のエレブーは顔面を押さえながらムキーッと奇声を発しながら地面をバンバン叩いている。ハッキリ言って迷惑極まりない。
スイが引き続きなんともいえない以下略。



「で、なんか用?あたしらさっさと地上に戻りたいんだけど」

「地上に?戻したるわ……ただし、










『戦闘不能』って形でなぁ!!!」




ひゃはははは、とか明らかに悪者っぽく笑うエレブーと周りのエレキッドたち。
あたしはスイに軽く目配せし、コイルたちと一緒に彼を下がらせた。
また電撃喰らったら厄介だしねぇ。ま、今回はそうさせるつもりもないけど。



「…戦闘不能、ねぇ?」



シュボッ、と口から小さく火の粉が爆ぜる。



「その言葉……」



めら、とあたしの背後で黒い炎が揺れた。



そっくりそのまま返してやるよォォォ!!!

『『うぉぉぉっ!!!!??』』



アタシは超特大の火炎放射でエレブーたちを焼き尽くす。
スイがそっとエレブーたちに合掌した。



***



「ビビビ!!ヨカッタナ!!」

「ワーイ!!ハナレタハナレタ!!」



洞窟から出ると、くっついていたコイルの体が離れた。
てか、外に出て離れるなら最初から出ろよ。(禁句)

ちなみにスイは洞窟を出てこのコイルたちを引き渡すまで自分からは一言も喋らず、時々出した指示にはとても俊敏に従順に従ってくれた。何故だろう、と首を傾げつつ、まぁ困らないし別に良いかと放置して。



「あ、そういえば聞きたいことあったんだ」

「ナンダ?」

「えーとさ、“アイバ”って誰?」



ずっと気になってたんだよね。
スイも知らないとかほざいてたし。
そう言うとコイルは驚いたように(と言っても表情なんてわからないから声の調子での判断だが)、「ビビビ」と独特な鳴き声を発してクルリと一度回って見せた。



「ナンダ、シラナイノカ?“アイバ”チャントハ、キャタピーチャンノコトダゾ」

「「………は?」」



思わずキョトンとして、スイと顔を見合わせる。
あの子、アイバって名前だったんだ。ちなみに漢字だと“藍葉”らしい。

…一回転した意味はあったのか?




まぁ、とにかく任務完了ってことで。
嬉しそうに報酬を受け取るスイを横目に、あたしは真っ青な空を見上げた。





  









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -