なんかいた
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「…お前が、やったわけ?」
先程までエレキッドしかいなかったその中心に、一匹のエレブーがいた。
どうやらこの群れの親玉らしい。ニヤニヤと笑みを浮かべ、あたし達を見下ろす。
ああ、不快。
「答えろ。…お前が、やったのか?」
自分でも驚くような低い声で、エレブーに問うた。
エレブーはその声に一瞬固まったが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。
「そうやで、アチャモの嬢ちゃん。俺の群れに突っ込んでくるなんて、運が悪いわぁ。自殺行為やったなぁ」
エレブーがそう言うと、周りのエレキッド達がゲラゲラ笑いだした。
どうやら心配していたことがおきてしまったようだ。
こんな鳥みたいな姿をしていても、あたしのタイプは炎一択。だがスイは電気と相性最悪な水タイプだ。逃げ回っている中で喰らってしまったダメージが、少しずつ蓄積されていたんだろう。
参ったなぁ、とスイを支えながらエレブーたちを睨む。相棒の状態異常にも気付けないなんて、情けない。
「…何?お前等、そんなに強いわけ?」
嘲笑を浮かべて言うと、エレブー達はキョトンとして、それから腹を抱えて笑いだした。……気にくわない。っていうか、何で笑われてんの?マジで潰すぞオイ。
じとっとした目でエレブーたちを見ていると、腹を抱えて笑っていたエレブーがチラリとこちらを見た。…次笑ったら燃やす。ぐ、と気付かれないようエネルギーを練った。
「嬢ちゃん、そりゃ愚問やわ!俺らの名を知らんのか?ちょうどええ機会やわ、教えたる!―――俺らはなぁ、泣く子も黙る電雷組や!!」
バチッとエレブーの頭に生えた二本の角から電流が迸(ホトバシ)る。
あたしは自分でもわかるほどあからさまに、眉根を寄せた。
「………何、それ?」
あたしの答えに、エレブー達は思いっきりずっこけた。
その行動に、あたしは首をかしげる。
「ま、待てや嬢ちゃん!!もしかして、電雷組知らへんのんか?」
エレブーの言葉に、あたしは大きく頷いた。
電雷組とか聞いたことないし。
それ以前に、あたしこの世界のこと何にも知らないしなー。
あれ、でもスイも知らなさそうだったよね。
「…ま、マジかいな……電雷組を知らへんなんて……。かなりショックやなぁ……」
ずーん、と背中に暗雲を背負って、エレブーは地面に“の”の字を書き始めた。
周りでは、アイツの部下なんだろう…エレキッド達が必死にそんなエレブーを宥めていた。
「あ、兄貴、元気出してください!!」
「そうっすよ!兄貴にはおいら達がついてるじゃないっすか!!」
「あ、あんな小娘の言うことなんて気にしちゃダメっす!!」
…小娘?
つい、と目が細まる。へぇ、小娘。………へぇー。
人様の相棒潰しといて、見下して、勝手に語りだして、それで小娘、だと?
「…何よりも先に、常識を学ばないといけないかなぁ」
ゆらり、とスイを担いで立ち上がる。
青春ドラマみたいなのを始めやがったエレブーたちは、不穏な空気を漂わせるあたしに気付く様子も無い。
好都合だ。
すうっと大きく息を吸い込む。
体内で揺らぐ熱いエネルギーの塊。
ぎっとに睨みつけた先、一匹のエレキッドが漸くこちらに気付いたその瞬間。
「燃えろ」
超特大の火炎放射を一気に放った。
「いっ…!!?な、なんやあああああああああああ!!!?」
「ぎゃーおやぶーん!!アチィ!!アチィっすー!!!」
「いきなり洞窟が火の海やああああああああ!!!!」
それから超特急で疾走。もちろんスイは落とさない。後ろから聞こえてくる悲鳴はもはや無視の方向で。だってあたし悪くないわ。
先に仕掛けてきたのはあっちだもん。