どうやら次の対戦校が、所謂《そういう》趣味の人間が集まった学校だったらしい。
俺としては非常にどうでもよかったのだが、必死に俺の誤解を解こうとしている親友の姿は見ていて面白いものだったため敢えてそのことは黙っておこうと思う。
後日、サッカー部がエース不在の状況で無事その対戦校を降したのだという噂を小耳に挟んだ。なんでも、二回戦で期待のエースくんは足を故障しちゃってたんだとか。

風丸は俺に対してそういった話を自分から持ち込んでこないからな。俺が極度のサッカー嫌いだということを理解してのことだ。……俺がサッカー部に関する情報を耳にするときは、大抵そのことを知らないクラスメイト経由で入ってくる情報がほとんど。
だから最初の帝国戦と尾刈斗中以外、風丸からサッカー部に関する話題を振ってきたことは一度も無い。先日のアレは、まあ偶々だ。

こんな調子で、俺の知らないところであいつがいるサッカー部はFFへの駒を進めていくのだろう。
ああでも、このまま雷門が本戦に出場するなんてことになったら、学校総出で応援とか行ったりするのかなぁ。

そんなことを考えながら、俺は快晴の空の下を普段どおり登校した。
いつもの道。いつもの時間。いつもの光景。

―――だが、只一つだけ、たった一つだけ、違うことがあった。



「……?」



ふと、視線を横にずらすと、ひょろりとした長身の生徒が、昇降口に向かって歩いていく生徒たちの流れから一人外れて、裏手のほうへ歩いていくのが目に入った。
……アイツは…見覚えがある。
以前メイド喫茶前で風丸たちサッカー部と鉢合わせたときだ。確かあの面々の中に、あいつを見た。流石に名前までは知らないけど。



「………」



この時間から、裏手に何の用だ?朝練のあったクラブの生徒ならともかく、サッカー部が朝練してるなんて聞いた事が無い。

それに………。



「……………………はぁ」



……気まぐれ。本当に、只の気まぐれと、なんとなく感じた、勘。
腕時計を確認する。…HRまで、まだ時間がある。
俺はこれから起こす自分の行動に自分でも嫌気がさしながら、無言で踵を返した。




***




――――ひょろ長い生徒がたどり着いたのは、サッカー部の部室だった。

あーあ、なんで俺こんなストーカー紛いのコトしてんだよ。ほんっと意味わかんねー。
これで只「昨日帰りに忘れた私物を取りに来ただけ」とかだったらほんっと笑い話にしかなんねーぞ。…てか、常識的に考えたら、それがフツーだろ。
なのになんで俺はこんな朝っぱらからろくに面識の無いヤツの後つけてんだ…。…………でもさ、気になっちまうモンは、しゃーねぇじゃん。


たかが忘れ物一つ取りにいくのに、あそこまで思いつめたような顔してるわけねーんだから。


……しばらくして、部室から出てきた彼は、隠れている俺に気付くことなく、重い足取りで校舎に向かって歩き出した。

ここから校舎へ向かうのに一番手っ取り早い道は、裏門付近にある駐車場を経由していくことだ。
彼もそちらを目指しているようだ。…にしても、暗い背中だなー。あいつが何かに悩んでいることは一目瞭然だ。…風丸は、このことを知っているのだろうか。


その時、ふと先を行く彼の足が止まる。



「…?」



そのまましばらくある方向を見つめていた彼は、おもむろに進行方向をそちらへ変えた。
十分距離をとったところで、俺も彼が立ち止まった場所まで行ってそちらを覗き込む。

あれは……確か、学校保有のバスがしまってあるガレージ…?

見ると、普段はきっちり閉まっているはずのシャッターが、ほんの僅かに開いていた。







*直感に従え


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