どんまい、サスケ! 7

他のチームと会わないよう適当に試験終了まで時間を潰すというシカマル達と別れ、現在俺達は次の巻物を求め移動中。
しかし突然何の言葉も無くナルとナルトが同時に止まった。


「何だ?」

「・・・・・サスケ、俺から離れたらダメだってばよ」


俺の問いに、ナルトの静かな声が返ってきた。
そのいつもと違う声音にただ事じゃないと察する。
見ればナルはいつの間にかクナイを手に目を細め辺りへと視線を向けていた。
だが、二人がそこまで警戒する理由は分からない。
敵チームが潜んでいるのか、それとも罠が張り巡らされているのか・・・
その見えない恐怖に、呼吸一つするにも神経を使う。
するとその時、ナルが動いた。
ピクッと手が微かに動いたかと思ったら、次の瞬間には前方斜め上へと飛び上がっていた。
そして木々が立ち並ぶせいで出来た暗闇へとクナイを複数投げつける。
すると数拍置いて大きな爆発音。
起爆布をつけていたのかと、爆風を堪えて視線を向けた先の光景を見た瞬間驚いて声を失った。

爆発の炎で浮かび上がったのは、巨大な大蛇・・・

あまりの大きさに全長がどれ程なのか想像も出来ない。
その辺りの大木より太い胴体にゾッとした。


「氷遁・破龍猛虎!」


鋭く響いたナルの声にハッとする。
そして恐怖に固まりそうになった体をなんとか動かし視線を向ける。
すると氷で出来た虎が大蛇へと飛び掛っていた。
大きさは大蛇の方が遥かに大きいが、スピードと攻撃の威力自体は虎の方が高いらしい。
鋭い牙で噛み付き、大蛇が怯んだところを爪を突き立てながらその頭を地面へと叩き倒した。
やったのかと大蛇へと視線を凝らせば、まだ動こうと舌がチラついていた。
すると近くの枝に飛び降りたナルは素早く印を組み始める。


「これでお終い・・・・氷牢の術!」


印を組み終わると同時に巨大な氷が地面から次々と現れ、あっという間に大蛇を氷の中に閉じ込めた。
あれでは動くに動けないだろう・・・
まさに氷の牢だ。
あいつ、こんな事も出来たのかと俺は唖然とした気持ちで視線を向けた。





それにしても何て恐ろしい森だ。
こんな馬鹿デカイ大蛇までいるとは思わなかった。
思わず顔を顰める俺の横に、ナルが素早く枝から降りてきた。
そしてチラッと辺りへと視線を向けながら口を開く。


「油断したら死ぬよ、サスケ」

「っ!まだこんな大蛇がいるのかよこの森は!」


警戒が解けていないナルの様子に、俺は慌てて辺りへと気を配る。
だがナルは俺の言葉に淡々と返した。


「何言ってんの。
始めに言ったでしょ?
この森は私の庭みたいな物で、何年も前から人喰い猛獣を始め蛇や蛙も手懐けてるって。
この森に住んでる奴なら間違っても私に敵意を向けてくるはずがない」

「なら、さっきの奴は何で・・・」

「・・・・・まっ、やーーーっと少しは歯応えのある奴が出てきたってとこ?」


ナルはそう言うと口端を楽しげに上げた。
こんな状況で普通笑えるか?!
つまり先ほどの大蛇は敵チームが口寄せして仕掛けてきたもの。
そんな事出来る下忍がナルやナルト以外にもいたのかと正直驚く。
やめてくれ、俺は平和が好きなんだ。

しかし俺のそんな想いも虚しく状況はどんどん悪化していった・・・
まずは前方から小石が一つ飛んできて頬を掠めた。
何だと目を向けようとしたその瞬間、突然激しい突風が体を直撃する。
さらに風と一緒に砂塵が舞い上がり、辺りの視界は一気に0になる。
グッと歯を食い縛って吹き飛ばされぬよう足へと力を入れるが、風の威力は増すばかり・・・
このままではヤバイ。
咄嗟にクナイを地面に突き立て耐えようと姿勢を低くしたが、バランスが崩れて足が地から浮く。
そして俺は、そのまま一人突風に吹き飛ばされた・・・





本能的に頭を庇うように丸めていた体を伸ばし立ち上がる。
確かめるように体を動かし、おかしな所が無いか確認する。
所々切り傷等はあるが、大した怪我は無いようだ。
それを確認し終えると、次に俺は周りへと視線を向ける。


「だいぶ飛ばされたみたいだな・・・」


周りは木々のみで正確な位置は分からないが、少なくともナルとナルトの姿は見えない。
先ほどの風はきっと敵の術だろう。
なら今頃2人は既に戦闘に入っているのかもしれない。
もしくはあの後俺のように飛ばされたか・・・
飛ばされてきた大体の方角は分かる。
なら戻ってみるかと足を進めようとしたその時・・・


「こんな所にいた」


そんな声と共に頭上の枝からナルが飛び降りてきた。


「全く・・・こんなとこまで飛ばされるなんて、探す方の身にもなってよね」

「わっ悪い」


ナルの呆れたような声に思わず目を逸らす。
だがすぐにもう一人の姿が見当たらない事に気付いて首を傾げた。


「ナルトはどうしたんだ?」

「ん?あぁ、どこかに飛ばされちゃったみたい。
まぁサスケと違って一人でも大丈夫だろうけどね」


ナルのその答えを聞いた瞬間、俺は素早くポーチからクナイを取り出して投げつけた。
軽く身を捻ってかわすナル。
俺はその間に後ろへと飛び退り、十分な間合いを取った。


「・・・・・何するのサスケ」

「お前はナルじゃない・・・」


睨みつけるようにして言えば、ナルは首を傾げた。


「何言ってるの?」

「本物のナルはな、例え俺が大怪我して倒れていようが掠り傷のナルトを優先するような奴なんだよ。
そんな奴がナルトより先に俺と合流すると思うか?
いや、無いな!
偶然ナルトを探してる途中で見つけたとしても、まずはナルトだと俺の事なんか放置していくような奴なんだ!!!」


力強くそう言いきれば、目の前のナルに変化した奴は途端に哀れむように眉根を寄せた。


「・・・・・あなた、自分で言ってて悲しくないの?」

「もう慣れた」


これぐらいで悲しんでいたら、アカデミーを卒業なんて出来なかっただろう。
これぐらいを受け止めていなければ、あの二人と同じ任務など出来ていなかっただろう。
人間とは中々と順応能力が高い生き物だ。
俺はここ数年で、もう十分だと言うほどそれを学んだんだ。


「フフ・・・フフフ・・・ならこんな姿もう意味はないわね」


ナルに変化した奴はそう言うと薄気味悪い笑みを浮べた。
そして次の瞬間、その姿は白い煙に包まれ本当の姿を現した。
不自然な程の肌の白さが、その黒紙をより引き立てている。
赤い唇が薄気味悪く弧を描く。


「私の名は大蛇丸。
サスケ君、君を殺しに来たの」


真正面から視線が合った瞬間、強い殺気を放たれた。
だが、・・・・・正直ナルに向けられる殺気の方が強い。
これぐらいでどうにかなっていては、アカデミーでのあのナルの授業中の殺気に耐えられはしなかっただろう・・・

変わらず睨みつける俺の様子に、大蛇丸は微かにだが驚いたように目を見開いた。
そして次に口端を嬉しそうに上げ、続けて数本のクナイを投げつけてくる。
だが、・・・・・正直これもナルが投げてくるクナイの方が速さと威力がある。
これぐらい避けられなければ、アカデミーでのあのナルの怒涛の攻撃の日々を生き延びる事は出来なかっただろう・・・

半ば条件反射のように全てのクナイを避ける。


「思ったより動けるのね。
でも、これはどう?」


大蛇丸がそう言い終わるのと同時に、袖から無数の蛇が現れた。
それを俺は第一試験のあの尋常ではない緊張感の中で開眼したらしい写輪眼で冷静に襲いかかる蛇を見極めて避けた。
そして素早くクナイに起爆布を巻きつけて投げつける。
だが寸前で避けられたらしく、大蛇丸は枝の上へと飛び移っていた。


「見えているのね。
・・・・想像以上だわ、サスケ君。
写輪眼の開眼の早さも、その動きも私の殺気に動じないところも何もかも!」


大蛇丸はニタリと笑みを浮べた。


「サスケ君、私はあなたが欲しい。
今日は様子見のつもりで来たんだけど、あなたがこれほどだとは思わなかったわ。
・・・・・どう?私と一緒に来ない?」

「お前と?」


突然の話しの流れに思わず眉根を寄せる。


「そう、私と来ればあなたに力をあげるわ。
・・・一族を滅ぼしたうちはイタチを殺すのがあなたの野望でしょう?」


・・・そう言えば、そんな事を本気で考えていた愚かな時期もあったな
大蛇丸の言葉に、思わず昔を懐かしむように目を細めた。
確かに俺は一族を滅ぼしたうちはイタチをこの手で殺してやりたかった・・・
だが、今は違う。
俺は平和が好きなんだ。
身の安全を何よりも望んでいる。
自ら危険を冒すような馬鹿な真似はもうしない。
アカデミー入学3日目でのあの愚かな一言でもう十分だ!
俺はそう心の中で硬く誓うと、興味ないと大蛇丸の言葉を切って捨てようとした。
しかし・・・・・


「私と一緒に木ノ葉を抜けましょう?
もちろん、抜ける手立てもその後の衣食住もちゃんと保証してあげるわ」


木ノ葉を、抜ける?
それはつまり、ナルの手から逃れられるという事か?
その言葉がグルグルと頭の中を回り始めた。

安全、危険、里抜け、ナル・・・・

心の中の天秤が微かにだが揺れ始めた。
それを鋭く察知したのか、大蛇丸は畳み掛けるように言葉を続ける。


「サスケ君、私はあなたが欲しいの。
あなたが望むなら力も与えるし、それまで大切に守り育ててあげるわ。
だから、私と一緒に行きましょう」

「・・・・・・・」


日々危険と隣合わせのような今の状況から脱せれるかもしれない・・・
それは酷く魅力的な誘いに思えた。
だが、体に染み込んだ恐怖が安易に頷くのは危険だと信号を発する。
どうするべきか判断しかねて、自然と言葉をつげなくなった。
するとその時・・・


「サスケはお前なんかと行くわけねーってばよ!」


俺と大蛇丸の間に飛び降りてきた二つの影。
その一つであるナルトは、大蛇丸の視線から俺を隠すように立ち塞がった。
俺からはその背しか見えないが、その顔が笑顔を浮かべていない事だけは分かる。


「サスケは俺達七班の、木ノ葉の大切な仲間だってばよ!!!
お前について行くわけねーってば!!!」

「ナルト・・・・」


強く言い切るナルトに感動する。
・・・・・さっきまでの俺はどうかしてたんだ
一瞬でもナルトを裏切るような事を考えた自分が酷く恥かしい。


「サスケ!安心するってば!!
こんな奴にお前を連れて行かせたりしねーってばよ!
俺もナーちゃんも、サスケを守るってばよ!!!」


真っ直ぐと、俺の事を信じきっているような目がこちらを振り返りズキリと良心が痛んだ。
だが、それと同時にナルトの隣に立つ人物もこちらを振り返り口を開く。


「サスケ・・・」


静かな呼びかけに、自然と背筋が伸びた。
何を言われるのか想像がつかず、俺は恐る恐るナルへと視線を向ける。


「サスケは里を抜けるなんて愚かで考え無しの行動をするわけないって、私信じてる

「・・・・・・・」

「でももしサスケが里を抜けるなら、物凄く辛くて寂しいけど私直々に追ってあげるからね

「・・・・・・・」

ジワジワと追い詰めて、力の差をこれでもかってほど見せ付けて里を抜けた事を心底後悔させてあげる。
私に出来うる最強の術をいくつも味合わせてあげる。
そしてナー君を裏切るって事がどれだけ愚かな事かその身にしっかりと刻みつけてあげる。
・・・・・まぁ、里を抜けるはずがないサスケには関係ないことだよね

「・・・・・・・・・・・・・あぁ」


静かに言い切るナルに恐怖する。
・・・・・さっきまでの俺はどうかしてたんだ
一瞬でもナルを裏切るような事を考えた自分は愚かで命知らずだ。
死ねばいい、むしろ殺される間違いなく。
背筋を伝う嫌な汗を感じて、俺は強く強くこの里を抜けるなんて馬鹿で愚かで死を確実に早める選択をするまいと硬く心に誓った・・・





「フッフー!さっきは小賢しい術使っていきなり逃げるとか超失礼だしー!
・・・戦いの上での礼儀を、私が叩き込んであげる」


楽しそうにそう言うと、途端にナルから禍々しいチャクラが発せられた。
空気がビリビリと震えるほどの圧迫感。
それに驚いたのか大蛇丸が目を見開いた。


「このチャクラはっ!
・・・・・そう、九尾の子達ね。」

「当たり。
腐っても三忍だね!
でも相手が悪過ぎた」


大蛇丸はナルを警戒するように、ナルは大蛇丸を挑発するように視線を逸らさない。
一触即発。
そんな空気が流れて、無意識の内に俺は口の中に溜まった唾液を飲み込んだ。
次元が違い過ぎてどちらが強いのかも俺には判断出来ない。
ピリピリとした独特な感覚が広がる。
そんな中、場違いな程の間延びした声が耳に届く。


「ナーちゃん、ナーちゃん!
こいつと知り合いだってば?」


ナルトがナルの袖をクイクイッと引きながら首を傾げていた。
・・・・・大物だ
こんな空気の中、いっそそこだけ花でも咲いて陽が降り注いでるようにさえ感じる。
周りはブリザード状態、大荒れしているというのにだ。
しかしそこはそれ、どこまでもナルトに甘いナルだ。
無視するなんて選択肢など最初から持ち合わせているはずも無く、大蛇丸から何の途惑いも無く目を離すとナルトへと視線を向けた。


「ん?ナー君も先生から名前くらい聞いた事あるでしょ?
大蛇丸だよ、オカマの

「えっ?!あれが自来也のじーちゃんが言ってた大蛇丸だってば?」

「そうそう、先生が勝手にライバル視して友情ごっこしてたオカマ。
結局先生の説得聞かずに里抜けした面倒な奴だよ」


・・・先生と言う割には言い用が酷い。
だがナルはそんな事全く気にせずに、大蛇丸の方へと数歩進み出る。


「ナー君、こいつは私が片付けるね!
一応あんなんでも私の先生だし、その先生の人生の汚点が目の前にいるなら教え子の私が抹殺するのが筋ってもんだしね

「わかったってばよ!」


ナルトはナルの言葉に笑顔で頷くと、「頑張るってばナーちゃん!」と言って俺の隣まで来て二人から離れた。
本当に手を出すつもりはないらしい。
だがそんなナル達の様子に流石に俺は心配になってくる。
話を聞くに、どうやら目の前にいる奴は木ノ葉の「伝説の三忍」と呼ばれるうちの一人だ。
ナルが強いのはよく分かっている、むしろ身に沁みている。
だがその強さがどこまで通用するのかと問われれば、俺ぐらいの力量では推し量る事さえ出来ない。
しかしそんな不安もすぐに無駄だと察した。


「あんたが持ってるのは『地の書』でしょ?
一応試験中だから巻物の奪い合いって形にしとかないとね」


目の前で禍々しいチャクラを発し続けるナルは、ポーチから『天の書』を一つ取り出して口端を綺麗に上げた。


「じゃあ何でもありの巻物争奪戦を始めましょうか?
・・・・・命懸けで」


グッと重みを増した空気に、これから始める戦いの勝敗が既に見えた気がした・・・





一言で言うなら圧倒的。
そして現状を言うなら壊滅的。

あれから30分と経ってもいないのに、辺りは見事に原型を留めていなかった・・・


まず始めのナルの攻撃は火遁だった。
自分から巻物の奪い合いと言っておきながら、だ・・・
強力で勢いのある火は一直線に大蛇丸へと向かった。
しかしその攻撃は避けられ、火は木へと燃え移った。
これがこの辺り一面に広がる焦げ臭さの原因だ。

次に動いたのは大蛇丸だ。
袖口から大量に出てきた蛇はナルへと降り注いだ。
しかしそれはナルの風遁によって防がれた。
しかもただ防がれただけではなく、蛇を吹き飛ばした風はそのまま周りの木々や炎を巻き込んで大蛇丸へと向かった。
この結果が辺りに無残に散らばる破片達だ。

広範囲からの攻撃にさすがに防ぎきれなかったらしい大蛇丸は、体にいくつかの傷が出来ていた。
対するナルは未だ無傷。
しかもあの禍々しいチャクラの威力は強力の術を使ってもなお衰えていなかった。
それにはさすがに危機感を感じたのか、大蛇丸は大蛇を口寄せした。
始めにナルが倒した物よりもさらに大きいその大蛇は、辺りの炎を木々ごと薙ぎ倒して鎮火させた。
そして勢いよく振り上げた尾は、そのままナル目掛けて振り下ろされる。
しかしそれに焦った様子も無く、ナルはその口端に笑みを乗せた。


「フンッ、そんなペットにばっかり頼ってるからダメなんだしー」


ナルは心底馬鹿にするようにそう口にすると、素早く印を結んだ。
それは、土遁の印・・・
大蛇丸は大蛇ごと割れた地面へと落ち、大地に開いたその大きな口はナルの印によってまた再びその口を閉じた。
それが、この辺りいったいの地形が変わった原因だ。

ま さ に 壊 滅 的

これから数十年はこの辺りに木々が生えることは無いだろうと簡単に予測させるような有様だった・・・





「ん、これで先生の過去の汚点も清算出来たでしょ!」


軽い口調でそう笑みを浮べるナルは、どこからどう見ても無傷だ。
服に焦げ跡一つさえない。
この惨状を生み出した張本人とは思えない出で立ちだ。


「ナーちゃん!やったってばね!!!」

「ん!当然!!!」


嬉しそうに笑うナルトと、満足気に答えるナル。
こいつらにかかれば伝説の三忍も捻り潰されるのか・・・
俺は改めてこの里に骨を埋める決意をする。
何があっても里を抜けるものかと俺は硬く誓った・・・
そして俺は地割れの部分へと視線を向け眉根を寄せる。


「・・・あいつ、死んだのか?」


ある意味平和に生きる上で一番大切な事に気付く切欠をくれた大蛇丸。
奴は死んだのだろうかとナルに問えば、いつの間に取上げていたのか大蛇丸が持っていたはずの地の書を手の平の上で遊ばせながら口を開く。


「まだ生きてるね。生き埋め状態!
意識はないだろうけど、このままって訳にもさすがにいかないかな〜」


ナルは嫌そうに眉根を寄せて足元へと視線を向けた。
だがすぐに巻物をポーチへと入れると、変わりに細長い一枚の紙を取り出した。
何をするつもりかと視線を向けていれば、ナルはその紙を指で挟むとそのまま上へと放り投げた。
しかしその紙はそのままヒラヒラと落ちる事無く、空へ向かって飛んで行き黄色い炎を纏って消えた。


「何だ?」


それ以降何が起きるでもない状況に、何の意味があったのかと首を傾げた。
しかしナルはそんな俺の問いには答えずにスッと視線を移す。
自然とその視線の先を追えば、いつの間に現れたのか二人の暗部の姿があった。


「御用ですか?」

「ん、ここの処理宜しく。
一人埋まってるから

「わかりました。」

「・・・・・・・」


丁寧な対応をする暗部は、その黒い服に白の面がよく映えた。
そして始終無口なもう一人の暗部の背には、大きな刀が一つ目を引く。

・・・・・・どこかで見た事があるような組み合わせだ。

どこか・・・・・具体的に言うなら波の国の橋の上で見たような組み合わせ・・・
確か最後に見た姿は、二尾の背中に放り投げられ連れて行かれるところだったな。
俺はそこまで思い出し、そっと二人から視線を逸らしてそれ以上考える事を放棄した・・・


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