無興味の恋愛事情


正直、恋だとか愛だとか興味ないんだよね











「勿体無い」




パックのジュースを飲んでいた友人は、眉根を寄せてそう一言呟いた。


屋上のフェンスに背を預け、隣でポッキーを口に含んでいた私はそんな友人の言葉に首を傾げる。


今の会話の流れでどうしてそんな言葉が出てきたのか理解が出来なかったのだ。


すると友人は呆れた様子で、おまけに盛大な溜息までついて口を開く。







「マイ・・・・あんたさ、ほんと勿体無いよ?

あの先輩人気あるの分かってる?」



「いやだって私、あの人とまともに話したことないし」





てかまともに顔を見たのも今日の朝が始めてだった。


登校した所で呼び止められた。


話があると校舎脇まで移動して、そこで急に告白された。



告白されて、まず思ったのは目の前のこの人は誰だろうという事。



数秒顔を見つめて、やっと委員会の先輩にこんな顔がいた事を思い出した。


だがこの数秒間の沈黙がいけなかったのだろう。


先輩は私が途惑っているのだと思ったらしく、返事は後でもいいからと言って行ってしまいそうになったのだ。



ちょっと待て、勝手に話を終わらせるんじゃない。



今返事をしなければ、私はまたこの人のために時間を割かなければならなくなる。


そんなの冗談ではない。


私はその場でハッキリと先輩に断りの言葉を口にした。







「・・・・・・それにさ、あれは絶対に断られると思ってないような顔だったよ」



「あーーー、まぁモテるからねマスタング先輩」







あんな人のどこがいいんだろう?


そう素直に疑問を口にすれば、友人からは最早苦笑しか返ってこなかった。


















昼休み終了を告げる予鈴が鳴ったのはそれから数分後の事。




「・・・・・サボる気?」



ビニール袋にパンの袋やジュースのパックを詰め始めた友人は、一向に動こうとしない私に目を留めて口を開いた。


私はん〜〜〜と生返事をしながら両腕を上へと伸ばし、「だって次化学なんだもん」と答えた。


呆れたような視線が返ってきたが、それもすぐにいつもの事かと溜息に変わった。







「ほどほどにしときなよ?」



「分かってる」





友人が早足で校舎の中へと入って行くのを見送ってから、私もゆっくりと立ち上がる。


さすがにここだと万が一にも誰かが来た時に一目で見つかってしまう。


私は給水タンクの裏にでも移動しようと埃を払って足を進めた。






「・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・よぉ」





・・・・・いつから居たんだろう?




給水タンクの裏には、金髪の先客が居た。


少なくとも、昼休み私達が来る前から居たのは確かだろう。


私達が来てからは屋上の出入りは無かった。









「座れば?」




思いもよらなかった先客は、給水タンクの裏で寝転がったまま横を勧めてきた。


断る理由もないので、私もそれに素直に応じる。









「いつから居たの?」



「4限目前の休み時間」



「サボりだー」



「おまえもだろ?」



「私はいいの」



「何だそれ」









先客は可笑しそうに笑い始めた。


だがすぐにゆっくりと上半身を起こすと、まっすぐ目を合わせてきてニヤリと口端を上げる。









「・・・なぁ、俺と付き合ってみねぇか?」



「却下」



「・・・・即答だな」



「当たり前。話聞いてたんでしょ?」



「あ〜〜〜まぁな」









なら断られると分かっていてどうしてそんな事を言ってくるんだろう?


それでなくとも、今の流れからではふざけているととられてもしかたがない。


思わず眉根を寄せる私に、先客は苦笑した。






「つーか聞いてたから?

・・・あいつふったっつー奴に興味があんだよ」





あいつ、とは今朝の先輩の事だろう。


この先客は彼と関係のある人物なのだろうか?


しかし委員会でこの顔を見た記憶は無い・・・・


こんな金髪に金の瞳の持ち主など・・・・







・・・・・・・・・・あぁ










「エドワード・エルリック」



「・・・・・は?」



「エドワード・エルリックでしょ?あなたの名前」



「あっあぁ・・・・・って、今気づいたのか?!」









私の発言に先客、もといエドワード・エルリックは目を見開いた。


そんな彼の反応に、私は不服から眉間に皺を寄せる。





「気付いたも何も知ってるだけ上等じゃない?クラス違うでしょ?」





同じクラスの人でも顔と名前が未だに一致しない者もいるのだ。


私としては知っているだけ上等。


自分を褒めてあげたいほどだ・・・





「テスト満点取るほど頭良いんでしょ?前クラスの子が騒いでた」





私自身は興味無かったけれど、あれだけ騒がれるといやでも耳についてしまう。


その時の事を思い出すとうんざりして、思わず溜息が漏れた。


そんな私の反応にエドワード・エルリックは苦笑する。


そしてまた口端を上げて口を開く。






「なぁ、やっぱり俺と付き合わねぇか?」



「まだ言うか」





今度は呆れから溜息が漏れた。


さっきハッキリと断ったのをもう忘れてしまったのだろうか?



これがテスト満点者?


これが学年1位?


これが金髪に金の瞳の今年一番カッコイイ新入生?



・・・・・クラスメイトには現実ってものを教えてあげた方がいいかもしれない。









「俺じゃダメか?」



「さっき答えた」



「誰とも付き合わねぇの?」



「興味ない」



「好きな奴がいるとか?」




「・・・正直、恋だとか愛だとか興味ないんだよね」









溜息混じりの私の返答に、エドワード・エルリックは意外そうに目を見開いた。


まぁ友人のように「勿体無い」とか「青春を無駄にしてる」とか騒がれるよりはマシかもしれない。


でも、本当に人を好きになるっていう感覚がいまいち分からないのだからしかたがない。



誰かを好きになったり、誰かを愛したりとか・・・・



私にはドラマの中での話しみたいで、リアルを感じない。


つまらないと言われればそれまでだけど・・・










「・・・ならよ、試しにどうだ?」



「は?」





思考の途中での突然の言葉。


訳が分からず、今度は私の方が目を見開いた。


そんな私の様子に構わずに、目の前の男は楽しげに続ける。






「だからよ、試しに俺と付き合ってみるっていうのはどうだ?

・・・・・恋だとか愛だとか、つーか俺に興味湧いてくるかもしんねーだろ?」



「・・・・・・・・・・・ずいぶんと自意識過剰な人間もいたもんだ」



「まぁな。なんせ俺はもうおまえに興味湧いてるから」








聞こえてきた言葉に、思わずマジマジとその金の瞳を見つめてしまった。


だが見て取れるのは、ふざけた様子ではない。


ただ意思の強そうな光だけ・・・








「・・・・・いいよ」








気付いたら肯定の意を返していた。


これには自分でも驚いた。


だが、取り消しがもう出来ないのは目の前の楽しそうな笑顔で察した。







「じゃーこれから宜しくっつーことで」



「・・・退屈したらそこで終了だからね?」






とりあえずそんな言葉を交わして、お互いの携帯の番号やアドレスを交換した。


その間、相手は実に楽しそうで・・・・


でも私も密かに楽しいと感じてしまっているなんて、口には出さない。








携帯で時間を確認して、少し考えてから友人にメールを送る。


内容はたった一言。









件名

 報告



本文

 彼氏できた。

-----END-----









一分も経たない内に詰問のメールが返ってきたのは言うまでもない・・・

























<後書きという名の言い訳>



相互記念の品として「 CROSS 」の管理人様方へ書かせて頂きました♪

迩鈷様、それに鬼那様!

素敵な小説と素敵なイラストありがとうございました("▽"*)

とても釣り合いがとれるとは思えませんが、私なりに必死に書かせて頂いたお返しの品です!

・・・・こんなもんで良ければどうぞ貰ってやって下さいませm(__)m

返品や苦情等24時間年中無休で受け付けておりますよ(;゜∇゜)

改めまして、これからもヨロシクお願い致します♪



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