幸福論理


この日のために先月から少しずつ準備をしていた。


あいつが最近欲しがってる物をそれとなく聞き出したり・・・


当日準備中にあいつが部屋に入って来てバレるなんて事が無いように、予めウィンリィに誘い出してもらうよう頼んだり・・・


当日までにマイが掃除などでプレゼントを見つけたりしないよう隠し場所をわかり難い所にしたり・・・



これまでの失敗を活かして打てる手は全て打っておいた。



我ながら今回は完璧だと、マイが用意してくれた朝食を早々と食い終わるとコーヒーへと口を付ける。


しかし・・・






「母さん!今日は俺、すっげー頑張るからな!!!」



「えっ?」






聞こえてきた息子の声に思わずコーヒーを噴出しそうになった。


まさかのパターンだ・・・


しかし無邪気な息子の言葉は止まらない。






「楽しみにしててよ、母さんの誕」



「だぁ〜〜〜〜〜〜!!!」






グワシッと慌てて口を塞いで担ぎ上げ、そのまま部屋から息子を連れ出す。


むしろそのまま外まで連れ出す。


これでもかと言うほど離れた所でやっと息子を地面へと下ろすと、その肩をガシッと掴んだ。






「お前昨日あれだけ約束しただろ、今日の事は昼まで秘密だってよ!」






俺の言葉に明らかに「あっ」と呟いた後、パッと晒される顔。


数秒の沈黙後、視線を逸らしたままその口から憎たらしい言葉が出て来る。






「・・・・・俺、父さんが準備してる誕生日パーティーの事は何も言ってねーよ」



「明らかに言おうとしてただろーが!」



「いっ言おうとなんてしてねーよ!

父さん、そんなんだから毎回失敗ばっかすんだよ!

人のせいにすんなよな!」






今年5歳になった息子は誰に似たのか口だけは無駄によく回る。


そして明らかに俺よりマイに懐いている。


さらに言えば最近は徐々にだが反抗的にもなってきている気がする。


しかしそれをマイに言うと妙に楽しそうな笑みを浮べて「やっぱり親子なんだねー。何か可愛い!」とかわけのわからない事を言っていた。



まぁ反抗的なだけであって本気で嫌われているとは俺も思っていないが・・・


それでもやはり少なからずイラッともして眉間に皺が寄る。


しかしこのままここで言い合いをしていても仕方がない・・・


ここは俺が一歩引いて話を終わらせ、早く家に戻らないと計画がマジで駄目になる。


俺はそう結論付けると、気持ちを落ち着けるように大きく息を吐き出した。






「わーったよ!俺の勘違いだな!

・・・・でも念のため家に帰ってもマイには何も言うなよ?」



「おうっ!」







自信満々気なその返事が逆に心配になってくる・・・


だが今はそれを言っても仕方がない。


それに結局のところ・・・






(俺の計画が失敗しよーが、毎年マイは笑顔浮かべて『ありがとう、嬉しい!』って言うんだからな・・・)






あの笑顔を見るたびに、こいつだけは失わなくてよかったと本気で思う。


多くのモノを失った旅でもあったが、真っ直ぐな好意と無条件に差し出される手はいつもすぐ傍にあった。


今こうして多くのモノを抱え生きていられるのは、間違いなくマイのおかげだと言える。



リゼンブールでの暮らし、増えた家族、温かい毎日・・・



それらはマイ無しには手に入らなかったものばかりだ。


だからこそ、今日という日を特別な日にしたい。


あいつが、マイが生まれてきたこの日を心から感謝して祝ってやりたい。






「・・・ぜってー嬉し泣きさせてやろーな!」



「俺が準備したプレゼントがあるから大丈夫だって!」






ニッと笑みを浮べて見上げるくるその小さな頭をガシガシと撫で回す。


この少し憎たらしい存在だって、マイと得た大切なモノの一つ。


確かに幼い頃の俺に似たその笑みに、俺も笑みを浮べて答えた。




















〜 おまけ 〜




「すごく楽しそうね」



「えっ?そうかな?」






ウィンリィのその言葉に、思わず顔に手をあてる。


でもそんな事しなくても自分が笑顔を浮かべている事はわかりきっている。


つい、今朝のエド達の焦った様子を思い出し笑ってしまった。


とぼけても意味をなさないだろうと結論付けると、ウィンリィに向かってにへら〜っと笑み浮べた。






「えへへ〜。だって幸せなんだもーん!」






ねー、と同意を求めるように腕に抱いている娘に笑みを向ける。


まだ小さいその存在は、それでも確かにそこにいて温もりをくれる。


私に答えるようにこちらに向かって伸ばされる小さな手。


私の笑みがさらに深まったのはもう仕方がない事だと思う。






「あいつ、マイに一生敵いそうにないわね」



「え〜そんな事ないよー」






ウィンリィの呆れ混じりの言葉に、私は苦笑を返す。


現に今私はそのエドの行動を思ってこんなにも幸せを感じてる。


私の事を考えて、きっといろいろ準備してくれてるエド。


そりゃー『わぁ、ビックリ!こんな事しようとしてくれてたなんて全然気付かなかったよ!』何て風にはならないけど・・・


それでも、エド達が私のためにってだけでもう十分。






「私、間違いなく世界で一番の幸せ者だよ!」



「・・・やっぱり、あいつはマイには一生敵わないわね」






そう言って今度は呆れの中にもどこか嬉しげなウィンリィの様子に気付いて、私も笑みを返した。



























<後書きという名の言い訳>



本当に遅くなってしまいましたが、marin様へお誕生日プレゼントです!

書けない時期と重なってしまい本当に何ヶ月お待たせしたことか・・・

すみません、ごめんなさい_| ̄|○ il||l

しかもかなりの駄文っぷり!!!

リク内容は『エド視点でエドが誕生日を祝おうとしてくれてる話で、隠し事下手なくせにヒロインちゃんに喜んでもらおうと頑張る』というものだったんですが・・・

何これすみません、お待たせしたというのにこんな出来で本当に申し訳ない(_ _|||)

でっでもほんと気持ちだけは込めました!むしろ気持ちのみで出来てます!(えっ?)

こんなもんで良ければどうぞ貰ってやって下さい(;゚∇゚)

あっ!返品や苦情等24時間年中無休で受け付けておりますので・・・

ではでは、これからもこんなサイトと情けない管理人ですがヨロシクお願い致します!!!



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