いざ、行かん、バレンタイン

2008年のバレンタイン夢ですv
お相手はハガレンのエド。
なんか甘く無い上に無駄に長くなってしまった気が・・・
きっ気のせいだと思いたいなぁ(おいおい・・・)





学校からの帰り道


この季節、どんなに頑張っても必ず目に入ってくる文字がある。






バレンタイン




(・・・・・・・・)







バレンタイン、バレンタイン、バレンタイン




(・・・・・・・・・・・・・・・・)









赤く可愛らしいハートの傍には必ずといっていいほど並んでいる言葉。


間近に迫ったイベントをこれでもかというほど持ち上げている。


正直、もう勘弁してほしい・・・・







こんなに目の前に突きつけられなくても、もう嫌というほど意識している。


意識し過ぎて訳の分からない腹立たしさを感じているくらいだ。


いや、訳が分からないというのには少し語弊があったかもしれない。



心当たりがあるにはある。


嫌だ、認めたくないと思いつつも、きっと原因はあれだろうという見当がつく。


去年も、一昨年も感じたこの気持ち。





いつからこんな風になったかは、これまた嫌だ、認めたくないと思いつつもハッキリと覚えている。



あいつを・・・・・


エドワード・エルリックの事を好きだと自覚してしまった時から・・・・
























どうしてあいつなんかを!と思ったことは何度もある。


正確に言うと今も若干思っている。


でも、だからと言って嫌いになれるかと問われれば答えはNOだ。





気付けは姿を目で追っているし、あいつの声は自然とよく耳に届く。


名前には過敏に反応してしまうし、声をかけられれば自分でもバカじゃないかと思うほど嬉しい。


そして・・・・・バレンタイン前後の呼び出しに、チョコを受け取って戻ってくる姿に、・・・・・・・・涙が出るほど悲しくなる。






だから、だから私はバレンタインなんて、嫌なのよ















「だったらマイもチョコあげればいいじゃない」




「っ!ゴホッ、ゴホゴホゴホッ・・・・・」




突然のウィンリィの言葉に、私は激しくむせた。


飲んでいたパックジュースが気管支に入ったのかもしれない。


咳き込んだ結果目に浮かんだ涙を指で拭いながら、なんとか呼吸を整えてウィンリィを睨んで口を開く。







「いっいきなり何言って」



「だからマイもチョコあげればいいじゃない。

去年も一昨年も準備するだけして当日渡せてなかったでしょ・・・」



「なっ?!なんで知って」



「見てれば誰だって分かるわよあんなの・・・」



「だっ誰だって?!」



「あ〜エドは気付いてないでしょうけどね・・・・あいつ、こういう事には鈍いから・・・・・。

だからマイがちゃんと渡さないと気持ち伝わらないわよ?」



「・・・・・・・・・」





ウィンリィの言葉に、開けかけた口を閉じる。


代わりにまだ半分ほど残っているパックジュースのストローに再び口をつけた。


・・・・・ウィンリィに言われなくても分かってる。




去年も一昨年もチョコは準備していた。


でもいざ渡そうとなると体が上手く動かなくなる。


口の中がカラカラに乾いて、言葉も上手く紡げそうになくて・・・・



結局「 エド・・・・・・あんたそんなにチョコ貰って・・・・・・・・・・・・・・・・・・太るわよ? 」とか関係の無い言葉で誤魔化してしまう。





だって怖くてしかたがない。


呼び出される姿は見ても、エドがその子になんて返事をしたのか・・・・


そもそも、エドは好きな子がいるのか・・・・・





それを考えるだけで鞄の中に隠してあるチョコなんてどうでもよくなる。


今の、バカやって騒げる関係のままでいいなんて思ってしまう。





・・・・・・後になってあの時やっぱり渡していれば、なんて後悔するくせに





「・・・・・・・今日さ、帰りに材料買って帰ろ?」



「・・・・・・・・うん」






今年こそは・・・・


ウィンリィの言葉に、私は意を決して頷いた。


























「で、作って持ってくるまでは出来るのよ・・・・」



バレンタイン当日。


鞄の中には昨日作ったチョコがラッピングされて入っている。


まだ誰も来ていない朝早くの教室。


エドが毎年バレンタインの日は校門や下駄箱での待ち伏せをさけるため朝早く登校してホームルームが始まるまでどこかに避難している事は知ってる。





私の事だ。


時間が経てば経つほど決意が揺らいで渡せなくなることは目に見えていた。


だから、朝一で渡すだけ渡して・・・・・






「って、渡すだけじゃダメじゃない・・・」




自分の思考に、思わずガクッと呆れる。


そうだ、渡すだけじゃなくちゃんと自分の気持ちを伝えないと・・・・


でも伝えるってどうやって?


・・・・・・フラれても、私は今までのようにエドと友達のままでいられるの?






「・・・・・・・・」





鞄を掴む手に自然と力が入った。


その時・・・・





「ん?・・・なんだマイじゃねぇ〜か。早いな、どうしたんだよ?」



ガラッとドアの開いた音。


続いて発せられた言葉に、ゆっくりと振り返る。





「・・・・・おはよ、エド」




昨日の夜、何度も頭の中でシュミレーションした。


朝エドが来たら何て言うか。


どうやってチョコを渡すか。


シュミレーションしたという事は覚えているのに、肝心の内容がエドの声を聞いた瞬間頭から飛んでいってしまった。





「あ〜はよ。珍しいな、おまえがんな朝っぱらから学校にいるなんてよ」



いつもは遅刻ギリギリのくせによって笑うエド。


鞄を置いて、今からどこかに避難しに行くのだろう。



教室には二人きり。


廊下からは音もして来ないし、窓から見える校門からは誰も登校して来ない。


絶好のチャンスなのに・・・・・





動いてよ、私の体・・・・・








「・・・どうかしたのか?何か今日のおまえ変じゃね?」



黙り込んだ私を不審に思ったのか、エドが鞄を置いてから近づいてきた。


あぁ、何か言わないと、言わないといけないのに・・・・






「もしかして、誰かにチョコ渡すために早く来たとかじゃね〜だろーな?」



「っ・・・・・」




エドのからかい混じりの言葉にも、思わず反応してしまった。


とてもじゃないが、こんな状況でチョコを渡せるほど私には勇気なんてものはない。


二人きりと言う事は、断られた後気まずい空気の中どうすればいいの?


それを想像するだけで何も言えなくなってしまった。






エドはエドで、私の反応に驚いたようだ。


まさか私がチョコを渡す相手などいるとは思わなかったのだろう。




大きく目を見開いて、次に・・・・・・・眉間に皺を寄せた。









「・・・・・・・・誰だよ?」




「えっ?」









低く発せられた一言。


思わずエドへと真っ直ぐ視線を向ける。






「相手は誰だって聞いてんだよ」



「誰って・・・・」





続く言葉が出てこない。


今の状況も、どうすればいいのかも判断出来ない。





「・・・・・おまえ、好きな奴いたんだな」




何も答えない私から目を逸らして、エドはそう小さく呟いた。


これにも答えられない。


肯定も否定も・・・・


でもエドにはそれで充分だったようだ。






「このクラスの奴か?そいつが来るの待ってるのかよ?

・・・・・なら、俺は邪魔だろ?」




「っ、そんな、ことは・・・・・」





ちゃんとハッキリ言いたい。


誤解されてるならきちんと否定したい。


どうして?


いつもはあんなに喋れるのにっ・・・・







「そんなことは?そんなことはねぇ〜っつーのか?

なら俺がいてもいいのかよ!」




っ・・・・・今言わなければ後悔する。


私は・・・・









「・・・・・・・・・・・いいわよ」





去年や一昨年みたいに後悔したくない。







エドは私の答えに不機嫌そうに眉を寄せる。





「いい、っておまえ・・・・・んなわけ」




「いいの!ちょっとエド!あんたさっきから一人で喋り過ぎなのよ!

少しは人の話も聞きなさいよ!」




「っ・・・・・」





今度はエドが何か言いたそうなのを黙った。


私はそれを確認してから一度深呼吸する。


そして私の言葉を待つエドの目を真っ直ぐ見つめて口を開いた。






「私が待ってたのはあんたよ」





「・・・・・・は?」






いや、何となく今の流れからこういう反応が返ってくるかもしれないとは想像してたけど実際に返されるとムカツク・・・


こっちがどれだけ悩んで後悔してやっと言ったと思ってるんだこいつは!





「だから私が待ってたのはエドワード・エルリック!

あんただって言ってるのっ!

私がチョコを渡したいのはあんたなのよ、分かった!?」




「・・・・・・・・・マジで?」



「・・・大マジ」





・・・・・何とも言えない沈黙が訪れる。


あぁ、胃に悪いなこの空気・・・・


そんな空気を破ったのはエドの一言。







「・・・・・・・・・義理?」




「・・・・・・・・・・・」







この期に及んでまだそんな事を言うかこいつは!!!!!



私は鞄の中からチョコを取り出すと、力いっぱいエドに向かって投げつけながら答える。









「本命よ、このバカ男!!!」








エドが驚きつつもムカツクほど良い運動神経で難なくチョコをキャッチするのが目の端に移った。


そう、目の端に・・・・





「おっおいマイ!!!」





エドの呼び声が聞こえたが、私は構わず教室から飛び出した。




















「って、何で追いかけてくるのよバカ!!!」




バタバタと騒がしい音が廊下に響く。


現在私は教室等があるホームルーム棟から移動教室などのある管理塔に逃げ込み、今は3階を全速力で走っていた。






「てめーが逃げるからだろーが!!!」



後ろから返ってきた声は飛び出した直後よりも近くから聞こえた。


本当にムカツクほど運動神経が良い・・・・





追いかけてくるなんて思ってなかった。


あの空気から逃げ出して、屋上にでも行って一人で泣きたい気分だったのに!






「最低!来ないでよバカ!!!」




「てめ、さっきから人のことをバカバカと!!!」



「うるっさい!いいから止まりなさいよ!!!!!」



「ならてめーが止まれ!!!!!」






こんな状態じゃ埒が明かない・・・


このままだと追いつかれるのは時間の問題だし・・・


その時、私の目に飛び込んできたもの。


私は迷わずそこに逃げ込んだ。






「っ・・・・てめマイ!!!」



エドが足を止める。


入ってきたらどうしようかと思ったが、やはり男子なら抵抗があるようだ。


いや、ないと困るが・・・・






私は女子トイレの個室に立て込むという、今時小学生でもやらないような行動に出ていた。




でもそのおかげで上がった呼吸を整える事が出来たし、不足気味になっていた脳への酸素も補う時間は手に入れた。


まぁ、エドのイライラは半端無いだろうが・・・・





「マイ!おまえ、いい加減出て来い!!!」




女子トイレの外、エドが大声で叫ぶ。


まだ早い時間、しかも管理棟の3階という事もあって人気はまったくない。


だからと言って・・・・・普通叫ぶか?


いや、さっきまで全速力で走っていた私が言える事ではないが・・・・






「エドこそいい加減諦めなさいよ!しつこいわよ!!!」



「てめーも相当諦め悪いよな!!!」



「あんたには言われたくない!!!!!」



「ならとっとと出てきやがれ!!!!!」





なんだこの喧嘩上等な空気は・・・・


さっきチョコを渡した、渡された仲とは思えない。


いや正確に言えばチョコを投げ渡した、キャッチした仲だが・・・・


あぁもう・・・・








「なんでこんな事になるのよぉ・・・・」







思わず目に涙が浮かんでくる。


だって、私のチョコも想いも本命だと思ってもらえなかったなんて・・・・


泣きたくもなる。


そんな私の様子に気付いたのか、エドが外でバツが悪そうに溜息をついたのが分かった。




「・・・なぁ、マイ・・・・ほんと出て来いよ、頼むから」




「・・・・・・・・・・」






エドのこんな懇願するような声を聞いたのは始めてかもしれない。


こうして立て篭もっていても、エドが諦める気配はないし・・・・


いっそさっさとフッてもらった方がラクかもしれない。


私は目に浮かんだ涙をきつく拭ってからドアを開けた。


女子トイレを出ると、そこには私が投げたチョコをちゃんと持っているエドの姿。




「マイ・・・」




名前を呼ばれてビクッと反応する。


何を言われるのか・・・・・


ギュッと目を瞑って、エドの言葉を待つ。



すると・・・








「チョコ、ありがとな」







予想していたよりも随分と柔らかな声に、そして内容に、思わずビックリして顔を上げる。





「えっ?」



「だから、チョコ!礼言ってんだよ!!」





・・・・・・・・・・・・・・え?







「・・・・・そんな事言うためにここまで追いかけてきたの?」




まさか


そんな






「んなわけねぇ〜だろ!!!」




「あっ、だよね。エドがそんな律儀な人間なわけないよね。あ〜ビックリした」





思わず胸を撫で下ろす。


そんな私にエドは大きな溜息をつく。






「マイ、おまえ・・・・本当に俺の事好きなのかよ?」





エドの呆れたような、でもどこか確認するような声に私は数秒の沈黙の後・・・・








「・・・・・好きだよ。ずっと前から好きだった」





やっときちんと言うことが出来た。


あぁ、もうこの時点で涙が出そう。


思わず俯いてしまう。





すると・・・・







「・・・・俺もマイのこと好きだぜ」




そっと片手で抱きしめられて、耳元でそんな事を言われて・・・・


カァッと耳が瞬時に熱くなったのが分かった。


いや耳といわず顔も体も・・・






「なっ、ななな・・・」




「これで今年はやっとチョコが断れるぜ。

・・・・『わりぃ、俺付き合ってる奴いるから』ってな」





ニッと間近で笑顔を見せられ、体が固まる。


ヤバイ、この人反則だ・・・・






先ほどよりもさらに熱くなった顔に、もう片手にしっかりと握られているチョコが溶けてしまわないか・・・・・


そんな心配とも言えない心配ばかりをしていた。






















「ねぇ、いつまでこうしてるつもり?」



「あ?あ〜〜〜〜〜今日はこのままサボるか!」



「イヤ!こんな日にあんたとサボったりなんかしたらどんな噂が立つか・・・」



「いや、それが狙いだったり?」



「っ!!!」



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