「時に妹よ。目先の幸福と遠い将来の幸福、どちらがより大事なことだと思うかい?」
「それは存外難しい質問ですわ兄上。一見深く考えもせずに全て知ったような顔をして将来の幸福を取りたくなるけれど、果たしてそれが本当に正しい選択なのかしら。」
「そう。さすが我が妹頭が切れる。遠い将来を取ったところで今苦しい思いをする事に変わりはない。そして将来が幸福である保障も無い。それなのにそんな不確かなものに望みをかけて、今が壊れでもしたらどうする?瞬間、将来もなにも無くなるのだよ。」
「さすが我が妹と言うのは止めて下さいまし。そんな表現は逆に兄上が頭の弱い人のように思わせてしまうわ。」
「そうかい?しかし僕が客観的に見ても優れた部類の人間である事に変わりは無いし、君だって正真正銘の実の妹だ。何も間違ったところなど無い筈だが、そうか、君がそう言うのなら今後控えよう。」
「それで兄上は、目先の幸福と遠い将来の幸福、兄上ならば、どちらを取るのかしら。」
「それは愚問というものだよ。」
「そうね。今までの兄上の行動からしてそれは一目瞭然だったわ。」
「そう。僕は常に苦汁を舐める思いをしながらも、将来の幸福の為に手を尽くしてきた。そしてもう直ぐなんだ。全てが清算される日が、僕の選んできた事が正しかったと証明される日が。」
「きっと兄上ならば報われるわ。兄上が間違っていた事なんて一度も無いもの。」


言い終えてから私は焦って頭を巡らせた。兄が間違っていた事など、無かった筈だと。本当に?ただの一度も?
んでさ、と砕けた声で呼び掛けられ、それを期にさっきまでの下らないごっこ遊びは終わったのだと悟る。

「お前俺の分のケーキ食うのかって訊いてんの。食うなら食うでさっさと食えよ。」
その変わりお前の時の誕生日ケーキは半分俺のもんになるけど、と兄は人の悪い笑みを浮かべて私の方を見ている。

ホイップに塗れたいちご、来年の誕生日、兄の笑顔、ごくりと鳴る喉、それら全てが脳内を飛び交う。頭を抱える。単純明快な事なのだ。なのにそれが選べない。正解を指し示されているのに、そっちを選べない。何故?分からない。その理由を教えてよ。何も間違えた事の無い、すべて正しいものから出来ているあなたなら、その答えを。
ストライプ理論


 
2012/03/06

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