なめらかなシャツを纏う身体を抱き締めた。弛緩した上半身を引き寄せるようにして、その柔い頬に口づける。あなたは今日も、いつもと同じ夢を見ているの。

部屋に帰って、ベッドに転がるシルエットを認めて私は何日か振りに安堵の溜め息を吐いたのだった。どこに行っていてもいい、ただ最後にここに帰って来てくれるのなら。そう言ったのは私自身だ。
柔らかい肌に艶っぽい髪、少し幼い瞳もそれに反して案外現実主義な内面も、すべてが好きだと思う。誰にも渡したくはないし出来れば見せたくもないくらいだ。でもそんな事を言ったらこの子が真っ青になるところが容易に想像出来るので伝えた事は無い。伝えたいとも思わない。

がらがらと、ばらばらと、雨が鉄を叩く音が響いている。この子の身体が冷えてしまわないようにと、強く抱き締めた。雨の音に混じって薄らと寝息が聞こえる。

願ってしまう。届かない事を、伝わらない事を。
夢なんて見ないで。そんなのは悲しくなるだけだ。
ヴェルヴェット


 
2012/03/02

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