ねえ、いい加減に答えてよ、お願いだから、どう思っているの君は、僕の事。
さっきから煩く喚き散らしている。なんたってそんなに答えを求める。答えを出してしまうなんてそんな、美しくないじゃないか。時計が刻んでいく、その瞬間が近付いている。

「好きか、嫌いか」
そう言って両の手を開いて見せてくる。どちらかを選べという事だろう。馬鹿馬鹿しくて溜め息が出る。
大嫌いだよ、お前の事なんて。そんなのお前だって分かっているだろう。嫉妬深く執念深く狂ったように私だけを見つめるお前を見ているだけで吐きそうになる。
だけど、だから、好きなんだ。愛していると言ってもいい。濁った泥水のような透き通った水晶のような、汚くて美しいお前の事が。
どちらにも該当する二択を迫られても困ると言うものだ。開かれたどちらの手にも応える事はせず、ただそうっと、くちづける。

それをどんな意味で取ったのか、一瞬だけ驚いたように目を見開いたものの次には物凄い勢いと力で抱き締めて来た。ぐらりと身体が傾いでしたたか頭を床に打ち付ける。痛い。
噛み付くように喰らうように唇を重ねてくる。さながら、こいつの内に眠っていた化物が急に表面化したように。どろどろの愛情やら劣情が一気に流れ込んで来る。

酸素も言葉も奪われて、為す術も無い。時計の針が定刻を示す。永遠の終わりを報せる。これは誰への、何への罰だろうか。両極を求め過ぎた愚かな者とは、一体どちらだったのだろうか。

渾身の力で以て体制を逆転し、馬乗りになる。離れた唇からは汚い滴が伝っている。先程とは打って変わって酷く弱々しい瞳でこちらを見上げてくるそいつに告げるのだ。知ってしまえばもう戻れない事実を。
「好きだよ。」
いま認識するのさ。
僕は死んでいる


 
2011/09/05

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