捧げ物 | ナノ


花火 2
「わ、あれすっごい欲しい!」
「あのクマかわいいっ!」
うさぎと美奈子がある屋台の前で立ち止まる。

「ん?おっ!射的かぁ。なぁ、せっかくだし勝負しようぜ!」
「えーっ…やだよ。めんどくさい」
「俺はいいですよ」
「射的ってあんまりやったことないけど、おもしろそうですね」
「私は構いませんよ。どんなものか興味があります」
ゾロゾロと射的の屋台に近付く。

射的と言えども、最近は景品がそこそこ凝っているようで、お決まりのキャラメルやお菓子のシガレットもあるが、それ以外にアロマキャンドルや入浴剤や小さなぬいぐるみといった女性が喜びそうな物も並んでいる。

「んじゃ決まりな!ルールはどうする?やっぱデカさかな?」
「えー…もし万が一、仮に落とせた場合、荷物になるから数の方がいいんじゃない?」
大きさと言う星野と、数と言う夜天。
「うーん…」
雄一郎が唸るその隣で浅沼がポンと手を叩く。
「女性の皆さんが欲しい物を落とせばオッケーってことにするのはどうですか?」
「それいいですね。そうしましょう」
大気がそれに賛同する。

「まぁ、それならいいか」
「僕も」
と、星野と夜天もそのルールで納得した。
雄一郎もうんうんと頷くと店員と思われる男性に声をかける。

「すみません。五人分おねがいします!」
「あいよ!一人600円ね!」
「はい。あ、ここは最年長の俺が持ちます」
雄一郎は3000円を渡す。
「あいよ!弾は一人五発ずつだよ。
おっ!兄ちゃん達可愛い彼女のために頑張れよ!
ちなみにうちの店で一番デカイのは、ど真ん中にあるクマだよ!
落とせたらヒーロー間違いなしだ!」
そう言い、男性はコルク弾を五人分用意すると、五丁ある鉄砲の横に置いていく。

「うーっし!やってやるぜっ!」
「僕もやるからには負けないよ」
「レイさんの為に頑張ります!」
「よしっ!(まこと先輩にいいところ見せなきゃ)」
「亜美、ちゃんと見ててくださいね?」

女性がそれぞれに標的に選ぶ。

うさぎはお菓子の詰め合わせボックス。
「おだんご…ここでも食い物かよ」

美奈子は一番大きなクマ。
「美奈…さっきの僕の話、一切聞いてなかったね?」

レイはアロマキャンドル。
「レイさん…俺…がんばります」

まことは入浴剤。
「はい!わかりました!(あれならなんとかなるかも…)」

亜美は手のひらサイズのネコのぬいぐるみ。
「了解しました。任せてください」

五人は弾を詰め、それぞれの標的を目掛けて構える──










「星野のへたっぴ…」
うさぎが頬をプクッとふくらませながら言う。
「くそっ…思ってたより重量があったんだよ…悪かったよ」
星野が謝るが、うさぎの機嫌はなおりそうにない。
食べ物の恨みは恐ろしい…

「よしっ!じゃあこうしよう!今日のお前の屋台代、全部俺が出すよ!な?だから機嫌なおしてくれよ?」
そう星野が言うと、うさぎがパァッと目を輝かせる。
「ホントに!」
「おうっ!愛するおだんごのためだっ!男に二言はないぜ!」
「やったぁ〜♪ありがと星野大好きっ!」
一気に機嫌のなおったうさぎが星野に抱きつく。



「うん。無理だって分かってたよ」
「えぇっ!あれが欲しかったのにぃ〜っ」
夜天が冷静に言うと、美奈子が駄々をこねる。
「無茶言わないでよ。あんなの落とせるわけないでしょ?」
「そんなのやってみなくちゃわからないじゃない!」
「やってみてダメだったでしょ?」
「むぅっ…」
むくれる美奈子に夜天は“そんな事で拗ねるところも可愛い”と思いつつも、それを表には出さず仕方ないとばかりにため息をつく。
「今度ゲーセンのクレーンゲームで美奈が欲しいの取ってあげるからさ」
「……絶対?」
「僕が美奈に嘘ついた事あった?」
「…ない」
「でしょ?」
「うん」
夜天はそっと美奈子の肩を抱く。
「だから笑ってよ?」
「えっ?」
「僕は美奈には笑顔でいてほしいんだから」
「夜天君///」



「キレイ」
「はい。キレイですね」
レイは雄一郎が見事に撃ち倒したアロマキャンドルを見つめる。
欲しいものを言ってみたものの、取れるとは思っていなかったレイはすごく喜んでいた。
「ありがと雄一郎///」
「いえっ!レイさんのためですから!」
そう言って、照れたように笑う雄一郎にレイは微笑む。
「大切にするからね」
「はいっ!」
雄一郎はすごく嬉しそうに笑った。



「へぇ、バラの香りかぁ」
「まこと先輩にピッタリですね」
「えっ///」
「?」
「そ、そんなバラなんて、あたしにはそんな高貴な花は勿体ないよ」
「そんな事ないです。ピッタリです」
そう言って無邪気に笑う浅沼にまことは敵わないなぁと思う。
「あ、ありが...とう///」
「喜んでもらえて良かったです」
そう言って浅沼はまことの手をギュッと握ると、まこともそっと彼の手を握り返す。



「可愛いです」
手のひらにのせたぬいぐるみを見つめ、亜美は嬉しそうに微笑む。
「亜美」
大気が呼ぶと、彼女は上目遣いで大気を見つめる。

──カシャッ

「っ!?」
「はい。上手く撮れました」
携帯を取り出し、素早く亜美を撮影した大気は満足そうに言う。

「大気さん?」
突然の事に驚いた亜美が目をぱちくりさせている。
「せっかく可愛いのに撮っておかないのは勿体ないでしょう?」
そう言って笑うと、亜美は真っ赤になる。
「〜っ/// ダメですっ!消して下さい」
慌てて言う亜美に大気はクスクス笑う。
「駄目ですよ。待ち受けにします」
「絶対ダメですっ」
亜美は大気の携帯を略奪しようと手を伸ばすが、180cmの大気と158cmの亜美。
22cmの身長差とリーチの差ではどうやっても敵うはずもない。
必死に手を伸ばす亜美が可愛くて大気はついからかってしまう。
「ほら、諦めてください」
そう言って大気は亜美を抱き締める。
「きゃっ///」
亜美は小さく悲鳴をあげて真っ赤になる。
「はい。亜美の敗けです」
「〜っ///」

そんなこんなで、それぞれの
イチャイチャタイムが終わった五組のカップル。



「花火の時間は八時からからですから、今から一時間ほど別行動にしましょう。
七時四十分過ぎに例の場所に集合しましょう」
大気がそう言った事により、五組はそれぞれに別行動をとることにする。

ちなみに“例の場所”とは、雄一郎が知っているという花火がよく見える穴場のことである。



「よーしっ!いっぱい食べよ〜っと☆
まずはたこ焼きからいくわよ星野っ!」
「ったく、ほどほどにしとけよ。そんじゃ後でな!」
「あとでね〜♪」
言いながら手を繋いで去っていくうさぎと星野。

「あたしは玉子せんべいの玉子三つのせを狙うわ!」
「はいはい。分かったから行くよ。じゃあ後でね」
「じゃあねん♪」
何やら賑やかに言いながら、美奈子は夜天の腕に絡みつき、二人も去っていく。

「俺達も行きましょうレイさん!」
「もうっ!そんなに慌てなくても屋台は逃げないわよ」
急かす雄一郎を叱りながらも、嬉しそうなレイも「じゃあまた後でね」と、言うと雄一郎に肩を抱かれて去っていく。

みんなに手を振りながら残った四人は顔を見合わせる。
「お二人はどの屋台に行くんですか?」
大気が聞くと、浅沼とまことは少し考え込むと「林檎飴」と見事にハモって答える。

「亜美は何か食べたい物はありませんか?」
「えっと…焼きとうもろこしが食べたいです」
「わかりました。じゃあ行きましょう」
そう言うと大気は亜美に左手を差し出す。
亜美は恥ずかしそうに笑うと、右手をそっと彼の手に触れさせる。

「じゃあ、あたし達も行こうか」
「あ、はい!それじゃあ大気さん、水野さんまた後で」
「はい。また後ほど」

まことと亜美は、彼と繋いでいない方の手をパタパタと振りあい別々の方向に歩き出す。



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