獣が王国を席捲した日
切迫の覇者
きみと友情を刻んだ日
本当の誠を示すこととは
聖なる支配者
孤独を食らいつくした王様
あなたをまだ見ぬ怪物に変えてしまった

「拳と拳の約束だ」
錆びれた嘘をやさしく撫でて
アメージング・ナイト
不揃いな手なんて、まるで俺たちみたいだろ
不格好な手がなにより格好いい
不甲斐ないわたしたちみたい
「なんてそれは不躾な結末なの」

おぞましい怪物に恋を仕込む
言葉が溶け出した夜道
草臥れた夢想を抱いたままいけ

情熱死
うつくしく逝くために生きること
色彩をとかした夜を追い掛けた
寄る辺のない肌にキスを馴染ませて
真新しい嗚咽
遠吠えひとつで君につながる
轍を踏みしめて獣は人を知った

魔の人間
正なる人
いたみを食べて大きくなった君へ
こわがらないで言えばよかったね
知らないふりせず伝えればよかったね
始まらないシンフォニー
錆びれたエポーレットに接吻を
獣が愛を語った落日に

重なった吐息の行方
オレンジ色のまたたき
抱きしめたら終わってしまう気がした
刹那一輪
雷鳴にきえたサヨナラ

あの稲光を見たらぼくを思い出して、泣いて。それだけ君の心にぼくの居場所をくれたなら、ぼくは誰も憎まずきれいにこの世界から消えることができると思うんだ。

雨が止んだらそっといくよ。独りでいくよ。もう君が悩んで泣いて悲しまなくたっていい。きみが悼んでくれる日々になら、ぼくはこの身をすべて捧げてしまっても構わないんだ。

だからきれいな幕引きを微笑んで見送ってくれるかい?最期に見るものが君の顔だなんて、ぼくは今とても倖せなんだ。

ぼくの心に住んでくれて、ありがとう。



とてもあつい夜にあなたが死んだこと
月が不快げに見下ろした
この偽善がなにを祈っていたか、知っているか
なにもかも消えた新月に言葉はいらない

折を見て檻を見ず
いのちの溢れた街
膝小僧にダイイングメッセージ
永遠を彩るきれいな幕引きを
この時があの時になってしまう前に
ゆるやかな死を飲み干して

その手が象る明日を憎んで昨日を見失って
あなたがくれたほんとうをわすれていた


おぞましい怪物を友と呼んだ君へ
すべてが終わった物語であなたと出会えたならば
やさしくない軌跡に涙した

手を振ったあなたが美しかったこと、嘘みたいな奇跡にあなたがいること。あなたが傍にいれば、もう雷雨をこわがることもない。

恰好悪くてもいい、不揃いな二人の手を重ねて、わたしたちだけの軌跡を刻んでいこう。あなたの居場所がわたしの傍でありますように。


落日に一人と一つの影が重なった。


お持ち帰り

*席捲(せっけん):片端から領土を攻め取ること/広い地域にわたって次々と猛威を振るうこと
*エポーレット(Epaulet):肩飾り/肩当て/肩章(将校の)のこと



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