水から炎へ・・・

 

 眼帯を外したその目には眼球は無く、代わりに青白い光が満ちていた。

 
 「我が右目は、全ての闇を貫く主の視線なり!今宵御客様に御見せいたしまするは我が主の奇跡の一端!心ゆくまで御堪能下さいませ。」
 

 丁寧に御辞儀をする彼女の右目には、色を濃くした光が溢れる。
 

 「後は頼むよ?」

 
 「承った・・・」

 
 只一言を交わした後、走り去る相棒の背を確認し、彼女は右目の光を解き放った。

 数千万を超える混合軍は、彼女から解き放たれた蒼い光の矢に貫かれ地に堕ちていく。

 
 「御満足戴けましたか?その悲鳴が何よりの幸せに御座います。これ・・にて・・・・わ・・たしぃ・・の芸は・・・終・・・幕に御・・・・座いま・・・すっ・・・」
 

 彼女は、小刻みに震える体を無理やり動かし最後の御辞儀をしてそのまま息絶えた。

 死臭と腐臭で満たされた洞窟の中に機銃の音が響き渡る。

 
 「オラオラオラァ〜!」

 
 喜々とした笑顔で両手の機銃を撃ち続けるシスター。

 彼女の放つ弾丸は、目前の異形達に吸い込まれる様に命中していく。

 
 「う〜わっ!オッカネェなぁ」

 
 彼女の死角から襲い掛かる異形達を軽々とあしらい蹴散らしながらナルシスト男は軽口を叩く。
 

 「御客を捌いたら次はテメェにフルコースでぶち込んでやるよっ!」

 
 ナルの軽口を塞いだ直後、彼女の笑顔が鋭い狩人の目に変わる。
 

 「下賎な人間如きが何時までこの聖域を汚す気です?そろそろ家畜らしく神の食前に並べて差し上げましょう」

 
 軽快に洞窟を進んでいた二人の眼前に現れたのは、人々が天使と崇めている翼を持つゼウスの召使いの一人ガブリエルだった。
 

 「テメェっ!その面は忘れねぇ、何が天使だ!吸血鬼の親玉がっ!!」
 

 彼女は弾の切れた機銃を投げ捨て腰の拳銃を引き抜きガブリエルにありったけの弾丸を撃ち込んだ。
 

 「下級なグールやウルフ共なら効くでしょうが、この私にこんな物は効きませんよっ!!!」
 

 蔑み呆れた顔で呟いていたガブリエルの顔面に特大の砲弾が轟音と共にめり込んだ。
 

 「見下してんじゃねーよタコっ!!」
 

 何処から出したのか、彼女は両脇に大砲を抱えていた。



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