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「あら、そう。じゃあ、出来るようになったら教えてちょうだい」
乱菊はにっこりと笑い宣言した。
「あ、うん…」
「それまで、顔見せんじゃないわよ」
一転、低く怒気の篭った声で返し、立ち上がり死覇装をさっさと身につけ出ていく。
「ら、乱菊っ!待ってぇな!」
ギンも慌てて死覇装を着て追いかけようとしたが、今度は拳で先ほど叩かれた反対の頬を殴られた。
「顔見せんじゃないって言ったでしょう」
「はい」
ギンは素直に従うしかなく、肩を落とし寂しそうに部屋に戻る事になった。
怒った乱菊は、やちるがいる隊首室へと乗り込んできた。
「あれ、らんらん早かったね」
「…酒ないの?」
「あるけどさ。ギンちゃんは?」
「男として役立たずには用ないの」
乱菊の辛辣な言葉に、室内にいた剣八が吹きだし爆笑する。
その場には、八千代と一秋も居合わせており(一角と弓親は自室へ戻っていた)、八千代が目を丸くし、一秋は天井を仰ぎ思わずギンに同情してしまった。
「はははっ!あいつには一番の仕置きになっただろうよ!」
剣八のツボのはまったらしくいつまで経っても笑いは治まらない。
「オメーらここで呑んでろ。俺はあいつの所で呑んでくる」
剣八は笑いながら一升瓶を手にし、ギンの部屋へと向かった。
やちるは素直に酒を出して、乱菊のやけ酒に付き合うことにし、八千代と一秋も巻き込まれた。
無論、乱菊には解っていた。
過酷な状況下で、あれだけやせ細っていれば性欲などなくなることぐらい。
黙って撫でさせているだけでも良かったのだが、あまりにも済まなそうな表情で謝られて逆に発破掛けたくなったのだ。
あれだけ言えば、きっと真面目に食事をとって鍛えるだろう。そうすれば直ぐに性欲など戻ってくるはずだ。
「ふん、良い薬だわ」
これくらいの仕返しくらい許されるだろうと、乱菊は楽しげに呟き、酒を飲みほしたのでした。
おしまい
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