◇盛夏


「夏って暑い〜」
 リリネットがうだるような暑さに辟易した様子で、風の通る縁側で寝転がっている。
「……そうだな…」
 遥か昔に、人間だった頃には恐らく体感していたはずなのだが、今更ながらに感じる暑さというものは結構堪える様だ。

 そういう二人は、暑さがどうやら苦手な様で、涼しげな甚平姿だ。腕や足が多少なりとむき出しになり風が通る分良く感じられるようだ。
 無論、京楽家の小さな子供達もしっかり甚平姿だ。

「ねえ、死覇装って暑くないの?」
 襟元も乱さない七緒の姿を見上げ、リリネットが首を傾げる。
「あ、夏服なのよ。一重だし、ほら薄手なのだから風も通るし、意外に涼しいのよ」
「ホントだ〜、透けてるね…そうなると、おっさんがむさくるしくて暑苦しく見える…」
「もっと言ってやって頂戴」
 笠を被り、隊長羽織だけならばともかく、更に薄絹を肩から掛けているのだ。見目が大男で毛深いだけに、暑苦しいことこの上ない。
「スタークの涼しげなの見習えー」
「……そうね、確かに涼しげね」
「七緒ちゃん!!夫以外の男を褒めるなんてっ!!ひどい!」
「暑苦しくて、むさくるしいのは事実でしょうに」
「酷いっ!酷いよ!!もっと暑苦しい人いるのに!!」
 泣き真似をしつつも何とか矛先を反らそうとする春水の言葉に、一同首を傾げた。

「え?誰?おっさんより暑苦しそうなのって…」
「あら…どなたかいらしたかしら?」
「毛むくじゃらで、大変そうなのいるじゃない。狛村君」
「ああ」
「確かに…」
「……大変そうだ」
 春水の挙げた名に一同深く納得した。

 確かに獣の毛を纏う彼はかなり暑そうだし、実際に暑くて大変らしい。
 あまりに暑さが酷い時は、氷雪系の斬魄刀を持つ誰かにお世話になることすらあるそうだ。

 一同、贅沢を言っていられないと思ってしまったのでした。


20110803〜0901


[*前] | [次#]

[表紙へ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -