◇短冊


「短冊に願い事書きませんか?」

 スーパーで食料品を買った時、ふいに声を掛けられた。
 セーラー服姿なので、女子学生ならこういうお遊びに興味があるだろうと、店員に勘違いされたのだろう。
 いつもなら、無視をするところであるが、リサは立ち止り荷物を拳西へと押し付けた。
「おいっ!」
 元々野菜など重量あるものを持っていた上に、更に押し付けられた形になり、思わず文句を言おうと声を荒げた。

 だが、用意された長い机に屈むようにして筆ペンを持ち真剣な表情をした彼女に、何も言えなくなってしまった。

【七緒が幸せでありますように】
 出来上がった一文を覗き見て、拳西の口元に苦笑いが浮かぶ。

「いいのかよ、そんな願いで」
「あたしが側におれんから、願うくらいええやん」
 用意されていた箱に短冊を入れて、さっさと先を歩く。
「あ、こら、てめー荷物持ちやがれっ!」
 ちゃっかり拳西に預けたまま行こうとするリサを叱りながら追いかける。





「離れ離れになった、娘とか?」
「あ、学生だから、引き離されて養子に出されたとか?」
「あの男が、今の彼氏なのかな?」
「じゃあ、子供は彼の子じゃないのかな?」

 セーラー服の眼鏡娘に、ピアスをつけた強面でがっしりとした男の組み合わせ、更には願いごとの内容から、その店の店員の間で様々な憶測が飛び交っていたのでした。



20110705〜0803

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