◇浮かれ気分


 おやつを口に放り込んだ瞬間に奇妙な光景を目撃したリリネットは、おやつを飲み下しスタークの袖を引っ張った。
「どうした、リリネット」
「あれ、みて」
 リリネットの指さす方向には、スタークも目を疑うような光景があった。

「…なんだありゃ…」
「な?変だろ?」
「ああ…変だな…」
 だが、二人が変だと言いきった光景は他の八番隊の面々には日常の一つとして映っているようで、誰も咎める気配がない。

 これはひょっとして子供達でも知っていることなのだろうかと、一緒におやつを食べていた小さな子供達に問い掛けた。

「なあ、あれ。おまえらの親父さん、変なことしてるけど」
「ああ…もうすぐかかさまのたんじょうびだから」
「そのあと、ととさまのたんじょうびもあるんだよ」
「なのかとじゅういちにちなの」
 三つ子の口から語られた内容に二人は顔を見合わせた。

「でも、あれ、浮かれ過ぎじゃない?」
「ん!ととさまちょーうかれる!」
「かかさまもあんまりおこらないからねー」
「そうそう。だからハメをはずすんだってさ」
 リリネットの指摘に頷きつつも、三つ子達は既にこの年にして諦めというか悟りきった様子だ。その様子に、これは遥か昔からなのだろうと思われた。
 それならば、隊員たちも咎めることなく平然と受け止めていておかしくない事だ。

「ね、ふたりのたんじょうびは?」
「…俺たちは…」
 元々一人で、二人がそれぞれの名を名乗った日が誕生日と言えるかもしれない。
「……二人とも同じ日だ」
「あたしたちも、三人いっしょだよ!三つ子だから!」
「スタークとリリネットは双子じゃないのに、いっしょなの?すごいね!!」
「ほんとだ!いっしょなんてすっごいね!」
 三つ子達は、スタークとリリネットが生まれた事情など知らない。二人は似ても似つかないし、年も違うように見える。恋人同士だと思っているから、尚更だ。
 スタークもリリネットも改めて自分たちの生まれた境遇が特殊であったことを思った。

「…そうだな」
「いつだったの?こんどはいっしょにたんじょう日パーティしようよ!」
「どんなことするんだ?」
 夏七の誘いに子供達が楽しみにしているのならば、何か楽しい事があるのだろうと思いリリネットが尋ねる。
「あのね、おっきいケーキを食べたり、プレゼントもらうんだよ」
「へえ!そんなことするんだ」
 ここで初めて口にしたケーキはリリネットのお気に入りのお菓子の一つだ。そんなケーキが大きいのが食べられるのだと言う。その上何か貰えるのだ。かなり楽しそうなお祝いだ。

 だがしかし、春水が楽しむにしては何か違うと思われる。
「……京楽隊長が、子供のお祝いで楽しむか?あれは何かたくらんでるぞ」
「…だよねぇ…」

 子供達の様子を見ながらも何が起きるのかと、二人は当日を楽しもうと思ったのでした。

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