◇耳と尻尾・2
その夜風呂上がりに、リリネットは七緒から薬を嬉々として受け取り、スタークがいる自室へと向かった。
既に布団に横になり、眠り初めているスタークの腹の上に遠慮なしに乗っかる。
「ぐえっ…リリネット…おまえ…」
腹を圧迫され目を覚まし苛立ちを隠すことなく、眠たげな眼差しで睨む。
「はい、あーん」
「ああ?んぐ…何だよ…」
顎を掴んで口を開き無理やり何かを飲ませる。
「ん?狼の耳と尻尾が生える薬だって!」
見ればリリネットの頭には耳が生えているし、尻尾も生えていて左右に振っている。スタークにも早く生えないかとじっと見ているのだ。
「うう…」
やがてスタークの身体に異変が起きた。
狼の耳が生え、尻尾も生えてくる。良く見れば牙もある。
色は灰色。リリネットは白が強いが、まさしく帰刃の時のスタークの毛皮の色だった。
「……やれやれ…」
「狛村のおっさんも格好良いけど。やっぱスタークが一番似合ってる」
「…なんだよ、それだけの為か?」
リリネットの方は容姿の所為もあるのだろう、狼と言うよりも犬に見えてしまう。これは狛村家の三つ子達もそうで、耳は一応狼のものであるのだが、どちらかというと犬に見えがちだ。まだ体が小さいからだろう。
群れのリーダーとも言うべき風格はスタークにこそあると、リリネットは思うのだ。
狼は一夫一妻制で、群れを大切にする。
「……なあ、リリネットこれ…淫剤も入ってないか…?」
「へ?そんなこと聞いてないけど……あー!それか、おっさんが奥さん襲ってたの!!」
「ほう…」
スタークの瞳が剣呑に光る。
「あれ?スターク?」
「…話は後でじっくり聞かせてもらおうか…」
だが、今はそれより先に愛し合う事が先決だ。
「いくらでも」
リリネットが挑むように瞳を輝かせ、スタークの背中に手を回す。
「狼になっていーぞ」
「……困った奴だな」
その夜は、二人の声が明け方まで止むことはなかったのでした。
20110601〜0705
ふっと、狼の生態を調べてみましたら、いやもう何とぴったりなの。この二人に。
狼は一夫一妻制。
群れを大切にするってのは良く知られています。
ただですね。子供を産むのは群れのリーダーのオスとメスなんだそうです。
じゃあ、群れの狼は何をしているのか。
まだ、未成熟な者は護られてたり、リーダーの子供の子守をしたり、狩りに行ったり。
特に、子守の文字を見た瞬間、うわ、そのまんまじゃん!!と。
if…の設定にあながち間違いはなかったのかと、思わず自画自賛(笑)
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