「…ふああ…んー…眠くなってきた」
 欠伸をし目を擦り盃を置く。それもそうだ。徹夜明けで眠りに入り始めた所を叩き起こされ、酒を飲んでは睡魔も襲ってくるだろう。
「寝る…後は皆さんでどうぞ」
「おやすみ」
 春水が声を掛けると、一秋は頷き手を挙げて出ていった。

「……自覚と言えば…更木隊長」
「ああ?何だよ」
 いい加減に誰かに何かを言われるまでもなく美味い酒がのみたいと思っているだけに、不機嫌そうにギンの言葉に応じる。
「あのう…もうちょこっとだけでええですから…人前でのえっちをですね…」
「あ、市丸君それは言っても無駄」
 本人達が否定する前に春水が手と首を振る。
「うう…あきませんかぁ?」
「やだー!」
 やちるが両手を突き上げて頬を膨らませて抗議する。
「剣ちゃんと好きなときに好きなだけえっちするんだから!!」
「ああ…今はその天真爛漫さがうらめしいわぁ…」
 ギンががくりと肩を落とす。昔の自分なら笑って済ませられるのだが、今は厳しいのだ。
「おめーもすりゃいいだろ」
「更木君無茶言っちゃいけないよ。できるのは君らだけだって…」
 さすがに春水も苦笑いでギンの助っ人にまわる。もっとも春水自身はいつでもと思っているのだが、妻の七緒が許すわけがない。

「そうか?」
 剣八は見せつけようと言わんばかりにやちるを引き寄せ胸を掴む。
「ああん、剣ちゃんったらぁ」
「あああ…羨ましい…」
 ギンが恨めしげに見、春水も大きな溜息を吐きだす。
「…ボクがやったら七緒ちゃんに殺されるよ…。やれやれ、他人の事をみても楽しくないから、さっさと隊舎に帰って楽しんでちょうだい」
 手を振り追い払う仕草をしてみせる。
「そうするか」
「うん!そうするー!」
 剣八はやちるを抱き上げると、十一番隊へと帰って行った。
「さて、そろそろ奥さんたちの所へ戻ろうか?」
「へえ、そうですなぁ」
 男二人で飲んでも楽しくはない、二人は軽く後片付けをして七緒や乱菊の元へと戻った。

「おや、八千代ちゃんは?」
「気分が悪いって。そちらこそ一秋さんは?」
「酒が入ったら眠くなったようだよ」
「まあ」
「乱菊は大丈夫なん?」
 乱菊の隣に座りながら様子を窺う。
「まあ、あの子程、今のところは酷くないから」
「そっかぁ…」
「何よ」
「……まだ、お腹は大きくならへんの?」
 じっと腹部を見つめながらの質問に、ギンが子供を待ち望んでいる事が伝わってくる。
「七緒、いつくらいからなのかしら?」
 乱菊も詳しくは解らず経験者の七緒へと尋ねた。
「子供の成長の度合いにも寄りますけれど、平均して五カ月くらいからかしら?」
「そうなのね…」
 自分が妊娠するとは思わず、まだ他人事のような気分だ。

「まあ、更木家だってそれなりに家族になっていったんだから、君達なら問題ないでしょ。二人でゆっくり相談したらどうだい?」
「…ま、それもそうね」
「そうやね…でも、乱菊十一番隊へ来るん?」
 二人で相談と言っても、どちらの隊舎へ赴くべきかと首を傾げた。
「……う〜ん、それはちょっと…まあ、十番隊のあたしの部屋…かな。いずれは隊長達とも会わなきゃいけないだろうしね」
「……ん」
 乱菊の言葉にギンは殊勝に頷き、素直について行った。


「これで、落ちつくと良いんですけれど」
「そうだねぇ…」
 七緒と春水は顔を見合わせ頬笑みあったのでした。



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