「あのね、母ちゃん。あたしと一秋のみたことあるでしょ?」
「うん」
「一秋はね、優しくって丁寧なんだよ」
「あー…そうだねぇ…さすが京ちんとななちんの息子だって思うよ」
 うっとりしながらしながらの八千代の説明には、やちるはやや呆れた様子で自分たちとは比べられないと思っている。
「それに、あたしが学院生だから毎日一緒にもいられなかったでしょ」
「うん。休みに帰ってきて…あと秋君も休みにならないと」
「たまーに、ゆっくりと愛し合うと出来るかもだね?お義父さんもゆっくりゆっくり愛しそうだし」
 八千代の説明と指摘に七緒は苦笑いしか浮かべられないし、言葉を挟もうとも思えない。息子と嫁の赤裸々な関係など知りたくはないと思っていたし、自分と夫の関係を見せびらかそうとも思えないからだ。

「父ちゃんと母ちゃんは毎日とか、激しいのばっかでしょ。たまにゆっくりしてるかもだけど、正直言ってそれはあたしらよりはまだ激しいもんね」
「…そーかなー?」
 やちるは娘の指摘には納得いかないようで首を傾げるばかりだ。
「あのね、一秋が教えてくれたけど、赤ちゃんの元ってすっごく繊細なんだよ。だから、あんまり激しくすると落ちつかないんじゃないかなって」
 八千代の説明に、七緒もやちるも乱菊も目を丸くし、しばらくして一斉に笑いだした。

「か、一秋さんったら、なんて説明を!」
「いやー!すごいわ!あんたと京楽隊長の息子だわ!!さいっこー!!」
「うっわ、すっごい納得しちゃった」
 笑い過ぎて目尻に涙を浮かべている三人に、八千代は頬を膨らませた。
「間違ってないでしょっ!」
「あってると思うわよ…ふふ、ただ、すごい説明の仕方だわって笑ってしまっただけよ」
「確かに、一理あると思うわ。落ちつかないって表現がぴったり」
 七緒と乱菊が笑いをこらえながらも大きく頷く。医学的にはもう少し違う表現なのだろうが、八千代に理解できるようにと考えた末なのだろう、一秋の表現方法に驚くばかりだ。

「うんうん、そう説明されるとすっごい納得した。確かにあたしと剣ちゃんにはできにくいって思えちゃう」
 やちるも満面の笑みを浮かべ大きく頷きを繰り返した。
 そして同時に、できにくくてもいいやとも吹っ切れたようである。
「でも、やーっぱり剣ちゃんに愛してもらいたーい!酒盛りに参加してこよっと!」
 やちるは立ち上がり軽い足取りで駆け出した。
「やちる!!ずるいわよ!あたしだって飲みたいのに!!」
 乱菊が悲痛な声を上げ、七緒が必死で食い止める。
「乱菊さん!これからが大事な時なんですから!いけません!!」
「うううー!ギンも禁酒に巻き込んでやる!!」
 乱菊は悔しそうに歯ぎしりして湯呑み茶碗を握りしめ決意をする。
「…それどこじゃないって思うけどなぁ…」
 現在悪阻真っ只中の八千代は、暢気な感想を漏らしたのでした。



「なんだ?あっちはやけに賑やかだな」
 爆笑する三人の声が届き、剣八が怪訝そうな表情になった。
「こっちも賑やかにすればいいじゃないの。ほら、市丸君飲んで飲んで」
「いただきます…あのう、京楽隊長」
「うん?何だい?」
 ギンには酌をしつつ、自分では手酌で酒を飲みながら首を傾げる。
「あとで、赤ちゃんのこと色々教えてくれます?」
「いーよいーよ、何が知りたいんだい?」
「いやあ、今すぐは思いつきませんわ…なんか、こう、ほわほわして」
「解りますよ〜、俺も出来たばっかの時は嬉しいばっかりで」
「うん、こんな嬉しいもんなんやねぇ」
 ギンと一秋は解り合った笑みを浮かべ頷き合う。自然お互いに酌をし合う形になった。
「親父が、妹たちを可愛がる理由もすっごいわかってくる」
「そうでしょ、そうでしょ。いやあ、娘はまた格別だよ〜、息子は息子でいいんだけれどさぁ」
 息子の盃に酌をしながら大きく頷く。
 こうして息子と酒を酌み交わしながら、孫の事を語れるというのも、春水にとってはまた格別な思いでもあるのだ。
「…まあ、親父が女の子好きってことは解るけど、そんな息子は可愛くない?」
「なーに言ってんの。息子も可愛いに決まってるさ。ただねぇ、息子はどうしたってお母さんに取られちゃうからねぇ…どうも」
「そうかなぁ?」


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