「あ、あたしってすごいかも。さっき子供の話したたんだよね」
「あ?さっきって退治中にか?」
「だって、あたしとギンちゃんすることなかったんだもん。おしゃべりしてた」
 お茶を啜りながら剣八の問いに答える。
「まあ、更木君まで出てたらそうなるね。隊員に仕事させないわけにはいかないだろうしね」
 春水が何時の間にか立ち上がっていて、一升瓶を持ってきた。掲げて剣八とギンと息子を誘う。
「市丸君、おいで。男同士祝い酒と行こうじゃないの」
「そいつはいいな」
 剣八も酒を飲んでいた方がいいとばかりに頷く。乱菊も腰を上げかけたが七緒が制止する。

「乱菊さんはダメですよ。妊娠中のお酒は禁止」
「ええー!!」
 七緒の言葉に乱菊が残念そうな声を上げる。
「授乳が終わるまではダメですよ。赤ちゃんに影響でちゃうから」
「ああー!!今更禁酒なんて無理っ!!!」
 乱菊が頭を抱えて喚く。
「大丈夫だよぉ?つわりが始まれば嫌でもいらなくなるよ?」
 八千代が弱々しい笑顔で励ますが、当然ながら励ましには聞こえない。
「それも嫌っ!!八千代、あんたまだ悪阻終わらないの!?長すぎないっ!?」
「うん…あたしもそう思うの…けど、そういう体質の人もいるって。うふふふ、お仲間になりましょう」
 八千代は自分一人苦しむのは嫌だとばかりに、乱菊にまとわりつく。
「やちる!あんたこの子の時こんなに酷くなかったじゃない?」
「うん、あたしは全然平気だったけどねぇ…、ななちんは?」
「うーん、皆症状が違っていたのよねぇ…だから、本当に体質と言うか…」
「そうなのよねぇ…雛森も結構酷い方だったから、ああはなりたくないとは思っていたんだけれど…」
 この場にいるのは経験者ばかりなので話が盛り上がる。

「…そう言えばやちる。さっきギンと何を話してたって?」
「ん?らんらんはギンちゃんの為には死なないよって話し」
「まあ、それは当たってるけれど?」
「でも、ギンちゃんとの子供ができて、万が一の事があれば、らんらんは子供の為に死ねちゃうよって」
「……それはあんたが既に母親だからね」
「うん。母は強しって、京ちんも良く言ってたけど、あたしもそう思う。なんかちょっと感覚変わるよ」
 無論剣八の事が第一なのではあるが、不思議とお腹を痛めて産んだ娘に対してはまた別格の思いもあるのだ。
 思ったより真剣な事を話していたのだと知り、乱菊が目を丸くする。

「だから、ギンちゃんは責任もって生きてなきゃねってお話」
「……あいつ、解ってた?」
「うーん、話が途中で終わっちゃったけど、らんらんの妊娠解って、もう理解できたんじゃないかな?」
 先程のギンの表情を思い出す。何かしら決意したような目つきだった。
「そっか…」
 乱菊が口元をほころばせ目元を和ませる。やはり彼女も不安はあったのだ。かつてはなりふり構わず大犯罪を犯す程に一途だったのだから。

「うー!!どーしよ!らんらんとか八千代見てたら、胸とかきゅんきゅんするー!!剣ちゃんと愛し合いたーい!!」
 やちるが腕を振り回し羨む様子に、七緒が苦笑いを浮かべる。
「まあ…気持ちは解らなくもないですが…」
「……また欲しいなって思っちゃうの?」
 八千代が首を傾げる。
「そうねぇ…お腹で子供を育むって体験は、何度でもしたくなるわねぇ…」
 子だくさんの七緒らしい説得力ある答えだ。
「それにもまして、京楽隊長も子供好きだものね」
「ええ。どちらかというと、あの人の方が欲しがって出来てることが多いかも」
「いーなーななちん。あたしと剣ちゃんってできにくいのかなぁ?あたしもほしーい!」
「どうなのかしら?八千代さんが産まれているから、全くという訳ではないんでしょうけれど」
 二人のやり取りに首を傾げたのは乱菊だ。
「やりすぎてるから、とか?今のギンはそれほどじゃないから一発で出来た感じもあるし…」
「昔は?」
「あ〜…会う時間が限られてたからかしらね…愛し合うという感覚はなかったように思うわ。今と比べると。貪り合ってるっていうか…」
 事情が解る今だからこそ感じ取れることでもある。
「…愛し合ってるよー?」
 やちるが不満そうに唇を尖らせる。
「んーそれはそうなんだけれどぉ…」
 乱菊も何と説明したものかと首を傾げ腕を組み考え込む。


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