「遊びにきたよー!」
「いらっしゃい」
 七緒が顔を出し笑顔で出迎える。
「あれ?ななちん何かいいことあった?」
「ふふふ、まだ内緒」
「なになにー?」
 七緒の楽しそうな笑顔に、やちるは気になって仕方がないようだ。
「まあ、あがってちょうだい」
「おじゃましまーす」
 七緒とやちるは腕を組んで仲良く奥へと進む。
「えろう仲良しさんになって」
 ギンが微笑ましい光景だと笑みを浮かべて上がり、剣八は黙って上がる。

 奥の座敷へと通されると一同揃っていた。
「あ、父ちゃん、母ちゃんおかえりー!」
 八千代が笑顔で母親に抱きつく。
「ただいま!心配してたんだって?」
「ん。なんかねぇ、こう、もやーっとして気持ち悪かったの。けど、もう平気」
「そっか良かった」
「もう大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
 父親にも抱きつき頷くと、安堵した様子で満面の笑顔になった。

「いいなぁ、あれ。ねえ、七緒ちゃん」
「何言っているんですか。夏七さんと南槻さんが、ああやってくれているじゃないですか」
 春水が羨ましそうにすると、七緒が呆れた様子で指摘する。今は末娘と孫娘が抱きついてくれるではないかと。
「だってさぁ…三夏ちゃんも夏四ちゃんもしてくれなくなってきたもん」
「ふふ、京楽隊長ってば相変わらずですね」
 乱菊が楽しそうに笑い会話に加わった。

「乱菊…今日はどないしたん?」
 ギンが乱菊の隣に座り様子を窺う。わざわざ八番隊へ来てまで呼び出すとは何があったのだろうかと心配になってきたのだ。
「ん〜?本当は、二人きりの時に報告とかも考えたんだけどね…」
「何があったん?」
「あんたと二人きりの時には、話にならないじゃない?」
「そないなことあらへん。ちゃんと会話してるやないの」
「そう言う意味じゃないのよ」
 乱菊は苦笑いを浮かべ、反論したそうなギンを止め咳払いをする。
「…コホン」
 何か大切な事を言うのだろうと察してギンは黙り込んだ。

「えー、わたくし、妊娠いたしました」
「えー!らんらん妊娠したの!?おめでとー!」
「ありがとう。ふふ、やちるン所の孫と同じ年ってのが、また不思議な気分だけれど」
「あ、そうだね。数か月の差だもんね」
 笑顔でお祝いを述べるやちるに乱菊も笑顔で応じる。
「乱菊…妊娠って…」
「そーよ」
「ボクの子ども?」
 茫然としている様子のギンが口にした言葉に、一同ひやりとした。

「こらこら市丸君、それは言っちゃいけないでしょ」
 春水が男の代表として思わず口にする。
「あっ!ちがうんや、そういう意味やあらへん」
 ギンも気がつき慌てふためき言い訳をすると、乱菊が大きな溜息を吐きだした。
「…解ってるわよ。て言うか、あたし自身も信じられなかったから。まさか今更妊娠するなんてね」
 肩を竦めて苦笑いを浮かべ、思わず口走った言葉に理解を示した。
「でも、あんたそれ他の男って意味だったら殺すわよ」
 だが、当然釘をさすことは忘れない。
「違う……乱菊とボクとの子供ができたってことが信じられへんくって…」
「ん、それなら許す」
「ほっぺた、つねって?」
「ほら」
 指さし促すと乱菊は遠慮なくギンの頬をつねった。
「痛い痛いっ、うわあ、夢やあらへんのや…」
 徐々に笑顔になっていく。
「いつできた子なんやろ?」
「多分最初」
「ホンマ?あの時の子なん?」
「うん」
「ボクと乱菊の赤ちゃん…」
 頬を染め心底嬉しそうにはしゃぎ始めたギンを見て、一同安堵した。

 これならば大丈夫そうだと。



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