だが、ほどなくして二人ともゆっくりとした交わりに飽きてきてしまった。
「あ、あん、剣ちゃんっ!あっ」
 やちるは上体を起こし、腕を突っ張って体を支え腰を激しく叩きつける。
「ふ」
 剣八は大きく揺れる豊かな膨らみを両手に包みこみ揉みあげながら、腰を突き上げる。
「ああんっ!!」

 その時だった。
「あのう…」
 間延びした声が話しかけてきた。
 日向ぼっこをしていたので障子は当然開いているのだが、声を掛けた人物は障子の陰に隠れている。
「ああ?」
「あん…」
 剣八が動きを止めると、やちるが残念そうな声を上げる。
 普段なら声を掛けられたくらいで二人とも動きを止めることはないのだが、この日は珍しい声だったために思わず剣八の動きが止まった。

「今、ええですか?」
 ギンが申し訳なさそうに顔を覗かせる。
「なんだよ、急ぎか?」
 急ぎでなければ声を掛けるわけがない。
「へえ、出動命令なんですが」
「一角はどうした?」
「斑目三席も綾瀬川五席も出てはります」
「ああ、そうか…一秋は?」
「彼は夜勤明けで、さっき帰ってしもうたばかりで…」
 ギンの声はうろたえたり、申し訳なさそうというよりも、居た堪れないといった感じだ。
「そうだったか。やちる」
「ああん…あと少し…ね?剣ちゃん」
 剣八が上体を起こしやちるにどくように促すが、やちるの方はそんなにあっさりと切り替えができない様子で、もう少しとねだる。
「…そうだ。市丸、てめーが行ってろ」
「え?ボクがですか?ええんですか?」
 ギンが驚き首を傾げる。そもそも彼の単独行動は認められていないのだ。隊長や副隊長、もしくは三席が同伴でなければならないからだ。
「ちっ、面倒臭ぇなぁ…」
 ギンがわざわざ伝えに来た辺り、それなりに急務だとは解るのだが、本当の急ぎであれば地獄蝶で呼び出しになるはずだ。ただ、十一番隊と指名がある程度には強い虚、もしくは正体不明なのだろう。
「急ぎか?」
「急ぎといえば急ぎですねぇ、編成組んでの依頼ですから」
「ああ?俺一人じゃねえのかよ?」
「数がいるようで?」
「……数なんか俺には関係ねぇってのに」
「まあ、そらそうでしょうけど」
 剣八の強さを知っているギンはあっさりと頷く。
「あー、くそ、面倒臭ぇな…おめー、先に編成して行ってろ。後から行く」
「迷子になりまへんか?」
「あ?一秋叩き起こせば済むだろ」
 娘婿になったからだろうか、元々遠慮はなかったが容赦がない。
「へえ…」
 霊圧感知が優れている弓親がいないのなら、次いで優秀なのは十一番隊には一秋しかいない。今はギンも増えた。元は隊長だったのだし元々人を使うことはギンの方が巧いのだ。編成などという面倒な作業は任せるに限る。
 ギンは肩を竦ませて一礼すると、そそくさとその場を立ち去った。

 何せ剣八もやちるも恥じることはない様子で、ギンが見ていても平気で腰を動かし続けていたのだ。見せつけられているギンにとっては居心地が悪くて仕方がなかった。
 それこそ昔の性格であれば、興味津々といった様子で見ていられたのだが、今はやっと乱菊に許してもらえて愛をせっせと育みつつある途中な上、精力もほどほどにしか回復していないので、どちらかというと目に毒という状況だったのだ。

 ギンが立ち去ると、二人は集中すべく唇を重ね合わせ体を寄り深く繋ぎ合わせた。




「終わったか?」
 一応烏の行水ながらも風呂に入ったのだろう、先程までとは違いさっぱりとした表情だ。
「今、編成終わったところですわ」
「じゃ、行くか」
「待って、剣ちゃん!あたしも行くっ」
 やちるも女だからか、身支度に少しばかり時間が掛っていたようだ。少し濡れてしまった髪を軽く結い上げて邪魔にならないようにしている。
「あ?別におめーまで来なくてもいいだろ」
「行きたーい!」
 こちらもさっぱりとした表情で既に気持ちは戦いの方へ傾いているようだ。
 剣八は肩を竦ませただけでやちるの同行に異論はなかった。

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