仕事を終えた一秋が八番隊へと帰って行く。
 一般的に悪阻が終わってもおかしくない時期になっても、八千代の体調はすぐれなかったのだ。
 だったら、十一番隊にいるよりも、常に誰かが見てくれている状態の八番隊の京楽家の方が八千代にとって安全だということで、一秋は八番隊から十一番隊へ通っているような状況だ。


「ねえ、剣ちゃん」
「ああ?」
「なんか不思議だねぇ?」
 温かな日差しに障子を開け放ち、二人は日だまりで寝転がっていた。
「何がだ」
 剣八は片腕を頭の下に置いて枕にし、もう片腕はやちるの枕代わりに提供している。目蓋を閉じまどろんだ状態のまま、やちるの問いかけに短く問い返す。
「八千代って学院行ってたから、ここンところいなくって当たり前だったのに。八番隊へ行ってると、なんかもっといない感じがするね」
 これが嫁に行ったという感覚なのだろうかと、やちるは首を傾げた。
「ま、ガキが産まれたら、それこそ賑やかになるだろ」
「うん!そうだね」
 何処か遠いところへ行ったわけではない。子供が無事に誕生し、落ちつけば十一番隊へ帰ってくるのだ。二人、いや三人になって。

 剣八の指摘にやちるの気持ちは一気に切り替わり、剣八に甘えるように擦り寄った。
 良くも悪くも単純なのだ。

 少し上体を起こして、寝転がっている剣八の唇に自分の唇を重ねる。
 剣八は目蓋を閉じた状態ながらも、やちるの唇や舌の動きに応じてくれた。
 やちるは、剣八の眼帯をそっと撫で、反対の額から顎に走る傷にそって唇を這わせていく。剣八は黙ってされるがままだ。

 数々の戦いでついた傷を辿るように唇を這わせ、時には舌で舐める。
「やちる」
「なあに?剣ちゃん」
「じれってぇ」
 一言告げ顎をしゃくる。
 やちるは顔を上げ顎の示す先を見て笑顔になった。
「ふふ、もう待ちきれないんだ?」
 やちるは嬉々として剣八の帯を解き袴を脱がせ、下帯を解いて行くと、程なく剣八が言った事が立証された。
 雄々しく天を向く代物に、やちるの瞳が輝く。
「んふふ、剣ちゃんてば」
 両手で持ち愛しそうに唇を押し付ける。

 剣八はどうやらやちるに任せるつもりらしく、両手を組み頭の下へ置いて枕にして様子を眺める態勢になった。
「んく、ん」
 口に含み舌を動かし刺激を送る。今ではすっかり剣八のツボも熟知しているので、慣れた様子だ。

 しばらくして、やちるが満足げに顔を上げると死覇装の袴を脱ぎ、剣八を跨いだ。
「剣ちゃん、そのままでね」
「おう」
 ゆっくりと腰を降し、我が身に迎え入れる。
「ああん…はあ…」
 気持ち良さそうに声を上げながら腰を落としきると、胸元に擦り寄るように覆いかぶさった。
「どうした?動かねぇのか?」
「ん、ちょっとこうしてる。剣ちゃん一杯で気持ちいいから」
「そうか」
やちるが気持ちが良いと言った事が本当だと感じ取れる。剣八の身を軽く締めつけ蠢く様子がじっとしているだけによく解るのだ。
 剣八は両腕を頭の下から引き抜くと、やちるのお尻を両手で掴み揉み始めた。
「ああん…剣ちゃんてば…」
「いいだろ?」
「ん、いーよ…」
 鼻に掛った声で気持ち良さそうに頷く。嫌だと言うよりも、駄々っ子を軽くたしなめるといったような口調だった。
「んふ…あん…」
 剣八は揉みながらも、時折小さくお尻を持ち上げては落とし、ゆるゆると動きを付けると、やちるの吐息が剣八の胸板に熱く吹きかけられる。
「これ、きもちいい…」
「ああ、そうだな」
 うっとりと呟くやちるに、剣八も頷く。

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