◇桜の下で・2
そしてスタークはと言えば。
剣八とギンに捕まっていた。
「よお、オメー強いんだってな?」
「…今はどうだか?刀もないし、仮面も今のところ出ないしな」
スタークは軽く肩を竦めながらも、ギンから盃を受け取り酌をされていた。
「なんや、斬魄刀持ってへんの?」
ギンが首を傾げる。
「……持って、ここに来るものなのか?」
「ああ、そう言えばそうやった。最初は学院に行って、その後死神になって斬魄刀を手にするんやった」
「俺は何時の間にかってところか」
「今は、普通の姿やし、二人に別れたし、帰刃にはならへんやろうし…そうなると、斬魄刀能力も変わるんやろね」
虚の事情にもある程度詳しいギンが頷きながら分析をする。
剣八は難しいことなど解らないとばかりに、酒を煽る。スタークが力を持っていないと解ると途端に興味を無くしたようである。
「京楽隊長はそのあたり、何も言わへんの?」
側にいる一秋に話題を振る。
「いやあ、親父はそういうことは口に出して言わないんで解りませんよ。まあ、斬魄刀は持たないままでもいいんじゃないですか?」
「へえ?君がそれを言ってしまうん?」
「…四十六室が良い顔しないんでは?」
「ま、あそこはそうやろね」
「後はまあ、親父が楽をしたがるに決まってるから、そんなことの為なら持たない方が彼らの為でしょう」
一秋があっさりと父親を扱き下ろす。酒が入っているからというよりも、どちらかというと同情気味に苦笑いまで浮かべている。
「……それは、俺に仕事を押し付けると?」
実の息子にそこまで言われるほどなのかと、酒を飲みかけていたスタークが驚き顔をあげた。
「ええ、しますね。間違いなく」
「あー…しそうやわ」
「するな」
きっぱりと頷く長男に、ギンに剣八まで同意している。
「……それは面倒だな…、子守のままでいい」
眉間に皺を刻み溜息を吐きながら酒を煽る。
「あはは、そうやった、君も相当面倒臭がりやったねぇ」
ギンが軽やかな笑い声をあげた。
あちこちで笑い声が起きている。
空を見上げれば、青い空に見事に咲き誇る薄桃色の桜の木々。
賑やかな笑い声に、美味しいお弁当の香りに酒のつまみに、酒の匂い。
女性陣は色鮮やかな着物姿でちょっとおしゃれをしていて。男性陣もそれなりにお洒落な着流し姿で寛いでいる。
腰には誰も刀を下げてはいない。
ほんのりと口元に笑みを浮かべ呟いた
「ああ…だが…悪くない」
20110406〜0601
スタークとリリネット視点で、改めて京楽家ゆかりの面々との宴会風景です。
あえて、しゃべらせたのは本当にごく一部の面々になっておりますので、ものっすっごい尻切れトンボです。
風景を切り取った感じ。
あえて、細かくは描写しませんでしたが、京楽家は上の四人に三つ子もいるし、狛村家の三つ子、浮竹家の双子に、八千代に、鉄さんと水緒ちゃんも居たりします。
相当大賑わい。隊長が五人もいて、副隊長も五人もいます。総参加人数、27…人?すげえや。
いやぁこうしてみると、すんごい繋がりになってますね。
そんな中にぽんと放り込まれた雰囲気を想像いただければと思います。
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