◇桜の下で・1


「身内ばっかりだから」

 確かに春水はそう言ったはずだった。
 だがしかし、その場には護挺十三隊隊長格の半数近くと言っておかしくない面子が揃っていたのだった。
 一応、身内と言っただけある。全員私服姿だからだ。
 この日、花見と称して京楽家の所有する敷地にて、部外者禁止の花見に興じていた。

「やっと、まともに挨拶ができるね」
 そう声を掛けたのは十四郎だった。春水とともに、スタークとリリネットと対峙した相手である。
「……おっさんも、身内?」
「こら。女の子がそんな言葉づかいをしてはいけないとあの時もいったじゃないか。おじさんと言いなさい」
「……おじさん」
 驚くリリネットを十四郎は軽く叱り、彼女が不承不承でも言いなおした事に満足し笑顔で答えた。
「よろしい。まあ、身内と言うか、元々京楽とは古くからの友人でもあるんだが、うちの息子と京楽の娘と恋人同士なんでな。身内候補とでも…」
「誰が認めるか!!夏四ちゃんはお前の所になんて嫁にやらないからな!!」
 すがさず春水が真剣に怒鳴りこんでくる。
「……おっさん、長女嫁に行ってんじゃん?」
「ううう、それは言わないでっ!」
「ははぁ…あの狼のおっさんの所行くの、相当ごねたんだ」
 リリネットは今の春水の様子からでも、ありありと想像ができ大きく頷いた。

「えっと、そうなると、長男が十一番隊ンとこの娘とで、長女が七番隊、次女が十三番隊」
 リリネットが把握するように指折り数える。
「あれ?あの人も隊長さんだったよね?」
 七緒とやちると乱菊とともに会話している烈を指さす。
「ああ、烈は俺の妻だ」
「へー!隊長さん同士で夫婦なんだ!」
 驚きながらも、今の隊長達の関係を頭に叩き込みスタークを探すと、ギンの姿が目に入った。
「あれ?何で市丸もいんの?あれも身内?」
「いやあ、身内と言うよりも、乱菊ちゃんに酒盛りすること聞きつけられて、連れて来られたって方が正しいねぇ」
「えっと、十番隊の副隊長だよね?」
「まあ、七緒ちゃんややちるちゃんともお友達だしね」
「ふうん」
 要するに身内同然と言ったような間柄なのだろう。
 それにしても、昔とは違う繋がりに驚くばかりである。リリネットはこんな風に繋がっていく関係も素敵なものだと笑顔で頷き、子供達が群がっている左陣の元へと向かった。狼の風貌の七番隊隊長は、春水の娘の夫だということもあって先に知り合ってはいたが、狼の名を冠していたスタークとリリネットにとっては、なんとなく妙な親近感があるのだ。
 何より彼の毛皮は相当に気持ちが良い。
 子供達と共に、リリネットも抱きつきにいったのでした。


[*前] | [次#]

[表紙へ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -