◇おしおきの味
「何、この手」
「チョコレート頂戴」
ギンは乱菊に片手を差し出していた。
「あ?何、その貰って当然な態度」
「だって、昔はくれとったよ?今はもうなくなってしもたん?」
乱菊はギンを睨みつけたが、小首を傾げたギンは不思議そうに問うばかりだ。面白い儀式がもう廃れて無くなっていたとしたら、それは残念で寂しいことだと思う。
貰って当然な態度というか、貰いたいという期待と言った方が正しいかもしれない。
「……ふん。そうそう廃れないわよ、こういう儀式は」
乱菊は胸元から小さな包みを取り出すと、ギンの掌に叩きつけるように置いた。
「……チョコレート…材料手に入らんようになったん?」
「あんたねぇ〜」
あまりの小ささに残念そうに呟くように問い掛けるギンに、一体どこまで本気なのかと乱菊は怒りたい気持ちになった。
「…乱菊の作るチョコ、美味かったのにな…」
ぽつりと呟き器用に片手で紙を剥き、口に放り込む。
「…乱菊…腕、落ちた?」
口元をゆがめながらも何とかチョコレートを飲み下した。目元は涙がちょっぴり滲んでいる。
「それは、そういうチョコレート!カカオ100%!劇苦チョコ!」
「甘いのんが、ええのに…。まだ許してくれへんの?」
胸の谷間に挟んでいたためか、チョコレートが少し溶けていたため指に少しついてしまっていた。指の苦いチョコレートを舐めながらも恨めしげに問い掛ける。
あまりの苦さに余計に甘いチョコが恋しい。
「そうそう簡単に許して堪るもんですかっ!」
「いやや、甘いチョコレート頂戴」
「だーめっ!」
子供のように甘え駄々こねるギンを乱菊が楽しそうにからかう。
振り切るように乱菊が先を歩き出すと、ギンが追いかけてくる。
乱菊が部屋に入り、戸を閉めようとするとギンがするりと入ってきた。
「乱菊っ」
乱菊は黙って笑顔を向けると、ギンの頬を両手で挟みこみ唇を重ねた。
途端にギンの口内に甘いチョコレートが広がった。
「ん、んん〜…」
ギンは貪りつくすように乱菊の髪を掴むように頭を支え、舌を絡ませる。
「あかん…甘いの言うたけど…これは止まらへん…」
「ばーか…」
息継ぎするように唇を離したが、直ぐに舌を伸ばし乱菊の唇を塞ぎ味わう。
勿論。口付けだけで終わるはずもなく。
乱菊はギンに美味しく最後まで食べられてしまったのでした。
何故かギン乱の拍手って最後こんな落ちになりがちだ。
20110201〜0303
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