いつしかリサは机に突っ伏して喘いでいた。その為眼鏡がずれてしまっている。
「あ、あ、あっ」
「そろそろ…か…」
 リサの様子を見て、拳西は腰を掴むとより激しく腰を叩きつけ始めた。
「ああああ!!」

 二人の体が小さく震えると動きが止まり、拳西は奥深くへと潜りこむと精を残らず解き放った。



 手拭いで汗を拭う。あまり辺りが汚れていないのを目に止め、リサは呆れたように首を振った。
「こんなことばっか、器用なんやな」
「職場に乗り込んできたのは、オメーだろうが!」
 思わず怒鳴り返すと、リサが拳西の顔を掴み唇を重ね怒声を消した。
「…そう、吠えんなや」
「…オメーがいらんこと言うからだろうが」
 それでもリサの面倒をちゃんと見てくれるのだから、文句は確かに言えることではない。そこはありがたく思っている。思っているが素直に口には出せない。

「それにしても…珍しく白の邪魔が入らなかったな」
「まあ、な」
「何したんだ?」
「ん?甘味処で食べ放題、おごったった」
「…俺のツケなんていうなよ」
「…言いかけたけどな」
 今回は自分の我儘だと自覚しているリサは、ちゃんと自腹を切っていた。白との付き合いはそこそこあるので、彼女の食べる量くらいは理解していることもある。
「ま、その分仕事遅れるから、そこはな」
「……そこは俺の負担じゃねえかよっ」
「あんただって、良い思いしたんだからおあいこや」
 額に青筋が浮かびかけたが、確かにリサの誘惑に乗った己にも責任はある。大きな溜息を吐きだしリサを抱き寄せた。
「今夜は八番隊に帰さねえからな」
「望むところや」


 二人は拳西の部屋へと場所を移動し、夜遅くまで体を重ねあったのでした。



「おや、白ちゃん?どうしたんだい?」
「リサのおごりなのー」
「へえ…」
 仕事を終えた後から姿が見えないことと、白が甘味処で頬いっぱいに幸せそうにおはぎを頬張っている様子から、今夜は帰ってこないだろうと思われた。
「そっか」
 それでは自分もゆっくりと飲み明かすことができそうだと、にんまりと笑う。


 この日虚退治に八番隊が向かったのだが、隊長の春水に指名があった。
 虚を知り、狡猾な相手故に春水に指名があったのだと、直ぐに悟った。
 当然の事ながら春水は易々と片づけた。リサの手を借りることなく。
 リサにはそれが不満だったのだ。多少なりとも自分も手助けできたはずだと。
 春水は単純にさっさと片を付けたい相手だったのだが…。

 無論リサにも理解できていたし、狡猾な相手は長引かせると性質が悪いことがあるので、さっさと片付けることに異論はない。
 要するに自分の力不足を突きつけられて不満だったのだ。

 拳西に八つ当たりして、慰めて貰いたかっただけ。
 けれど、それを素直に口にできないので、リサは行動で示したのだ。

 春水にも拳西にもそれが解っているから、二人とも何も言わずリサの行動を受け止めた。


「やれやれ、女の子は難しいねぇ」
 女に手慣れている春水が酒を片手に呟いた頃。

「全く、女は素直じゃねぇよな…」
 拳西は健やかな寝息を立てて眠るリサの三つ編みを解き、軽く波打つ髪を指に絡ませ呟いていたのでした。


おしまい

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