長編 | ナノ

 棘ある魚は麗しい

「あ、貴女はアフロディーテ様……!?」

「えっと、ども!今は名だけど…」

「此処が大丈夫なのですか??具合など悪くなってませんか??」

「薔薇園で?なんで?こんなに綺麗な場所だし、匂いなのになんで?」

「この薔薇には毒が含まれています。普通の人が入れば毒で死んでしまいます。」

「はぁ…毒…」

なんつー物騒な。。綺麗な顔した人だけど恐ろしいこというなー!
まぁ、あたしの体に害はないみたいだ。

「ということは…あたし普通じゃないみたいだわ。」

「は?……まぁ?貴女は女神ですので普通ではないとは思いますが…無事で何よりです。」

「だねー、女神ってマジパネェ〜。」

「パネェ??」

「あー!!ごめん!あたしが前居た世界のとあるゲームのキャラの口癖(笑)通じないわなー!」

「はぁ…。」

困った顔をしてるんだけれども それがまた美しいここは、美人が多いなぁ。

「ところで、此処へは何故まいられたのですか?」

「ああ!あたし挨拶にきたんだった!!」

「女神の貴女がワザワザこなくても…」

「いやいや!挨拶は基本なのだよ!」

「はぁ…では…私から魚座の黄金聖闘士アルバフィカ」

「アルバフィカっていうのね!あたしは、今の名前は名!ということでさっきアフロディーテって呼んでたけど名でお願い!そして敬語もやめて!」

「しかし…」

「はいはい…女神だからはなし!」

そう言いながらアルバフィカの口にを人差し指をあてる

「!?!」

すると、アルバフィカは驚きながら後ろに飛んだ

「ん??」

そんなに驚かなくても…

「私に触れてはいけません!私の血には毒が含まれていて…」

「あー、危ないから触るなと?多分、大丈夫だよー?」

「しかしっ!万が一何かあれば…」

ん〜。アルバフィカは心配性なのか?すんげー真面目なのか?仕方がないなー。

「ちょっと痛いかもだけど我慢ね?」

「え?」

あたしはアルバフィカの手をとり薔薇を握らせた
刺によって血が出た

―パクっ

「えぇ!あっ!ちょ!アフロディーテ様!」

血が出た指を舐めてみた 普通の味
さっき舐めた自分の血とかわんない
それなのにアルバフィカはかなりオロオロしてる。めっちゃ可愛い…

「ほら!!あたし大丈夫!死んでない!しかも血の味はあたしと変わんなかったよー?」

「はっ……ははは…」

アルバフィカがその場に座り込む

「貴女には敵わないな…」

「それは嬉しい♪これから宜しくね♪アルバフィカちゃん♪」

「………ちゃん?」

項垂れていたアルバフィカが顔を上げる

「あれ?嫌?」

「私は男だ…」

「へ?」

「……………」

「……………」

女だと思ってた!!?やべー!男なの!?
男なのに何この綺麗さ!?ヤバイヤバイ!
血舐めた!イケメンの血舐めた!
今晩、ねむれーん!!

「あ、貴女は……頭が弱いのだな」

グハッ!?
言われた!ホントの事言われた!

「うっわ〜。さらっと言ったね。何気に酷いね。」

「どっちが…私は女みたいだと言われたりするのは嫌なのです。」

「あー。女みたいじゃなく女だと思ったんだけど?」

「もっと悪い」

ううっ睨まれてしまった……
ヤバイ、お近づきどころか嫌われてしまったか

「ごめんなさい……」

「はぁ…素直なのはいいですが…もう、言わないでくださいよ?いいですか?名」

おや??許してくれる??しかも…名前!

「はいっ!!」

「わっ!?」

嬉しくて思わず抱きついてしまった!

「気をつける!よかったー!ありがとう!嫌われたらどうしようかと思った!」

「ちょ………名……!」

抱きついてたのにべりっと引き離された

「毒は大丈夫なのに…」

「毒が原因ではありません!!その…貴女のような…人に…抱きつかれたら……」

なんだか小さな声で顔を赤くしてゴニョゴニョ言ってるアルバフィカ…

「私だって男なのだ…抱きつかれたら…」

「なに?どしたの?顔赤いけど大丈夫??」

「と、とにかく!女性の貴女が軽々しく男性に抱きつくのはどうかと思うがっ!」

うおっ!?イキナリ大きな声をだしだしたアルバフィカ

「あぁ………女性が男性に抱きついたらね……」

いかん、あまりにも美しいし可愛いんで女友達に抱きつくノリでやってしまった。
だから、アルバフィカは顔赤かったのか…
ププッ…照れたアルバフィカ可愛い……

「名?いま、あっ女みたいだから抱きついてしまったとか思ってなかったか?」

「え??あ、あはは…?いやー?そんな事は…」

笑って誤魔化してみたけどバレバレだったみたいだ

「名!!!」

「わぁー!!ごめんなさいー!!」

ヤバイ!また怒らせた!アルバフィカの小宇宙が大きくなってるー!ヤバイ!逃げるが勝ちっ!

「あっ?!待つんだっ!名!」

止める声を聞かずにあたしは下へと逃げた






――

逃げていく名の後ろ姿を見つめるアルバフィカ


「ふぅ…アフロディーテか…美と愛と性の女神…、今の名は名…か…。アテナ様とは全く違う女性のようだな…フッ…。変わった女神だ…」


アルバフィカの顔が綻ぶ…

容姿は美しいのだから大人しくすればいいものを…
口は悪い、頭も悪い。本で見るアフロディーテとは違う。けれど、彼女に触れた心は暖かい…愛の女神と呼ばれる理由がなんとなくわかった気がした…


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