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現状維持論

その日はずーっと学校早く終わんねーかな〜って思っててそわそわしてて。んで、やっと終わったと思ったら億泰の誘いも断って彼女のアパートに直行したと言うのに。インターホンを連打したらやっと彼女は中から気怠そうに顔を覗かせた。

「…どーしたの、仗助君」
「どーしたのって…。ななこさんに会いに来たんすよ!」
「…ん、」

玄関の扉を開けたままで再びリビングに戻っていく姿を見るとどうやら上がれという事らしい。勿論、遠慮なんてする訳が無い。

余計な物が一切置かれていない部屋は初めて訪れた時は少々驚いた。女の子の部屋って普通はもっと可愛らしい物で溢れ返ってるんじゃないのか?もっとこうピンクの物がいっぱいだったりとか、ぬいぐるみが置いてあったりとか。そう言えば年上のこの彼女は口の端をにやりと上げた。

「へぇ?仗助君が今まで付き合ってきた女の子はそーいう部屋だったんだ?」

その笑い方がやけに色っぽかったのと自分がからかわれている様な気がして一気に心拍数が上がったのを覚えている。

ななこさんは俺より幾つか年上でいわゆる社会人て奴だ。大人の余裕なのかはわからないけど彼女はいつも何処か気怠そうな表情で、でもまあそれがまた良いのだ。普段はちょっときつそうな見た目の割に俺の前で見せてくれるふとした仕草がとてつもなく可愛かったりもする。いわゆるギャップ萌え〜、てやつ?

「で、どーしたの?」
「ななこさん、今日が何の日か知ってます?」
「…?しらない」

大して考える素振りも見せずに彼女がそんな事を言う物だから俺は盛大に溜息を吐いた。その溜息に反応してななこさんは俺に怪訝な眼差しを向ける。

「今日は俺とななこさんが付き合って5ヶ月目の記念日なんすよ」
「そーなんだ」
「なんか反応薄すぎじゃないっすか!」

声を荒げれば子供を宥めるように頬を撫でられた。そうやって俺はいつも子供扱いされているような気がする。大体、記念日云々は女の子のが気にする物なんじゃないのか?きっとそう言えばまたななこさんは笑いながら「他の女の子はそうだったの?」って言うに違いない。俺が付き合った事あるのはななこさんだけだと知っている癖に。何だか俺ばっかり好きなんじゃ無いかと思うぐらいだ。

「じゃあ何処か二人でご飯でも行く?」
「…行く」
「ん、なら化粧するから少しだけ待ってて」

そう言ってななこさんは小さな鏡を見ながら化粧ポーチをごそごそと漁り始めた。手持無沙汰な俺は化粧をし始めたななこさんを後ろからそっと抱き締める。後ろから小さな鏡を覗き込めば鏡越しに彼女と目が合った。「やり辛い、邪魔だ」と目が語っているが敢えてそれはわからない振りをする。漆黒の細い筆でななこさんの目が縁取られていってたったそれだけなのに随分と雰囲気が変わるもんだな、と感心した。

「ななこさん、化粧しなくても良いのに」
「化粧しないと童顔なのがばれるから嫌なの」
「それが可愛いんすよ〜?」

ななこさんの左肩に後ろから顎を乗せてそう言えば小さな声で「馬鹿」と聞こえた。だって本当の事だし。目線を鏡からそーっと下に降ろすとななこさんの胸元が見えた。今日は仕事休みでずっと家に居たみたいだし、てことは下着つけてないのかも。襟元が開いている部屋着の隙間から中を伺い見ようとしたけど上手く見えない。んー、もうちょっとで見えそうなんすけどね〜。

「何してんの」

あ、ばれた。思わず逃げるようにななこさんの首元に顔を埋めた。彼女の匂いでいっぱいになって何だかほだされてしまう。あー、もう駄目だ。

「ななこさん、好き。マジで好き」
「……」
「好き、好き。あーもー、めっちゃ好き」
「……あのさ、仗助君」

名前を呼ばれてそっと顔を上げると鏡の中で少しだけ困ったようなななこさんが見えた。さっきよりも長くなった睫がやけに印象的だと思う。

「今日で私と付き合って5ヶ月だって言ったよね?」
「うん、それがどーかした?」
「もっと早くに飽きられるかと思ったけど意外と大丈夫だったな、って思ったの」
「…それどーいう意味?」

顔を伺いたかったけれど生憎彼女は俯いてしまっていてその栗色の髪のせいで表情は見えない。それでも静かにぽつりぽつりと呟き始めたななこさんの様子はいつもの大人な彼女とは違っていて。

「…仗助君は女の子にもてるでしょ?」
「……自分ではそー思った事無いけど…」
「何でそんな君が私なんだろうって思ってたの」
「……」
「今は私の事を好きって言ってくれるけど…。きっとそれも今だけなんだろうなあって」
「ちょ、ちょっと待って!ななこさん!何でそんな事言うんすか?」

相変わらず俯いたままの彼女を更に抱き寄せるとななこさんもそれに応えるように腹に廻された俺の手をぎゅうと握る。5か月記念だし、と思って俺はななこさんと一緒にいたくて会いに来たのに何だこの雰囲気は。これじゃあまるで別れ話じゃないか。

「俺はななこさんの事ずーっと好きでいる自信があるのに」
「…そんなのわかんないよ、先の事なんて」
「何で、何でそんな事。ななこさんは俺の事嫌いになったんすか?」
「違うよ、仗助君の事は好き。……けど、本当は不安だったの」

ぱた、と雫が落ちた。そのまま雫はショートパンツから伸びる彼女の太ももを伝って終いには床に敷かれたラグへと吸い込まれる。俯いたななこさんがどんな表情で泣いているかはわからないけれど、小さく震える肩は普段の彼女の様子とは似ても似つかない。

「仗助君は興味本位で年上と付き合ってるだけだろうなって。だからきっと飽きられたらすぐに別れる時が来るんだろうなって思って…っ」

そこまで言ってからななこさんは何も言わなくなってしまった。代わりにぱたぱたと雫が落ちていくばかりで。ななこさんの想いを聞いてふと思うが彼女の背中はこんなに小さかっただろうか。いつもはあんなに大人びて遠くにいた彼女が随分と近くに感じてしまう。

「あのさ、何でななこさんはもう別れる事考えてんの?」
「…だって、」
「さっきも言ったけど俺はずーっとななこさんの事好き。それは絶対っす」
「そんなのわかんないってば…、」
「先がわかんないんだったら俺がななこさんと別れるかどーかもわかんないでしょ?」

そう言えば彼女はやっと顔を上げた。そもそもななこさんの泣き顔を見るなんて初めてだ。彼女が瞬きをしてまた一筋涙が頬を伝った。

「じょうすけ、くん」
「……俺が興味本位でななこさんと付き合ってると思った?」

ななこさんを自分の膝の上に乗せてお互い向き合う姿勢になる。俺がそう問い掛ければ彼女が困ったようにまた俯こうとするものだから思わず顎を持ち上げて無理矢理視線を重ねた。

「ななこさん、好き。…ななこさんは俺の事好き?」
「…好き」
「ん、ならそれでオッケーっす」

彼女の涙はすっかり止まっていた。唇と唇が触れるギリギリまで顔を近付けているから喋る度に息が当たってくすぐったい。

「それにこのテンションが維持できなくてもし下がったとしても、それはそれでいーんすよ」
「……」
「だって下がるだけ下がったら後は上がるだけしか出来ないじゃないっすか」

そこまで言ってからななこさんの唇に自分のを押し付けた。最後にぺろりと彼女の唇を舐め上げればしょっぱい味が口内に広がった。

「…仗助君、下がるだけ下がって終わりかもしれないよ?」
「だーかーらー、それは絶対有り得ないんすよ〜!俺がななこさんを嫌いになる事は無いから!」

俺が諭す様に言えばななこさんはふっと笑った。いつもの大人びた顔じゃないそれがぎゅうと心臓を鷲掴みにした。ん〜、何回も言うけどやっぱ好き。

「…仗助君、私、君が思ってるよりも君の事好きだから」

ああ、なんてグレート。俺ばっかり好きだと思っていたのはどうやら勘違いらしい。ななこさんが珍しく俺の胸に擦り寄って甘えるようにそんな事を言うなんて。そのまま俺は彼女を抱き上げてすぐにベッドへと運ぶ。

「え、仗助君、ご飯は」
「飯はまた今度で。とりあえずななこさん、それ反則っす」

そっとななこさんをベッドに降ろしてからそう言えば、と彼女の身に纏っているTシャツを一気に捲り上げた。ああ、これまたグレート。目前に晒された二つの膨らみ。やっぱり俺の思った通りノーブラだった。ここまで来て我慢をする必要も無いのだからそのまま誘われるように俺は彼女の素肌へと唇を寄せる。

「あ、こら…っ!仗助君…っ」
「あー、暴れちゃ駄目っすよ。仗助君の事が大好きなら暴れるのは無しっすからね」
「…ばか…ぁ」

抗議の声が次第に嬌声へと変わりゆく様を聞いて俺は思わずにんまりと口角を上げるのだった。





Congratulations!5000hit!




NOT AGAIN!の70様よりいただきました!
5000HITで5ヶ月記念とか、私の日記の呟きを拾っていただけたりとか、もうめっちゃ俺得な感じでありがとうございます!
あああマジカッコイイ仗助!もう本当70様のところの露伴も仗助も憧れです!
ありがとうございます…ッ!


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm