「…君のことが、好きなんだ」
そう言って困ったように私を見つめる花京院くん。突然の告白にぱちくりと瞬きをするしかできない。
「…えっと、」
「急にごめん。…でも、なんていうかな…今、伝えたくなって…」
いや、そんな急に言われても困る。花京院くんの中ではずっと温めていたのかもしれないけど、私にしたら全然、寝耳に水の話だ。
「いや本当に急すぎるでしょう?」
そもそもこんな場所で言うようなことじゃあないじゃない。そう告げれば彼は辺りを見回して、たしかにそうかも、みたいな顔をした。今は掃除の時間の最中で、日直の私たちは焼却炉に持っていくゴミを抱えて並んで歩いている。全く色気なんてない。
「あのさぁ、ちょっと考えてよ花京院くん。重たいゴミ抱えて告白とかデリカシーなさすぎない?」
わかるでしょ?とじとりとした視線を送れば花京院くんは謝罪と共に視線を伏せた。もうなんていうか頼むからせめてこのゴミを捨ててからにして欲しかった。今更言っても仕方ないけど、なんて言葉と共に大きく溜息を吐くと、花京院くんはしょんぼりとしたままもう一度謝罪の言葉を唇に乗せた。
「…ごめん。二人きりになれたのが嬉しくて」
「…女子ならさぁ、好きな人から告白されたいなっておもうけど!でも!まさかゴミ抱えてるとこに言われるなんて思ってないから!」
ぷうと頬を膨らませながらそう言うと、花京院くんはゴミ箱を取り落とした。ガコン、なんて大きな音と共に散らばるゴミ。
「ちょ、花京院くん!なにしてんの!」
慌ててゴミ箱を置いて、とっ散らかったゴミを拾おうとしゃがみこんだ私の上から、期待のこもった声が降ってくる。
「…ねえ、それって、…僕のことが好き、ってこと?」
しまった、と思ったけれど今更遅い。さっきの花京院くんはこんな気持ちだったのかしら、なんて考えがちらりと頭を過ぎったけれど、それどころじゃあない。
「…ッッ!」
恥ずかしさに顔を上げられない私に向かって、花京院くんは続ける。
「…もう一回、僕にチャンスをくれないか」
おそるおそる花京院くんに視線を向ければ、彼はさっき告白した時みたいに真剣な顔で私を見つめていた。
「…チャンス、って…」
「…もう一回、君の理想通りに、僕が告白するから、」
どんな告白がいいのか教えてよ。それで必ず「はい」って言って。
花京院くんはそう言って、少しばかり照れ臭そうに笑った。
20170914 ひつきさんへ。はにかむ花京院!
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bkm