そんなこんなで花京院くんとデートをしてみた。公園でクレープを食べながらおしゃべりをして、ゲームセンターで格闘ゲーム(花京院くんはめちゃめちゃ上手だった)をして、なんだかむず痒いような、心がほんわかあったかくなるような時間だった。花京院くんは日が落ちる頃当たり前のように私を家まで送り届けてくれて、キスどころか手も繋がずにさよならした。
告白された直後なのに、なんの進展もないのがひどく新鮮で、あぁ本当にいい子なんだなって改めて思ったし、なんでそんな子が私を好きだなんて、とも思った。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがと。…楽しかった」
帰ったら電話してね?なんて言ったら律儀にかけて寄越す。ひどく緊張したよそ行きの声で「あの、ななこさんは…いらっしゃいますか?」と告げた彼が可愛くて仕方ない。あぁこれは、もうダメかも。
「ねぇ花京院くん」
「は、はいっ、」
ちゃんと付き合おっか、と受話器に向かって囁きかければ、え、と間抜けな声を零したっきり静かになってしまって。どうしたのかと問いかける。
「…どうしたの?」
「え、いや…嬉しくて…」
退屈、させてしまったかなと…思っていたので、なんて困ったように言われて不思議に思う。聞けばゲームセンターでつい夢中になりすぎた、と謝られた。
「ううん、花京院くんすごく強かったから、見てて楽しかった」
「…そう、ですか…」
良かった、と花京院くんは噛み締めるように言って、それから改まって「よろしくお願いします。ななこさん」と告げた。
きっと電話の向こうではお辞儀でもしているに違いない、と思ったら知らず頬が緩んだ。
*****
それから何度かデートしたけど相変わらず明るいうちにさよならするし、なんていうか、健全なお付き合いだ。別にそろそろキスくらいしたっていいと思うんだけど。
「ねぇ花京院くん?」
「…なんですか?」
うちに遊びに来ない?と笑いかければ、彼はまるで散歩に行くことが決まった犬みたいに「いいんですか!?」と喜んだ。
シタゴコロなんて微塵も感じられないその喜びように思わず苦笑する。あぁ、これじゃあまるで私の方が悪人みたい。
「…どうぞ」
「お邪魔します…」
緊張した面持ちで玄関を上がった花京院くんは、ご丁寧に靴を揃えて、それから「もしかして、一人暮らしですか?」と辺りを見回しながら言った。
「うん。そうだよ?」
「えっ、あの、それって…」
彼は顔を真っ赤にしながら大慌てで、あの、とかその、とか意味をなさない言葉を零している。どうやら一応「一人暮らしの女性の家に上り込むことが何を意味しているか」くらいは知っているらしい。
「顔赤いけど、どうしたの?」
花京院くんの目の前に立って覗き込むようにすれば、彼は慌てて顔を逸らす。きっと彼の心臓はけたたましく鳴っているんだろうな、なんて思いながら、いたずらを仕掛けるみたいに笑った。
「ど、うしたって…それは、僕の方が聞きたいです…」
なんで家に呼んだのか、なんて野暮な話だ。「いつも、暗くなる前に帰っちゃうから」と言えば、「あ、当たり前でしょう!?」なんて慌てたような言葉が返ってきた。
「もしかして…あんまりそういうことにキョーミない?」
真面目な花京院くんは、もしかしてそもそもの興味が薄いのかも、なんて思って問いかけると、彼は俯きながら、恥ずかしそうに言った。
「…それはッ…あります…けど、」
なんだ。それなら話は早い。「じゃあ、キスしよう?」と彼に近付けば、花京院くんはぎゅうっと目を閉じた。緊張してます!と全身で言っているようなその姿が可愛いな、なんて思いながらそっと唇を重ねた。柔らかな唇にそっと触れ、様子を見るように少し離れる。
「…ッ、ななこさ…っん…!?」
名前を呼ぶために緩んだところに、もう一度口付けた。無防備に開かれた隙間に自分の舌を捩じ込むと、花京院くんは驚いたように吐息を漏らす。鼻に抜ける声がひどく色っぽくて可愛らしい。
「…っは、…花京院くん、」
「ッ、ななこさ…」
あぁ、なんだか悪い男にでもなった気持ちだ。花京院くんの首筋に腕を回して抱き寄せれば、花京院くんの手が遠慮がちに私の背を撫でた。緊張しているのか、ひどくぎこちないその仕草が、とても可愛い。
「…緊張してる?」
「…そんなの…当然です…」
恥ずかしそうに俯く花京院くんを、ベッドに押し倒す。上に跨るようにしてのしかかり、また口付けた。
「…花京院くん」
制服のボタンに手を掛けると、僅かに身体が震えた。大丈夫だよ、と囁けば、赤い髪がこくりと揺れた。
そっと、プレゼントの包みを開けるみたいに制服を剥がしていく。露わになった花京院くんの身体は、しっかりと筋肉がついていて綺麗だ。思わず指先を這わせると、彼はくすぐったそうな吐息を零した。
「…っ、ななこさん…」
「花京院くん、可愛い」
「…それ、嬉しくないんですけど…」
花京院くんは頬を染めながら視線を外した。そりゃあそうだろうけど、でも可愛いもんは可愛い。彼が顔を逸らしたことで露わになった首筋に噛み付く。
「…ッうぁ…」
そのまま鎖骨へと舌を這わせていくと、花京院くんはどうしていいかわからないといった風に私の背をぎゅっと抱いた。
胸に頭を押さえ込まれる形になってしまったので、眼前の可愛らしい蕾を口に含んだ。花京院くんは間抜けな悲鳴を上げ、慌てて私の頭を離す。
「…ちょっ、…」
「…大丈夫だよ、噛んだりしないから」
真っ赤になる花京院くんは可愛いな、なんて思いながら再度胸元に唇を寄せた。花京院くんは色っぽく吐息を零しながら、左右の足をもぞもぞと擦り合わせている。その中心はパッと見てわかるくらいに主張をしていて、あぁ苦しいのかな、とベルトに手を掛けた。
「…ッ、待っ…」
「…どうしたの?」
問いかければ花京院くんは泣き出しそうな顔で「恥ずかしい…です…」と呟く。でもこのままじゃあ苦しいでしょう?と囁けば、困ったように小さく頷かれた。
「…大丈夫だから、」
宥めるように口付けて、ベルトを外す。窮屈そうなズボンを寛げて、下着に手を掛けた。
すっかり勃ち上がった花京院くんは待ちきれないとでも言いたげに下着を僅かに濡らしている。
「…脱がすね」
腹を打つほどに反り返ったモノが、勢い良く飛び出す。そっと指先を絡めると、花京院くんは色っぽい吐息を零した。そのまま彼の反応を見るように先端から根元まで指を這わせていくと、花京院くんはもっと、とでも言いたげに腰を揺らす。
「…ッ、ななこさ…」
ねだるように名前を呼ばれる。それに答えるように指先に力を込め、先端のぬるつきを広げるように動かした。
「…っあ…ぅ、ッ、」
花京院くんは気持ち良さそうな吐息を零し、私にしがみつく。なんだかとても可愛くて、意地悪したくなってしまう。
「花京院くん、」
「…う、っ…、っふ…ァッ、」
「…聞いてる?」
花京院くんが唇を開くタイミングでぎゅ、と力を込める。彼は返事をしようとしてもうまく言葉が継げなくて、息を荒げながらこくこくと頷いた。
「っうぁ、…は、いッ……」
「男のコなのにそんな声出して恥ずかしくないの?」
「…ッ、すみませ…、だ、って…気持ち良くて…ぇっ…」
ふるふるとかぶりを振る花京院くんはやたらと色っぽくて可愛い。なんだかこう、良からぬ気持ちが湧いてくるような。
「ぅあ、ッ、ぼく、にも…っ…させてくださ、…」
そんな吐息混じりの声で言われても、代わる気になんてなれない。「花京院くんが可愛いから、代わってあげない」と笑って、扱く手はそのままに、胸の頂に歯を立てた。
「やっ、あ、ななこさ、出ちゃ、やめ…ッ、」
花京院くんの訴えを無視して刺激を続けると、彼は泣きそうな顔でいやいやと首を振った。唇は開きっぱなしで、声を抑えることなんてすっかり頭から抜け落ちている。
「…っ、うぁッ、ああぁっ!」
びくびくと腰を震わせ、花京院くんはあっさりと陥落した。勢い良く飛沫を散らしながら、何度も身体に力が篭る。
「…花京院くん」
「…ぅあっ、ご、めんなさ…」
呆然とする花京院くんの名前を呼べば、彼はハッとしたように私を見て真っ赤になって俯いた。
「…なんで謝るの」
「だ、って…僕…」
忙しなく上下する肩をそっと撫でながら、「気持ち良かった?」と問いかければ、彼は「はい」と小さく返事した。
「それなら良かった」
「あの、ッ…」
腕を引かれて顔を上げれば、真剣な瞳の花京院くんが「僕、」と唇を動かした。その言葉を遮るように口付けて、笑いかける。
「…今度は、泊まりにおいでよ。」
「…っ、はい…」
恥ずかしそうに俯く花京院くんが可愛くて、ディスコよりもお酒よりも楽しい遊びを見つけちゃったかもしれないな、なんて思いながらその真っ赤な頬に口付けた。
20170630
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bkm