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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ふたり

「明日の夜」「どこか部屋でも」と言うからにはお泊まりというやつなんだろうか。
正直、どんな格好で、どんな顔で会えばいいのかわからない。私は悶々としたまま約束の日を迎えた。

「…気が気じゃないよ…。」

そういえば時間も場所も指定されていない。携帯電話を眺めながら、気分はさながら刑の執行を待つ死刑囚みたいだなと思う。
何度目か分からない溜息をついたとき、携帯がピカピカと光って震えだした。

「…もしもし、」

「…あぁななこ。今、話しても大丈夫か?」

画面に表示された名前を確認する間もなく出たけれど、案の定聞こえてきたのはブチャラティの声。私の声は上擦っているのに対して、彼の声は相変わらず落ち着いて、甘い響きを含んでいる。

「…だいじょうぶ、です…」

「…何を緊張しているんだ、今更。」

電話口から吐息を含んだ笑い声が聞こえた。耳元で囁かれているような錯覚をしてしまって思わず受話器を離す。ブチャラティは私が受話器を離したことに気づかないまま言葉を続けているらしく、漏れ聞こえる音に慌てて受話器を耳に当て直した。

「…でいいか。」

「あ、ごめんブチャラティ、もう一回。」

慌てて聞き直すと彼は仕方ないなと笑った。緊張しているのは私だけなんだろうか。心臓が煩くて、ブチャラティの言葉を理解するまでにもう2回ほど繰り返してもらう羽目になった。彼は聞き取りにくかったか?なんて謝りながらも子供を諭すみたいに優しく私に待ち合わせ場所の説明をしてくれた。少しばかり分かりにくいらしく彼は心配していたけれど、多分迷わずにたどり着けるはず。

*****

「…いらっしゃいませ、こちらです。」

指定されたレストランはこぢんまりとした隠れ家みたいな場所だった。繁華街の雑踏が届かないような裏路地は分かりにくかったけれど、迷わずに来られたのはブチャラティが何度も丁寧に教えてくれたからに違いない。

席に着くと程なくして独特な柄のスーツが視界に入った。

「待たせたな。」

「今来たところ。」

あぁ本当に映画のワンシーンみたい。
着座するなり手馴れた様子でワインをオーダーする仕草は、もうそれが台本だったみたいなスマートさで。
緊張する私を余所に、ブチャラティは出されたグラスを掲げた。

「…アルコールは、ダメだったか?」

「ううん、平気。…乾杯。」

視線を合わせてグラスを掲げただけなのに、私の心臓はばくばくと煩い。酔ってしまえば楽になれるかと、勢い良くグラスを煽った。

「…飲み過ぎじゃあないのか。」

「…えー?だいじょうぶ。」

ご飯もお酒も美味しいしブチャラティはカッコいいし、私ってば幸せ者だなぁなんて。
食事を終えて立ち上がると、思いの外ふらついた。ブチャラティがすかさず腰を抱いてエスコートしてくれる。この伊達男め。

「…大丈夫か?」

「…優しいね、ありがとう。」

見上げて笑えば彼は少しばかり頬を赤らめた気がした。しっかりした足取りに身体を預けると、ぎゅっと抱き寄せられる。

「ブチャラティ?」

「…オレも少しばかり、酔ったみたいだ。」

言いながらも足取りは大分しっかりしているから、きっと頬が赤いことへの言い訳なのだろう。くすりと笑うと彼は寒いなと白い息を吐いた。回された腕があったかいよ、ブチャラティ。

*****

随分と豪奢なホテルだなと私の歩みは遅くなる。こんなところ、一人では絶対入れない。私の身長の倍はありそうな大きな自動ドアをくぐり、見たこともない調度品に視線を奪われる私を余所にブチャラティは慣れた様子でフロントでキーを受け取った。そうしてそのままエレベーターで客室へ。

「…どうぞ。」

「…うわ、ひっろー…い…」

通された部屋は所謂スイートルームというやつなんだろうか。私の部屋なんかよりずっと広い。すごい。酔った頭では気の利いた言葉なんて出るはずもなく、驚きのままに彼を見上げた。

「…ななこ。」

優しげな瞳が近づいてくるから、恥ずかしくて瞼を閉じた。ちゅ、と小さな音と共に落とされる唇。私の冷たい頬を、ブチャラティの手が包み込む。

「…ん、…」

「…いいんだな?」

掛けられた言葉に小さく頷くと、彼はまっすぐ私をベッドに向かわせる。部屋が広いせいで、ベッドまでが遠くて無駄にドキドキしてしまう。ブチャラティの手が壊れ物を扱うようにそっと、私の頬を撫でる。そのまま身体へと感触を確かめるように手が滑っていって、ゆっくりと押し倒された。

「…ッ…」

「…可愛い、ななこ。」

ひんやりとした手が服の隙間から差し込まれ、私の肌を撫でる。冷たい指先なのに通り過ぎたところがひどく熱い気がするのはどうしてなんだろう。明るくて広い部屋に不釣り合いな声が唇から零れ、慌てて両手で口元を覆った。

「っあ…んぅ…」

「…隠すな。」

ブチャラティは私の口元の手をどかして、念を押すように「隠さないで、」ともう一度告げて私の唇を柔く食んだ。

「やぁ、ッ…ブチャラティ…暗くして…っ…」

「…残念だなななこ、オレは君と離れたくないんだ。」

それは消してくれないってことか。服を脱がしにかかるブチャラティの手を捕まえて、泣きそうになりながら懇願する。

「…ベッドのとこだけでいいから…」

「すまない、そんな顔をさせたいわけじゃあないんだ…」

そう言って彼は私から視線を離してあちこちに彷徨わせる。そうして枕元にあるスイッチを見つけると「こんなところに」と小さく呟いて明かりを落とした。ドアのところにしかスイッチがないと思っていたのだろうか。慣れているはずなのにそんな馬鹿な、と思わず笑いが零れた。

「…なぜ笑うんだ。」

「…可愛いな、と思って。」

「それはななこの方だろう?」

私の服を器用に剥ぎ取りながらそんなことを言う。先ほどより暗くなったとはいえ真っ暗というわけではないから、あまり見ないで欲しい。

「…ッひぁ…」

まるで味見をするかのようにべろりと舐められて、思わず声が出た。私の声に気を良くした彼は、そのまま舌での愛撫を続ける。

「…気持ちいいか?」

「…ッん…ぁ…」

ブチャラティの頭をぎゅうと抱き込むと、苦しかったのか軽く歯を立てられた。

「やっ、…噛まな…、で…ッ…」

「…好きなんだろう?」

そういう『味』がする、なんて訳のわからないことを言って、何度も歯を立てられた。
抗議の声をあげたかったはずなのに、唇を割いて出てくるのは色を含んだ嬌声だけで、彼は私より私をわかってるんじゃあないかなんて錯覚してしまう。

「…ぅあ、ッ…やぁ…」

「…ななこ、可愛い。」

ブチャラティは指先を私の内腿に這わせた。下着越しに軽く引っ掻かれて、その先を想像した身体がびくりと震える。

「ん、ッ…ブチャラティ…」

「…ななこ。」

指先が往復する度に甘い疼きはその濃さを増して、彼の優しい手にもどかしさすら覚えてしまう。口付けを落としながら、彼は私の中に指を沈め、探るようにゆっくりと掻き回した。私の反応を見ながら、指を一本ずつ増やしていく。

「っぅあ、あぁ…ッ…は…っ…」

「…大丈夫か。」

言葉にならない声を上げつつこくりと頷けば、小さな水音と共に中を蠢く感触がなくなる。彼は少しだけ身体を離して準備を整えると、私の脚を割り開いた。

「…ん、ブチャラティ…好き…っ…」

「あぁ、俺もだ。」

ぎゅう、と抱き締めるのを合図にブチャラティが押し入ってくる。待ち望んだ刺激に身体は勝手に蠢き、彼を締め付けた。

「っあ、やぁっ、ん、ッう…」

唇を塞がれ、舌を挿し込まれる。声を上げたくても呼吸すらままならなくて、苦しくて気持ちよくてどうにかなってしまいそう。

「…ななこッ…」

口付けの合間に名前を呼ばれて、何度も突き上げられて、目の前にある快楽を受け入れ続けた私は、もう限界だった。

「…っや、ッ…あ、ああぁっ!」

背をしならせ声を上げながら、私の意識は真っ白に弾けた。

*****

「…ぅ、…ん…」

重い瞼をゆっくりと持ち上げると、目の前にはブチャラティ。彼は私が起きたことに気づくと、安心したように笑った。

「…大丈夫か?」

「…ん、大丈夫。」

彼の胸板に擦り寄ると、優しい手が私の頭を撫でた。「可愛いな」と吐息交じりの小さな声がつむじを擽る。

「…好き。」

「…あぁ、オレも好きだ。ななこ…」

頭のてっぺんから声が染み込んでくるみたいでくすぐったい。ぎゅうと抱き着くと、彼は幸せそうに私を抱き返した。


20160110



「…せっかく素敵なホテルなのに、ベッドにしかいないなんて勿体無い。」

「…また来ればいいだけだろ。」


*****

相変わらずブチャラティは難しいです…。
日記見てリクエスト下さった舞様へ!


萌えたらぜひ拍手を!


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bkm